離婚請求が認められる「離婚理由(離婚原因)」

□ 話し合いで合意して離婚する場合(協議離婚)や、離婚調停で合意して離婚する場合(調停離婚)は、離婚の理由(離婚の原因)の有無は問題になりません。「離婚理由」(離婚原因)が必要なのは裁判で離婚する場合です。

□ 裁判で離婚が認められる理由になるのか、離婚させるべきかどうかは、裁判所の判断によって決められ、個別事情により離婚ができるかどうか異なります。


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埼玉県行政書士会所属

行政書士渡辺事務所

行政書士・渡邉文雄

 

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 1. 裁判で離婚するにはどうするか

 

 裁判で離婚するためには、まず家庭裁判所に「調停の申し立て」をしなければなりません。 

 裁判は、調停が成立しないときにはじめてを起こすことができます。 

 

 あなたが離婚したい理由が、裁判で離婚が認められる理由になるのか否かは、裁判所の判断一つです(民法770条に定められている離婚原因は5つありますが、例示と解釈されています)。

 

2. 裁判で認められる離婚理由(離婚原因) 

 

①    配偶者に「不貞な行為」があった 

 

 不貞な行為とは、配偶者以外の者と肉体関係を伴う浮気・不倫をすることを指します。風俗店での行為であっても不貞行為となります。

 プラトニックな関係や同性愛は不貞行為にはあたらないとされています ただし、下記⑤に該当すると判断されることはありえる)。

 不貞な行為が夫婦関係が破綻した後に始まった場合は、離婚が認められる理由にはならないとされることがあります。

 

※ 「不貞な行為」があったことの証明は、写真、メールなどの証拠で行います。

 

②    配偶者から「悪意で遺棄された」

 

 置き去りにして家を出た、追い出すなど夫婦間の同居義務に反する行為があった。  

・ 行き先も告げず自宅を出て、長期間生活費を送金しない

・ 生活ができなくなることが分かっていながら生活費をよこさない

・ 生活費は入れているが、全く家によりつかない 

・ 暴力的行為で追い出し家に入れない 

 

※ 遺棄が数か月に及ぶなど相当期間継続していることが必要とされています。 

 

③    配偶者の3年以上の生死不明 

 

・ 3年以上生死不明で死亡している可能性の高い失踪であることが必要です(所在が不明でも生きていることが明らかな場合は除かれます)。

 配偶者が3年以上生死不明の場合は、調停を経ず直接訴訟を起こすことができます。

 

・ 7年以上の生死不明の場合は「失踪宣告」によって婚姻関係を解消することもできます。

 

※ ただし、「失踪宣告」による婚姻関係の解消は、生存が判明すれば復活します。また、財産の処分は「財産分与」ではなく、「相続」となります。

 

※ 3年以上の生死不明によるものは、戸籍に「離婚」の記載がなされますが、「失踪宣告」による婚姻関係の解消は、戸籍に離婚の記載はなされません。

 

④    配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがない 

 

 人情的にいかがなものかと思うかもしれませんが、配偶者の人生に配慮したものです。ただし、医師が回復の見込みがあると診断した場合等は認められません。 

 

⑤    婚姻を続けていかれない重大な事由がある

 

□「生活観」「価値観」「人生観」などの相違。性格の不一致

 

※ 性格の不一致に起因して夫婦関係が破たんしたものについては離婚が認められる傾向にあります。

 婚姻を続けられない重大な事由の有無によって判断されます(双方の婚姻継続の意思の有無、婚姻中の双方の行為・態度、子の有無・状態、双方の年齢、性格、職業、健康状態、別居の有無・期間)。

 

□ 配偶者に同居に耐えられないような侮辱を受けた 

□ D V、暴行虐待

 身体的暴力、心身に有害な影響を及ぼす言葉等による精神的な暴力のほか、経済的虐待もこの事由にあたることがあります。

□ モラルハラスメント

 舌打ち、ドアをわざと大きな音を立てて閉める、家事の細かなミスを指摘するなどして相手を委縮させる等の不快な行動や態度。

 

