被相続人の債権者と相続人の債権者を守る財産分離

□ 相続人が多額の借金を抱え被相続人が遺産をたくさん残している場合(あるいは、逆に、被相続人が多額の借金を残し相続人が財産を持っている場合)は、被相続人(または相続人)の債権者は、自らの債権を守るため、財産分離の請求ができます。

 

□ 相続人が多額の借金を抱えている一方、被相続人が遺産をたくさん残している場合は、被相続人の債権者は遺産と相続人の財産(借金)が混合しないようにする必要があるので、家庭裁判所に財産分離を請求することができます。(請求が認められると、被相続人の債権者は、相続人の債権者に先立って弁済を受けることができる)

 

□ 逆に、被相続人が多額の借金を残している一方、相続人が財産を持っている場合は、相続人の債権者は、遺産(被相続人の多額の借金)と相続人の財産が混合しないようにする必要があるので、家庭裁判所に財産分離を請求することができます。(請求が認められると、被相続人の債権者に先立って弁済を受けることができる)

行政書士は街の身近な法律家

埼玉県行政書士会所属

行政書士渡辺事務所

行政書士・渡邉文雄

 

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1. 財産分離とは

 

 一般的には、借金を抱えていない相続人が相続し、多額の借金を抱えている相続人は相続放棄すると言われています。

 財産分離とは、相続の開始にさいして、関係債権者の公平をはかるために、「相続財産」と「相続人がもともと持っていた財産」を分離させ、相続財産について清算を行う制度です。

 

 

2. 相続債権者と相続人の債権者

 

 相続債権者とは、被相続人に対し債権を有する者です。相続人の債権者とは、文字通り、相続人に対し債権を有する者です 

 

① 相続人が多額の借金を抱え、被相続人が遺産をたくさん残している場合は、「相続債権者」(被相続人に対し債権を有する者)は、債権を守るため、遺産と相続人の財産(借金)が混合しないようにする必要があります。

 

② 被相続人が多額の借金を残し、相続人が財産を持っている場合は、「相続人の債権者」(相続人に対し債権を有する者)は、債権を守るため、遺産(被相続人の多額の借金)と相続人の財産が混合しないようにする必要があります。

 

 

3. 財産分離の手続き

 

(1) 第1種財産分離

 

 上記2-①の、相続人が多額の借金を抱え、被相続人が遺産をたくさん残している場合に「相続債権者」(被相続人に対し債権を有する者)または受遺者が、相続人の財産(借金)と相続財産を分離してもらうものを第1種財産分離といいます。

 「相続債権者」(被相続人に対し債権を有する者)または受遺者は、相続開始3か月以内に、家庭裁判所に、相続を証明する書類、相続債権者であることを証明する書類等を添付して請求します。

 請求が認められると、相続債権者または受遺者は、「相続人の債権者」(相続人に対し債権を有する者)に先立って弁済を受けることができます。

 

(2) 第2種財産分離

 

 上記2-②の、被相続人が多額の借金を残し、相続人が財産をたくさん持っている場合、相続人が相続放棄も限定承認もしないと「相続人の債権者」が債権を回収することができなくなる恐れがあるため、遺産(被相続人の多額の借金)と相続人の財産が混合しないよう、相続人の財産と相続財産(借金)を分離してもらう方法を第2種財産分離といいます。

 

□ 「相続人の債権者」は、相続開始3か月以内に、家庭裁判所に請求します。

□ 請求が認められると、「相続人の債権者」は、被相続人の債権者に先立って弁済を受けることができます。

 

□ 一般的には、相続人は相続放棄すると思われます。