遺言による指定分割(遺言による遺産分割の実行の指定)

□ 遺言でどの財産を誰に相続させるかを指定する(遺言による指定分割)ことを、遺言による「遺産分割の実行の指定」とも言います。「遺産分割の実行の指定」がある場合は、遺言の指定にしたがって遺産分割します。

□ 遺言が無い場合は、法定相続分にしたがって遺産分割するか、共同相続人による協議による分割をします。

1. 遺産分割

 

 相続人が複数いる場合は、財産上の権利義務はすべて複数の相続人に包括的に移転し、相続財産は、遺産分割が行われるまでは、それぞれの財産について、持分に応じて相続人全員の共有となります(相続させる旨の遺言により、それぞれの財産について誰が相続するかを指定している場合を除きます)。 

 共有のままでは、財産の利用や処分についての制約があるため、相続人の協議によって財産を分け、それぞれが相続する財産を確定させます。これを「遺産分割」といいます。

 

2. 遺産分割の方法の種類

 

 遺産分割の方法には、遺言による指定分割、共同相続人による協議による分割及び家庭裁判所による分割の3種類があります。  

 

 遺言により、それぞれの財産について誰が相続するかについて指定すること(遺言による指定分割)を、遺言による遺産分割の実行の指定ともいいます。

 

3. 遺産分割協議(相続人の話し合い)が必要な場合

 

(1)遺言が無い場合及び遺言はあるが無効である場合

 

 遺言が無い場合及び遺言はあるが無効である場合は、法定相続分にしたがって遺産分割できますが、必要な場合は、相続人の話し合いで決めます 。 

 

(2)遺言がある場合は、遺言の指定にしたがって遺産分割しますが、以下の場合は相続人の話し合いが必要となります

 

① 遺言で指定された内容とは違う分け方をしたい

 

 遺言書があっても、相続人全員の合意があれば、遺言に従わなくてもよいとされています。

 相続人全員の合意で、遺言で指定された内容とは違う分け方をするときは遺産分割協議を行います。

 ただし、遺言で、遺言で指定した内容と異なる分け方を禁じている場合は、遺言で指定された内容と違う分け方はできません。

 

② 遺言が「相続分(相続分率)の指定」のみをしている場合

 

 遺言が「相続分(相続分率)の指定」のみをしている場合は、どの財産を誰が相続するかについて相続人で話し合い決めます 。 

 

③ 遺言に「洩れている財産」があり、その扱いに関する遺言がない場合

 

 遺言に「洩れている財産」は、原則的には法定相続になりますが、相続人全員の同意があれば、その遺産を誰が相続するかを遺産分割協議で決めることができます。

 

④ 遺言に洩れている借入金や未払い金などの債務がある場合

 

 遺言に洩れている借入金や未払い金などの債務がある場合、原則的には、相続人が法定相続分に応じて承継しますが、相続人全員の同意があれば、その債務を誰が承継するか遺産分割協議で決めることができます。

 

 しかし、対債権者の関係では、債権者の同意がある場合を除き、債務は法定相続分に応じて承継します。

 

⑤ 特別受益があり、その扱いに関する遺言がない場合

 

⑥ 寄与分の申し出があるとき 

 

⑦ 相続放棄・限定承認があるとき 

 

4. 遺産分割の効力の開始時期

 

 遺産分割協議が成立した段階で遺産の分割が確定し、相続のときに遡って有効になります。共有の期間はなかったことになります。

 各相続人が遺産分割によって取得した財産は、相続開始の時から、直接被相続人から承継したものとして取り扱われます。 

 

民法909条(遺産の分割の効力)

 遺産の分割は、相続開始の時にさかのぼってその効力を生ずる。ただし、第三者の権利を害することはできない。