相続財産のさがし方~相続財産調査~

□ 相続(遺産分割)は、まず相続可能財産を金銭に換算するのが前提です。被相続人が財産目録を残していない

ときは、遺産分割協議前に相続財産を調べ財産目録を作成する必要があります。 

 

□ 相続財産は預金通帳の記録を手掛かりに、賃貸用不動産、借地権、未収家賃、定期積金、貸付金、生命保険、共済金、未支給年金、貸金庫などの有無を調べることができます。また、確定申告書からさがすことができます。預金は、全店照会(銀行の本支店の横断検索)をしてもらうことができます。生命保険は年に一回お知らせが来ています。

 預金の開示には、被相続人(亡くなられた方)が生まれてから亡くなるまでのすべての戸籍謄本と、相続人全員の同意書(印鑑証明)が必要です。

 

□ 被相続人が会社を経営していた場合は、土地・建物、預貯金・有価証券等の積極財産はもとより、会社の連帯保証人になっていないかも調べる必要があります。

注意事 項 2026年(令和8年)4月1日から、所有不動産記録証明制度(特定の被相続人が所有権の登記名義人として記録されている不動産を一覧的にリスト化し、証明する制度)が施行される予定です。

行政書士は街の身近な法律家

埼玉県行政書士会所属

行政書士渡辺事務所

行政書士・渡邉文雄

 

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1. 不動産(土地・建物)調べ方

 

□ 「固定資産税納税通知書」で調べる

 固定資産税納税通知書は毎年5月に、土地建物のある市町村役場(東京23区の場合は都税事務所)から送られてきます。

 

□ 「固定資産評価証明書」で調べる

 「固定資産評価証明書」を土地建物のある市町村役場(東京23区の場合は都税事務所)で取得し調べます。代理人が請求する場合は委任状が必要です。郵送による取り寄せもできます。

 

□ 「固定資産名寄帳」で調べる

 故人名義の不動産や未登記の建物等(私道等非課税不動産も記載されている)の確認のため、「固定資産名寄帳(固定資産税課税台帳の写し)」を取得し調べます。単独所有と共有名義は別になっているので注意。

 相続人一人からでも請求できます。

※ 住所地市町村以外にある場合に注意します。

 

□ 「登記事項証明書(登記簿謄本)」で調べる

 不動産の基本情報調査のためには、所在地を管轄する登記所で「土地・建物の登記事項証明書(登記簿謄本)」を取得し調べます(最寄りの登記所がコンピュータ化された登記所の場合は、所在地を管轄する登記所でなくても取得できます)。郵送による取り寄せもできます。 

 

2. 預貯金調べ方

 

□ ゆうちょ銀行 

 口座の有無の確認をする場合は、①被相続人の死亡の事実がわかる戸籍謄本、②申請者(相続人)と被相続人の関係がわかる戸籍謄本(①と申請者(相続人)の現在の戸籍がつながるようすべての戸籍を集める)、及び申請者(相続人)の印鑑証明書・実印、本人確認書類(免許証等)を持参し申請します。

 

 口座があれば「残高証明」を申請し、又は「入出金照会」を行うことができます。

 

□ その他の金融機関

 口座の有無の確認をする場合は、金融機関がわかれば「全店照会」を申請し口座を調べることができます。

 その際通常は、①被相続人の死亡の事実がわかる戸籍謄本、②申請者(相続人)と被相続人の関係がわかる戸籍謄本(①と申請者(相続人)の現在の戸籍がつながるようすべての戸籍を集める)、及び申請者(相続人)の印鑑証明書・実印、本人確認書類(免許証等)を持参し申請します。

 

 口座がわかれば「残高証明」を申請し、死亡時の残高を調べることができます。また、「入出金照会」を過去3年分遡って申請すれば贈与を確認できます。(遺産分割協議) 。

 相続税の申告には「利息計算書」が必要です。

 

 どの金融機関に預金があるのかが分からない場合には、各金融機関に口座の有無を調べてもらう「名寄せ」を申請し調べることができます。 

 

3. 有価証券調べ方

 

 上場会社の株は年に一回、証券会社から取引残高報告書が送られてきます。それにより、どの証券会社にどこの株をどれくらい持っていたかが確認できます。被相続人の戸籍謄本及び、相続人と被相続人の関係がわかる戸籍謄本等を添付して、残高証明書もしくは評価額がわかる書類を請求できます。

 投資信託は金融機関から年に数回送付されてくる取引報告書があります。 

 証券保管振替機構(「ほふり」)に「登録済加入者情報の開示請求」を行い、証券口座開設先を調べることができます。

 

 存在が確認できたが詳細が分からないときは、取引店に口座照会します。 

 

4. 生命保険調べ方

 

 生命保険金は、被相続人(契約者)が自分を被保険者としかつ保険金受取人としていたときは相続財産となります。被相続人(契約者)が自分を被保険者とし、相続人の一人を受取人に指定していたときは、保険金は通常、受取人固有の財産とみなされ、相続財産には含まれません。

 ただし、保険金の額、遺産総額に対する割合等から他の相続人と著しく不公平とみられる場合は、極めて例外的に、特別受益に準じて持ち戻しが認められる場合があります。 

 

 「生命保険金」の有無や受取人指定の有無は保険証券で確認します。保険証券が見つからない場合は保険会社に連絡します。

 

5. ゴルフ会員権

 

 ゴルフ会員権には相続できるものとできないものがあります。会則の確認が必要です。 

 会則に相続や譲渡を明確に禁じる定めがない場合は、相続人は契約上の地位を相続できます。(1997.3、最高裁) 

 会員の死亡を資格消滅の理由とする会則があっても、理事会承認があれば相続人は会員資格を取得できます。(1991.2、東京高裁) 

  

6. 自動車ローンの調べ方

 

 車をローンで購入した場合、多くの場合、販売店若しくは信販会社に所有権が留保されています。 

 車検証をみて「所有者」に問い合わせれば、ローンの残債務が分ります。 

 

7. 住宅ローンの調べ方

 

 ローンの残債務はローンの償還表などで確認します。 

 

8. 消費者金融・銀行からの借り入れ、クレジットカードでの債務

 郵便物や遺品の中に請求書や督促状がないか確認します。

 通帳でクレジットカード等の引き落とし履歴を調べます。最近の記帳がされていないときは、ATMで記帳します。 

 

 CIC(クレジットカード系信用情報機関)、JICC(消費者金融関系信用情報機関)、KSC(全国銀行個人信用情報センター)に問い合わせて調べることもできます。 

 

9. 私人からの債務

 

 遺品の中に借用書などがないか調べます。 

 

※ 相続財産調査中は、債務(借金)が判明しても返済の約束等をしてはいけません。相続放棄ができなくなる恐れがあります。

 

10. 連帯保証

 

 特に被相続人が会社を経営していた場合、会社の連帯保証人になっていないか、調べます。