相続登記の申請者は誰か

 不動産の所有権移転の登記の申請は、登記権利者(新所有者)と登記義務者(旧所有者)が共同して行うのが原則ですが、相続による不動産の所有権移転登記の申請については、不動産をもらった相続人が、他の共同相続人の協力がなくても単独で申請することができます)。

 2018相続法改正により、遺言執行者は、原則として、単独で相続による権利の移転登記の申請をする権限を有することとされました

行政書士は街の身近な法律家

埼玉県行政書士会所属

行政書士渡辺事務所

行政書士・渡邉文雄

 

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1. 相続による所有権移転の登記 

 

(1)相続により単独で不動産を取得した場合の所有権移転登記の申請

 

 不動産の所有権移転の登記の申請は、登記権利者(新所有者:不動産をもらった人)と登記義務者(旧所有者)が共同して行うのが原則ですが(不動産登記法60条)、相続による不動産の所有権移転登記の申請については、相続により単独で不動産を取得した場合、不動産をもらった相続人が、他の共同相続人の協力がなくても、単独で登記権利者として申請することができます(不動産登記法63条2項)。

 不動産登記法63条(判決による登記等)

1. (省略)   

2. 相続又は法人の合併による権利の移転の登記は、登記権利者が単独で申請することができる。 

 

(2)遺産分割により単独で不動産を取得した場合の所有権移転の登記の申請

 

 遺産分割により単独で不動産を取得した相続人は、共同相続の登記を経由することなく、単独で、被相続人から直接、所有権移転の登記の申請をすることができます。

 

相続人が遺産分割により不動産を取得した場合、共同相続の登記を経由することなく、被相続人から当該相続人に直接に所有権移転登記をすることができるかについては、登記実務の取り扱いでは、数人のために相続が開始したのち、各相続人において遺産分割の合意があったときは、共同遺産相続の登記をすることなく、直ちに分割後における 各単独所有名義の遺産相続登記をすることができるとしています(昭和19年10月19日 民事甲 692号回答)。

 

(出典:小池信行(監修)・吉岡誠一(著)( 2015)『これだけは知っておきたい 相続の知識 -相続人と相続分・遺産の範囲・遺産分割・遺言・遺留分・寄与分から戸籍の取り方・調べ方、相続登記の手続・相続税まで-』日本加除出版.65頁)   

 

(3)複数の相続人で共有相続する場合

 

 複数の相続人で共有相続する場合は、それぞれ登記権利者として、相続人全員共同で所有権移転登記の申請をするものとされています(不動産登記法63条2項)。

 複数の相続人で共有相続する場合、共同相続人の一人が、民法に定める保存行為(民法252条但し書き)として、相続人全員のために相続による所有権移転登記の申請をすることができます。  

 

 ただし、共同相続人の一人が、全員のためにではなく、自己の相続分についてのみ所有権移転登記の申請をすることはできないとされています。 

 

不動産登記法63条(判決による登記等)

1. (省略)     

2. 相続又は法人の合併による権利の移転の登記は、登記権利者が単独で申請することができる。  

 

(4)共同相続を登記した後に遺産分割協議が成立した

 

 共同相続を登記した後に遺産分割協議が成立した場合は、法定相続分より持分が増えた者を登記権利者、法定相続分より持分が減った者を登記義務者として、持分移転の登記を共同申請すべきであるとされています。(登記原因を「遺産分割」、登記の日付を遺産分割の協議が成立した日とします)。 

 

 

2. 遺言執行者による相続による不動産の所有権移転登記の申請

 

 2018相続法改正により、遺言執行者は、原則として、単独で相続による権利の移転登記の申請をする権限を有することとされました