付言事項を書く位置。遺言事項と付言事項の種類と法的拘束力。

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埼玉県行政書士会所属

行政書士渡辺事務所

行政書士・渡邉文雄

 

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法定遺言事項

付言事項

法定外遺言事項

➤付言事項を書く位置。遺言事項と付言事項の種類と法的拘束力

1. 付言事項(狭義)を書く位置

 

 遺言を書いた理由、自分が亡くなった後の希望、家族に対する感謝の言葉など狭義の付言事項を書く場合は、法定遺言事項及び法定外遺言事項のあとに、表題を付言事項として記載するのが一般的です。(遺言事項と付言事項の区分が明解。)

 

2. 法定遺言事項と付言事項

 

 遺言書に書いて強制力、即ち法的拘束力があるものは民法等の法律で限定されており(「法定遺言事項」)、それ以外は、広義の付言事項です。

 付言事項には法的な効力、拘束力はありません。 

 

3. 法定外遺言事項

 

 付言事項は、相続人等に対し、一定の作為又は不作為を求める意思表示を内容とするもの(法定外遺言事項)とそれ以外のもの(狭義の付言事項)とに分けることができます。

 狭義の付言事項は、一般に、法定外遺言事項と法定外遺言事項のあとに、表題を「付言事項」又は「付言」若しくは「付記事項」等として記載します。

 

4. 法定外遺言事項の例 

 

(1) 葬儀についての希望、散骨やお墓に関する依頼 

  ① 葬儀・法要の方法を指定

  ② 散骨の希望、散骨場所、散骨の方法を指定

  ③ お墓や永代供養の依頼

 

 葬儀の方法や散骨、お墓に関する希望は、必ず実行することを遺贈又は相続させる遺言の負担と位置づけることによって、相続人らを法的に拘束することが可能となる(出典:NPO法人 遺言・相続リーガルネットワーク( 2017)『改訂 遺言条項例300&ケース別文例集』日本加除出版.254頁)

 

  自筆証書遺言は、(法務局保管制度を利用しない場合)、検認の関係で内容がわかるのが葬儀後になってしまうことがあります。葬儀についての希望、散骨やお墓に関することを書いておきたい事情がある場合は、》エンディングノート にも書いておくことをおすすめします。

 

(2) 献体の希望 

(3) 寄与分の希望 

(4) 遺留分遺留分侵害額請求をしないことを希望

(5) 遺産分割にあたり特別受益を加味しないことを希望 

(6) 相続欠格を宥恕する 

 

(7) パソコン等デジタル機器の個人情報の処理等の依頼 

① SNSのアカウントの削除の依頼 ※パスワード、ID等を別途教えておく必要があります。

② パソコン、携帯電話、スマホのデータ消去の依頼 ※パスワード、ID等を別途教えておく必要があります。

③ メール、ホームページ、ブログの閉鎖の依頼 ※パスワード、ID等を別途教えておく必要があります。

④ インターネットプロバイダーの解約の依頼 ※パスワード、ID等を別途教えておく必要があります。

⑤ ネット銀行口座の解約の依頼 ※IDを教えておく必要があります。パスワードは不要。

⑥ ネット有料サービス解約の依頼  ※パスワード、ID等を別途教えておく必要があります。

 

(8) ペットの世話の依頼  

(9) 介護に関すること、尊厳死に関すること、「臓器提供」に関することには、生前に知らせておかないと実現はできません。

 

 介護に関することは「任意後見契約公正証書」、尊厳死については「尊厳死宣言公正証書」、臓器提供については「臓器提供に関する公正証書」の形で決めておくことができます。  

 

※ 平成21年の臓器移植法改正により、本人の意思が不明の場合でも、遺族の承諾により臓器移植できることになりました。

 

5. 狭義の付言事項の例

 

(1) 遺言を書いた理由(わけ)

 

 付言事項を積極的に使い、遺族の心情に配慮して、遺言を書いた理由(わけ)や、自分が亡くなった後の希望などを述べ、誤解によるわだかまりを残さないようにしておきたいものです。 

 

(2) 家族に対する感謝の言葉 

 