※ 診断書、ケガの写真などで証明します。

 

□ 借金ギャンブル浪費 

□ 働けるのに働かない 

□ 過度に宗教活動に専念したことにより夫婦仲が破綻している 

 

※ 宗教や信仰それ自体がただちに離婚理由になるということではありません。

 

□ 愛情が冷却している

□ 性的異常、性交不能であることを知らせないで婚姻した、継続的に性交渉を拒否している 

□ しゅうとの嫁いじめがひどい 

□ 配偶者から、自分の直系尊属が重大な虐待や侮辱を受けた  

 侮辱:事柄を示さず、「バカ」「アホ」「死ね」等と言うこと。

 名誉棄損:ある事柄を示して相手の社会的評価を下げること。真偽は問わない。

□ 配偶者が破廉恥な罪で刑に処せられた。配偶者がその他の罪で三年以上に刑に処せられた

 

※ 犯罪行為・服役の事実だけで離婚が認められるわけではありません。配偶者の名誉が傷ついた、家族の生活に困難をもたらした、といった事情がある場合に限られます。

 

□ アルコール中毒、薬物中毒があり、それが原因で夫婦仲が破綻している

 

□ 重度でない精神障害や難病、重度の身体障害があり、それが原因で夫婦仲が破綻している

 

※ ただし、障害のある配偶者に対し誠意ある介護・看護をしてきた、離婚後の療養、生活などに具体的方策が講ぜられ、その見込みがついた、といった事情が必要です。

 

□ 長期の別居 

 5年以上継続して別居が一応の目安になると考えられています。

 

「一般には、原告が有責配偶者でない場合の離婚訴訟では、離婚の理由を五号の「婚姻を継続しがたい重大な事由」として主張する場合、別居期間が五年程度に及んでいれば「破綻」と認定されることが多い」(中村久留美(2005)『離婚バイブル』文藝春秋.111頁)

 

「婚姻が破綻しているというためには、別居期間は少なくとも五年から八年くらいは必要であり、しかも当事者間に未成年の子どものいない場合というのはこれまでの判例の流れ」(中村久留美(2005)『離婚バイブル』文藝春秋.159頁) 

 

3. 浮気をした方(ほう)からの離婚請求は認められるか

 

 有責配偶者からの離婚請求(破綻の原因が離婚を請求する側にある場合)は、原則として離婚は認められません。

 ただし、離婚後の生活が精神的、経済的に極めて困難になるなどの事情がない場合は、有責配偶者からの離婚請求でも認められる場合があります。

 

① 婚姻破たんによる別居期間が相当長期間に及ぶ

 平成2年には別居期間8年の事案ついて有責配偶者の離婚請求を肯定した例があります。 

 

② 二人の間に未成熟子がいない

 独立して生計を営むことができない子がいない こと。なお、未成熟子は民法上の未成年とは意味あいが異なります。

 なお、事情を考慮し、未成熟子がいても認めた判例もあります。

 

② 過酷条項

 双方の職業・収入・生活状況を総合的に考慮し、離婚しても他方の配偶者が精神的、社会的、経済的に苛酷な状態にならない 。

 離婚を認めても著しく社会正義に反するといえるような特段の事情がない。

・ 相当額の財産分与や慰謝料の支払い がある

 

③ 不貞行為と婚姻破たんに因果関係が認められない場合には有責配偶者からの離婚請求は認められます

 

④ 双方に婚姻破たんに同程度の責任がある場合には有責配偶者からの離婚請求は認められます 

 

※ 個別事情により離婚ができるかどうかが決まります。弁護士に相談することをお勧めします。 

 

4. 一度許した浮気を理由に離婚請求できるか

 

 一旦許し、その後婚姻関係が安定し継続していた場合は、蒸し返して離婚請求するのは難しいと考えられています。

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