養育費が支払われないとき及び、養育費の支払いが滞ったときの対処法

□ 離婚協議書を強制執行認諾文言付公正証書で作成した場合は、裁判をすることなく、財産を差し押さえてもらうことができます。 

行政書士は街の身近な法律家

埼玉県行政書士会所属

行政書士渡辺事務所

行政書士・渡邉文雄

 

似顔絵

ポイン ト 関連情報

養育費

➤養育費が支払われないとき

養育費の強制執行の効力

養育費の強制執行の手続き

1. 強制執行(直接強制) 

 

 強制執行(直接強制)は、約束事を履行させるため、裁判所が相手の財産を差し押さえ、競売にかけてお金に換えるなどして強制的に金銭等を回収してくれる制度です。

 養育費が支払われないとき及び、養育費の支払いが滞ったときは、強制執行(直接強制)」の方法により財産の差し押さえができます。 

 

 

2. 財産の差し押さえの範囲

 

 養育費の一部が不履行となったときは、滞納分だけでなく期限が到来していない分も含めて差し押さえができます。  

 

 元配偶者の収入が給料の場合は、給与額から税金と社会保険料を差し引いた残額の2分の1が差押可能です。残額の2分の1が33万円を超えるときは33万円を除いた部分が差押可能となります。

 

3. 債務名義

 

 強制執行という手続きを利用するためには、強制執行の根拠となる「債務名義」を取得しなければなりません。「債務名義」には以下のものがあります。 

 

① 家庭裁判所の「調停」(調停で養育費の金額の取り決めを行う)

② 家庭裁判所の「審判」(審判で養育費の金額を定めてもらう) 

③ 「裁判の判決」(裁判で養育費の金額を定めてもらう)

 

④ 強制執行認諾文言付公正証書 

 

4. 「公正証書」離婚協議書

 

(1)「強制執行認諾文言付」公正証書

 

 強制執行認諾文言付公正証書を作っておけば、養育費が支払われないとき及び、養育費の支払いが滞ったときは、裁判をすることなく、財産を差し押さえてもらうことができます。 

 

(2)交付送達、執行文付与 

 

 離婚公正証書を作成したときに、公証役場から養育費の支払義務者である元配偶者に離婚公正証書の謄本(写し)を「交付送達」してもらいましょう。

 合わせて、「執行文付与(離婚公正証書の正本に執行文を付けてもらう)」を受けておけば、養育費の支払いを怠ったときは、ただちに強制執行をしてもらうことができます。 

 

※「執行文付与」 強制執行を行うには、公正証書の正本に執行文を付けてもらう必要があります。 「 執行文」とは、公正証書の末尾に付ける、「強制執行をすることができる」旨の記載のことです。

 

5. 強制執行する前に

 

 強制執行する前に、手紙等で、これ以上支払いが滞る場合は強制執行手続きをとる旨、あらかじめ伝えておきます。 いざこざはなるべく起こさないようにするのが、支払ってもらう秘訣です。 

 

6. 間接強制

 

 「間接強制」とは、債権者の申立てにより、裁判所が債務者に対し支払いを命ずる制度です。強制執行は手続きが煩雑で費用もかかります。履行勧告・履行命令の制度で解決するのがベストです。

 

 

 平成16年法律152号(平成17年4月1日施行)により、「間接強制」の方法によっても強制できることになりました。 

 

ポイ ント 一口豆知識

 韓国では、養育費の支払い方法を記した離婚協議書を裁判所に提出することが義務付けられています。米国、オーストラリアには行政による徴収制度があります。ドイツ、スゥエーデンには行政による立て替え払い制度があります。