預貯金を現物分割又は代償分割する遺産分割条項例

 1. 全ての「預貯金」をまとめて、割合で分配する(現物分割」

 

1. 相続人A、相続人B及び相続人Cは、次の預貯金を各3分の1の割合で取得る。

 

 ① 〇〇銀行〇〇支店 定期預金 口座番号 〇〇〇〇

   ② 〇〇農業協同組合〇〇支店 定期預金 口座番号 〇〇〇〇

  及び出資金の全て

   ③ ゆうちょ銀行 通常貯金 記号番号 〇〇〇〇

 

2.  A、 B及びCはAを代理人と定め(※1)、この預金相続に必要

 きをする一切の権限を委任する。AはA、B及びCに対し、令和〇年

 〇〇末日限り、それぞれ金〇〇万円を、A、B又はCが指定す預金

 口座に振込する方法により支払う。なお、振込手数料はAの負担

 る。 

 

※1 代理人と定め預金相続に必要な手続きをする一切の権限を委任する場合には委任状が必要です。

 

※ 預金の名義変更(預金相続)の仕方については、

・ 》》預金の名義変更(預金相続)の仕方  をご参照ください。

 

預貯金については従来、遺産分割の対象とはならないと考えられてきましたが、平成28年12月19日の最高裁大法廷決定において、預貯金も遺産分割の対象になる旨の判断がなされました。(出典:みらい総合法律事務所【編著】( 2021)『応用自在!遺言書・遺産分割協議書作成のテクニック』日本法令.469頁)

 

 預金の特定は「金融機関名・支店名」「口座の種類(定期預金等)」「口座番号」「口座名義人(書かなくても可)」を書き特定します。 

 

※ ゆうちょ銀行の場合は「ゆうちょ銀行」「口座の種類(通常貯金等)」「記号」「番号」を書き特定します。

 

※ 残高の記載は不要です。「残高」を記載すると、利息などによって変動の可能性があり、把握している残高と実際の金額が異なる場合、解約できなくなる恐れがあります。 

※ ネット銀行預金(*)も同様です。  

 

* 店舗を持たず、インターネット上の取引を中心としてサービスを提供する銀行。

 

2. 預貯金を、金融機関別及び預貯金種別に、複数人に取得させる現物分割」

 

 ① 相続人Aは、次の預金を取得する。

   〇〇銀行〇〇支店 定期預金 口座番号 〇〇〇〇

 

   ② 相続人Bは、次の預金を取得する。

   〇〇農業協同組合〇〇支店 定期預金 口座番号 〇〇〇〇

   及び出資金の全て

 

  ③ 相続人Cは、次の貯金を取得する。 

   ゆうちょ銀行 通常貯金 記号番号 〇〇〇〇 

 

 ※注記は(1)と同じ。

 

3. 1人の相続人に全ての預貯金を取得させ、他の相続人には代償金として金銭で支払う(「代償分割」

 

1. 相続人Aは、次の預貯金を取得する。

 

 ① 〇〇銀行〇〇支店 定期預金 口座番号 〇〇〇〇

 ② 〇〇銀行〇〇支店 定期預金 口座番号 〇〇〇〇 

   ③ ゆうちょ銀行 通常貯金 記号番号 〇〇〇〇

 

2. 相続人A(代償金支払義務者)は、前項の遺産を取得する代償とし

 て、B及びC(代償金取得権利者)に対し、令和〇年〇〇月末日限り、

 それぞれ金〇〇万円を、A又はBが指定する預金口座に振込する方法に

 より支払う。なお、振込手数料はA(代償金支払義務者)の負担とす

 る。 

 

 預貯金を金融機関別及び預貯金種別に複数人に取得させる(「現物分割」で遺産分割する)と、残高が異なることにより相続人間で不公平が生じ、これを調整する必要がある場合は、不足分を代償金として金銭で支払う旨の条項を定めることができます。

 相続財産の預貯金すべてを1人に取得させる場合も、単に「預貯金のすべて」としないで預貯金を特定する記載をすることをおすすめします(預貯金の相続手続きにおいて便利です)。 

 

 

 ※注記は(1)と同じ。

 

4. 代表相続人が全ての預貯金を取得し、葬儀関係費用等を控除した金額を各相続人に分配する(代償分割」)

 

1. 相続人Aは、次の預貯金を取得する。

 

 ① 〇〇銀行〇〇支店 定期預金 口座番号 〇〇〇〇名義 

   ② 〇〇農業協同組合〇〇支店 定期預金 口座番号 〇〇〇〇名義

  及び出資金の全て

   ③ ゆうちょ銀行 通常貯金 記号番号 〇〇〇〇名義

 

2. A(代償金支払義務者)は、前項の遺産を取得する代償として、A、

 相続人B及び相続人C(代償金取得権利者)に対し、前項の戻金から次

 の諸費用を控除した金額を3分の1ずつ、令和〇年〇〇月末日限り、

 A、B又はC指定する口座に振込する方法により支払う。なお、振

 手数料はA(代償金支払義務者)の負担とする。 

 

 ※注記は(1)と同じ。

(参考)

 遺産分割の方法には、

①相続人一人ひとりに、財産の形状や性質を変更することなく現物で分ける「現物分割」、

②相続財産を未分割のまま競売し現金化して分ける「換価分割」、

③不動産の場合にみられますが、相続人の一人が取得し他の相続人には不足分を代償金として金銭で支払う「代償金分割」、

④同じく、不動産の場合にみられますが、相続人の共有にして持分で分ける「共有分割」があります。