遺産分割方法の指定の委託について。

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埼玉県行政書士会所属

行政書士渡辺事務所

行政書士・渡邉文雄

 

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1. 「遺産分割方法の指定の委託」はどんな場合にをするのか

 

 遺産分割方法の指定とは、具体的な遺産の配分方法を決めることをいいます。遺言を書く時点では不確定要素が多く、具体的に誰にどの財産を相続させるかを決められない場合に、遺言で、第三者に遺産分割方法を定めることを委託する(遺産分割方法の指定の委託)ことができます。

 

2. 遺産分割方法の指定の委託を受けることができるのは第三者です

 

 遺産分割方法の指定の委託は、相続に利害関係を持たない第三者にのみすることができます。相続人及び包括受遺者には委託できません。

 

(参考)

 相続分の指定の委託は相続人、包括受遺者には委託できません。相続分の指定の委託を受けることができるのは、相続に利害関係を持たない第三者です。 (大高決S49)

 

 ただし、相続人又は包括受遺者であっても、本人に関わりのない遺産分割方法を指定させるのであれば第三者となり、例えば、特定の遺産をある相続人に「相続させる」趣旨の遺言をしたうえで、残余の遺産を他の相続人らに配分するにつき、遺産分割の指定をこのある相続人に委託することは差し支えないと考えられています。

 

「例えば、ある特定の遺産を長男に「相続させる」趣旨の遺言をしたうえで、残余の遺産を他の相続人らに配分するにつき、遺産分割の指定をこの長男に委託することは差し支えないと考えられる(相続分の指定の受託者の資格に類似する。)。」(出典:日本公証人連合会(2017)『 新版 証書の作成と文例 遺言編[改訂版]』立花書房.81頁)  

 

3. 法定相続分と異なる配分をすることも許容するときは相続分の指定も合わせて委託する必要がある

 

 遺言で遺産分割方法の指定の委託を受けた者は、法定相続分に従って配分しなければなりません。

 ただし、遺言で相続分の指定も合わせて委託された場合は、法定相続分と異なる内容で遺産配分することができます。法定相続分と異なる配分をすることを許容する趣旨であるときは、相続分の指定も合わせて委託する必要があります。

 

4. 指定された者が委託を拒絶した場合等

 

 指定された者が委託を拒絶した場合及び、指定できないときは指定の委託は効力を失います。(その場合は、相続人による協議により遺産分割方法を決めます。)

 

 なお、指定された者は、受託又は辞退について遅滞なく相続人に通知すべきものと考えられています。

 

 受託又は辞退が不明の状態が続くことにより法律関係が不安定となることから、遺言に、「委託された者が一定期間内に通知しないときは、その委託が失効する」旨を定める場合があります。  

民法908条(遺産の分割の方法の指定及び遺産の分割の禁止)

1.被相続人は、遺言で、遺産の分割の方法を定め、若しくはこれを定めることを第三者に委託し、又は相続開始の時から5年を超えない期間を定めて、遺産の分割を禁ずることができる。

2.共同相続人は、5年以内の期間を定めて、遺産の全部又は一部について、その分割をしない旨の契約をすることができる。 ただし、その期間の終期は、相続開始の時から10年を超えることができない。

3.前項の契約は、5年以内の期間を定めて更新することができる。ただし、その期間の終期は、相続開始の時から10年を超えることができない。

4.前条第2項本文の場合において特別の事由があるときは、家庭裁判所は、5年以内の期間を定めて、遺産の全部又は一部について、その分割を禁ずることができる。ただし、その期間の終期は、相続開始の時から10年を超えることができない。

5.家庭裁判所は、5年以内の期間を定めて前項の期間を更新することができる。ただし、その期間の終期は、相続開始の時から10年を超えることができない。

民法906条(遺産の分割の基準)

遺産の分割は、遺産に属する物又は権利の種類及び性質、各相続人の年齢、職業、心身の状態及び生活の状況その他一切の事情を考慮してこれをする。


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