遺言執行者の権限を明示する遺言文例

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埼玉県行政書士会所属

行政書士渡辺事務所

行政書士・渡邉文雄

 

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ポイント  関連情報

遺言の執行

遺言執行者の指定

遺 言 書

 

第1条 遺言者は、長男〇〇〇〇(昭和〇〇年〇〇月〇〇日生)に次の財産を相続させる。

 

(1) 土地              

   所在    〇〇市〇〇町〇〇丁目

   地番    〇〇番〇〇 

   地目    宅地

   地積    〇〇〇.〇〇平方メートル

 

(2) 建物

   所在    〇〇市〇〇町〇〇丁目〇〇番地〇〇 

   家屋番号  〇〇番〇〇 

   種類    居宅  

   構造    木造瓦葺二階建

   床面積   一階 〇〇.〇〇平方メートル 

         二階 〇〇.〇〇平方メートル

 

(3)遺言者名義のAB銀行〇〇支店定期預金  

   口座番号〇〇〇〇〇の預金全額と利息全額

 

第2条 遺言者は、長女〇〇〇〇(昭和△△年△月△日生)に次の財産を相続させる。

 

  遺言者名義のCD銀行〇〇支店定期預金 

  口座番号〇〇〇〇〇の預金全額と利息全額

 

第3条 遺言者は、次女〇〇〇〇(昭和△△年△月△日生)に次の財産を相続させる。

 

  遺言者名義のゆうちょ銀行の定額貯金  

  記号〇〇〇〇〇〇の貯金全額と利子全額

 

第4条 遺言者は、その他前条記載の財産を除く遺言者の有する一切の財産は、長男〇〇〇〇に相続させる。

 

第5条 遺言者は、祭祀を主宰するべき者として、長男〇〇〇〇を指定する。

 

第6条 

1 遺言者は、遺言執行者として、長男〇〇〇〇を指定する。

 

遺言執行者は、不動産移転登記手続き、預貯金の解約及び払戻し、名義変更、貸金庫の開扉、その他この遺言の執行に必要な一切の権限を有する。

 

2 遺言執行者は、次の権限を有する。

① 不動産について、登記手続きを行うこと

② 預貯金について、解約及び払戻し又は名義変更を行うこと

③ 貸金庫の開扉及びと貸金庫契約の解約を行うこと

④ その他この遺言の執行に必要な一切の処分を行うこと

⑤  この遺言の執行に必要な代理人及び補助者を選任すること

 

 令和〇〇年〇〇月〇〇日

 

 

                  (遺言者住所) 

                   遺言者   〇〇〇〇  ㊞


ポイン トここが遺言(相続)のポイント

□ 遺言執行者は、相続財産の管理その他遺言の執行に必要な一切の行為をする権利義務を有しますが、遺言でその職務権限を具体的に明記しておくと、金融機関等での手続きをスムーズに行えることが期待できます。

 2018民法改正(2018.7.13公布)により、遺言執行者を「相続人の代理とみなす」規定が削除され、遺言執行者は、遺言の執行に必要な一切の行為をする権利義務を有し、遺言執行者がその権限内において遺言執行者であることを示してした行為は、「相続人に対して直接その効力を生ずる」と変更されました。

 

民法1012条(遺言執行者の権利義務)

1. 遺言執行者は、遺言の内容を実現するため、相続財産の管理その他遺言の執行に必要な一切の行為をする権利義務を有する。

2. 遺言執行者がある場合には、遺贈の履行は、遺言執行者のみが行うことができる。  

3. 第644条、第645条から第647条まで及び第650条の規定は、遺言執行者について準用する。

 

 また、遺産分割方法の指定がされた場合の対抗要件を備える行為も遺言執行者ができるとされ、「相続させる」旨の遺言がなされた場合には、遺言執行者は、原則として、単独で相続による権利の移転登記の申請をする権限や、預貯金の払戻しをする権限を有することとされました。

 

民法1014条(特定財産に関する遺言の執行)

1. 前3条の規定は、遺言が相続財産のうち特定の財産に関する場合には、その財産についてのみ適用する。

2. 遺産の分割の方法の指定として遺産に属する特定の財産を共同相続人の一人又は数人に承継させる旨の遺言(以下「特定財産承継遺言」という。)があったときは、遺言執行者は、当該共同相続人が第八百九十九条の二第一項に規定する対抗要件を備えるために必要な行為をすることができる。

3. 前項の財産が預貯金債権である場合には、遺言執行者は、同項に規定する行為のほか、その預金又は貯金の払戻しの請求及びその預金又は貯金に係る契約の解約の申入れをすることができる。ただし、解約の申入れについては、その預貯金債権の全部が特定財産承継遺言の目的である場合に限る。  

4. 前二項の規定にかかわらず、被相続人が遺言で別段の意思を表示したときは、その意思に従う。 

 

□ また、指定する遺言執行者が専門家以外の場合は、預貯金の払戻等に関する権限を明示する定めを置かないと、金融機関によっては、相続による預貯金の払戻等にあたり相続人全員から委任状(印鑑証明書)をもらうよう指示するなど、遺言執行がスムーズにいかない事態も想定されます。

 

□ 遺言執行者の権限を明示する定めは、金融機関等での手続きが円滑に進むよう、権限の内容を具体的に記載することをおすすめします。

 

□ 遺言者は、遺言で遺言執行者の職務権限を限定することができます。

注意事 項  本文例はあくまでも一例です。遺言者のご希望はもとより、推定相続人や遺贈したい人の状況、相続財産の状況などによって遺言文は違ってきます。

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