養子縁組と離縁(養子縁組の解消)

□ 養子縁組をした子は養親の戸籍に入り、養親との間に嫡出親子関係が生じます。権利義務関係は実子と同じです。なお、実親との遺産相続、扶養義務などの権利義務関係も併せて継続します。

 

□ 養子縁組は、一般に、遺産の相続、老後の扶養、家名継承などのために行われています。

 

□ 妻の連れ子は夫の遺産を相続できませんが、養子縁組をすれば可能です。

 

□ きょうだい が相続人の場合(子どもがいない)、被相続人が養子縁組をすると きょうだい は相続できなくなります。


行政書士は街の身近な法律家

埼玉県行政書士会所属

行政書士渡辺事務所

行政書士・渡邉文雄

 

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1. 養子縁組の目的

 

 養子縁組は、一般に、遺産の相続、老後の扶養、家名継承などのために行われています。

 

 

2. 養子縁組の手続き

 

① 未成年者を養子にする場合は、「養子縁組許可申立書」を家庭裁判所に提出し許可を受けます。

 結婚に際し、連れ子を配偶者の養子にする場合は家庭裁判所の許可は不要です。 

② 養親及び養子(15歳未満の場合は法定代理人)は、「養子縁組届」を養親の住所地又は本籍地の役場に提出します。 

 「養子縁組届」の提出には、養親及び養子の戸籍謄本が必要です。 

 「養子縁組届」には、成人2名の証人が必要です。

 

 

3. 養子縁組の成立要件

 

① 養子は養親より年下であることが必要です。 

② 養親は成年であることが必要です(既婚者は未成年も可) 。

③ 結婚している者が「未成年の養子」を迎えるためには、夫婦で共に養親となることが必要です。未成年の養子は夫婦両方の養子になります。

④ 結婚している者が「成年の養子」を迎える場合は、配偶者の同意だけでよいとされています。成年の養子は夫婦片方の養子にすることができます(*)。

 

 * 民法第796条【配偶者のある者の縁組】

 配偶者のある者が縁組をするには、その配偶者の同意を得なければならない。ただし、配偶者とともに縁組をする場合又は配偶者がその意思を表示することができない場合は、この限りでない。

 

 

 4. 養子縁組と戸籍 

 

 養子縁組をした子は養親の戸籍に入り、養親との間に嫡出親子関係が生じます。権利義務関係は実子と同じです。なお、実親との遺産相続、扶養義務などの権利義務関係も併行して継続します。

5. 特別養子縁組

 

 特別養子縁組は、6歳未満の、実の親に養育してもらえない子どもに、養育してくれる家族を持ってもらうことを目的とした制度です。

 特別養子縁組をした子は養親の戸籍に入り、養親との間に嫡出親子関係が生じます。権利義務関係は実子と同じです。

 特別養子縁組は普通養子と異なり、実親との法律上の親子関係を断ち切ります。実親及び親族との法律関係は婚姻障碍を除き消滅します。

 

 

6. 特別養子縁組の手続き

 

① 家庭裁判所に「特別養子縁組申立書」を提出し許可証を受けます。 

② 養親及び養子の法定代理人は、家庭裁判所の審判が確定した日から10日以内に、「特別養子縁組届」を養親の住所地又は本籍地の役場に提出します。

③ 「特別養子縁組届」の提出には、養親及び養子の戸籍謄本が必要です。

④ 「特別養子縁組届」には家庭裁判所の審判書の謄本及び確定証明書が必要です。

 

 

7. 特別養子縁組の条件

 

① 原則として、養子となるこどもが6歳未満であること。

② 養親となる者は夫婦であり、25歳以上であること。

③ 養子になる子どもの実父母が同意すること。

8. 養子関係の解消(離縁)の方法

 

 養子関係の解消(離縁)の方法は、養子と養親との話し合いで行う方法(協議)と、裁判によって行う方法があります。

 

(1) 養子関係の解消「協議」

 

①  養子関係は、養子と養親で合意すれば解消できます。

 

② 養親及び養子(15歳未満の場合は法定代理人)は、「養子離縁届」を、養親の住所地又は本籍地の役場に提出します。

 「養子離縁届」には戸籍謄本が必要です。

 「養子離縁届」には、成人2名の証人が必要です。

 

③ 養子又は養親の死亡後に離縁(養子関係の解消)する場合は、家庭裁判所に「死後離縁審判申立書」を提出し許可を受ける必要があります。

 

※ 養子又は養親の死亡後に離縁(養子関係の解消)しても、相続権に影響はありません。

養親の死亡前に離縁(養子関係の解消)していた場合は、相続権はありません。)

 

 

(2) 養子関係の解消「裁判」 

 

 次の場合に限り訴えを提起することができます。

 

① 他の一方から、悪意で遺棄された

② 他の一方の生死が3年以上不明

③ その他、縁組を継続しがたい重大な事由がある

 

 

(3) 特別養子縁組の解消 

 

 特別養子縁組は、養子関係の解消(離縁)は原則としてできません。

 ただし、養親による虐待など養子の生活を害する場合は、養子本人、実父母、監察官に限り、家庭裁判所に特別養子離縁審判」の申し立てを行うことができます。

 

 

9. 離縁後の養子の戸籍と姓

 

 養子関係を解消(離縁すると、養子の姓は旧姓に戻り、戸籍は実親の戸籍に戻ります。 

 養子縁組時の姓を継続して名乗りたい場合は、離縁の日から3か月以内に、養子だった本人が「離縁の際に称していた氏を称する届」を住所地又は本籍地の役場に提出します。

 ただし、養子縁組から7年を経過していることが必要です。