遺言で企業年金・遺族給付の受給者を指定できますか?

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埼玉県行政書士会所属

行政書士渡辺事務所

行政書士・渡邉文雄

 

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1.    企業年金とは

 

 日本の年金制度は、全国民に共通した「基礎年金」を基礎に、「被用者年金」、「企業年金」の3階建ての体系となっています。

 企業年金には、確定給付企業年金、厚生年金基金、確定拠出年金があります。

 

(1)    確定給付企業年金

 

 確定給付企業年金には、企業等が、法人(企業年金基金)を設立する「基金型」と、年金規約を作成する「規約型」があります。

 基金型は企業年金基金が、規約型は企業等が、年金資産を管理・運用して年金給付を行います。

 

(2)    厚生年金基金

 

 厚生年金基金は確定給付型の企業年金制度の一つです。

 法人である厚生年金基金が、国の老齢厚生年金の一部を代行するとともに、厚生年金基金独自の上乗せ(プラスアルファ)を行います。

 

(3) 確定拠出年金

 

 確定拠出年金は、企業等が年金規約を作成し実施する「規約型」企業年金制度であり、企業が拠出した掛金は個人ごとに明確に区分され、掛金と個人の運用指図による運用収益との合計額が給付額となります。

 

 なお、確定拠出年金にはこのほかに、60歳未満の公的年金の加入者が、国民年金基金連合会の委託を受けた運営管理機関(金融機関)に申し込むことで、加入者となり、自らが掛金を拠出していく「個人型」があります。(愛称は iDeCo(イデコ))。

 

(出典:企業年金連合会ホームページ)

 

2.  企業年金の遺族給付(「遺族一時金」、「遺族年金」)は相続財産か?

 

 企業年金の遺族給付(「遺族一時金」、「遺族年金」)は、内規で受給者又は受給権者の範囲や順位を指定していれば、指定した受給権者の固有の権利であり、相続や遺産分割の対象となる、民法上の相続財産に属しません。

 受給権者又は受給権者の範囲や順位を指定していない場合は、相続や遺産分割の対象となる、民法上の相続財産に属すると解されています。

 

 通常、退職年金規程においては、労働基準法施行規則を準用するなどして、遺族給付の受給者又は受給権者の範囲や順位が定められており、相続や遺産分割の対象となる、民法上の相続財産に属しません。

 

 また、企業年金の「未支給年金(生存中に受給権が発生したが支給されていない年金。年金は後払い形式で支給するため、受給者が死亡すると必ず未支給年金が発生する)」については、内規に定められている受給権者の固有の権利であり、遺産分割の対象となる、民法上の相続財産に属さず、相続対象となりません。

 

 なお、企業年金の遺族給付(「遺族一時金」、「遺族年金」)は、税務上は「相続財産とみなす」とされ(「みなし相続財産」)、「相続税」の対象となります。 

 

  

3. 遺言により、企業年金の遺族給付(「遺族一時金」、「遺族年金」)の受給権者を指定する

 

 企業年金の内規に、遺言等による、遺族給付(「遺族一時金」、「遺族年金」)の具体的な受給権者の指定に関する規定がある場合は、受給権者を指定することができます。

 

 遺言による退職年金遺族給付の受給権者の指定は、死後、相続人等が支給機関に通知をしなかったり、通知の前に支払いがなされた場合は、支給機関に対抗できません。


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