 付言事項は家族に伝える愛のメッセージとも言えるものです。

 

(3) 特定の相続人に不利な遺言をするとき

 

 自筆証書遺言の場合は、他の相続人に相続手続きで一定の協力をお願いしなければならない場面も想定されます。(因みに、自筆証書遺言検認の申立や、法務局保管の自筆証書遺言の遺言情報証明書の申請には相続人全員の戸籍謄本が必要です。) 

 付言事項で理由を述べ、その心情に配慮しておくことによって、円滑な相続手続きにつながることが期待できます。 

 

(4) 相続の割合を法定相続分と違う割合にするとき

 

 相続の割合を法定相続分と違えた場合でも、遺言者の考えが分かると家族は受け入れやすくなります。

 

(5) 遺留分を侵害するとき

 

 遺留分を侵害する遺言も、遺留分侵害額請求権を行使することができるようになるだけで、遺言がすべて無効になるわけではありません。法定の期間内に遺留分侵害額請求の意思表示をしなければ、遺留分を侵害する遺言も記載通りの効力を有します。付言事項で遺留分を侵害した理由を述べることにより、遺言記載通りの効力を有することが期待できます。

 

(6) 遺留分遺留分侵害額請求をしないことと書いた場合

 

 遺言に「遺留分遺留分侵害額請求をしないこと」と書いた場合も、理由が分かれば、納得して遺言を受け入れてくれることが期待できます。

 

(7) 特別受益があるとき

 

 特別受益の存否に関する争いは、相続トラブルワースト10です。

 相続人にたいする特別受益があるときは、付言事項にその存在を明示しておくことにより、その有無を巡る相続人間の争いを未然に防ぐことが期待できます。  

 

(8) 相続人が親等被相続人と同居していたとき

 

 相続人が親等被相続人と同居していたケースでは、家賃相当額の特別受益を受けているとして、遺産分割にあたり特別受益算入を主張されることがあります。

 相続人が被相続人と同居していた場合は、被相続人に機会費用が発生している場合を除き、特別受益算入はしないとされていますが、付言事項にその扱いを明示しておくことにより、相続人間の争いを未然に防ぐ効果が期待できます。  

 

(9) 遺産分割にあたり特別受益を加味しないことを望むとき 

 

 遺産分割にあたり特別受益を加味しないことを望むときは、付言事項にその生前贈与をした事情を書き加えることで相続人間の争いを未然に防ぎ、  円満な相続につながることが期待できます。

 

(10) 寄与分の希望があるとき

 

 寄与分をあげたい人がいる場合には、付言事項にその理由を述べることにより、相続人の理解を得、 円満な相続につながることが期待できます。

 ただし、遺言に寄与分を書いても、あくまで付言事項であり、法的拘束力はありません。相続人同士の協議における判断材料にとどまります。

 

 民法改正により「特別の寄与」制度が設けられ、「特別寄与料」として金銭を請求できるようにようになりました。

 しかし、特別寄与料を遺産分割協議で申し出るのは心理的な負担も考えられ、また、認められるかどうかも不確実です。   

 確実に財産をあげたいのであれば、遺言で寄与分を考慮した遺贈をすることをおすすめします。  

 

(11) 相続人以外へ遺贈 をするとき

 

 付言事項に、相続人以外への「遺贈」の事情や理由を書き加えることで相続人も納得し、円満な相続につながることが期待できます。

 

(12) 遺産分割の禁止をするとき

 

 遺言で遺産分割の禁止を定めても、相続人全員の合意があれば遺産分割できるとされています。

 遺産分割の禁止が守られない懸念があるときは、付言事項「遺産分割の禁止の理由を書き加えることで、遺言の実効性を高めることが期待できます。

 

(13) 相続人の廃除をするとき

 

 相続人廃除が認められるためには、家庭裁判所の審判で相続人廃除が客観的に正当と判断される必要があります。付言事項に相続人廃除の正当理由を要約して具体的に記載します。

 

(14) 遺言で子の認知 をするとき

 

 付言事項に「子の認知」の事情や理由を書き加えることで利害の反する相続人も納得することが期待できます。  


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