遺言による債務の承継について。

① 包括遺贈の場合、債務は遺贈を受けた割合に応じて承継します。各共同相続人は遺産の分配、遺贈、贈与を含めた現実に取得したプラスの相続分に応じて債務を負担します。

 

② 債務を特定の相続人に承継させる旨の遺言をしても、債権者の承諾がない限り、債権者に対し効力がありません。

 

③ 遺言でプラスの財産と別に債務だけを承継させることはできません。

 

④ 遺言で「債務の承継を負担として規定」することができます。ただし、債権者の承諾がない限り、債権者に対し効力がありません。

1. 遺言による債務の承継

 

(1) 包括遺贈受遺者と債務の承継

 

 包括遺贈の場合、債務は遺贈を受けた割合に応じて承継します。各共同相続人は遺産の分配、遺贈、贈与を含めた現実に取得したプラスの相続分(*)に応じて債務を負担します。

 

* 特別受益、寄与分は無関係として除きます(多数説)

 

(2) 特定遺贈受遺者と債務の承継

 

 特定遺贈の場合は、債務は承継しません。

 ただし、債務の承継を負担として規定することができます。 債務の承継を負担として規定しても、債権者の承諾がない限り、債権者に対し効力はありません。 

 

 (3) 遺言で債務を特定の相続人に承継させる

 

 債務を特定の相続人に承継させる旨の遺言をしても(又は、相続分の指定に際し、可分債務について法定相続分と異なる負担割合を指定)、債権者の承諾がない限り効力はなく、債権者は拘束されません。債権者は遺言による相続人に支払い能力がないと思ったときは他の法定相続人に法定相続分に応じて請求することができます。

 

 (4) 債務だけを特定の相続人に承継させる

 

 遺言でプラスの財産と別に債務だけを承継させることはできません。

 

2. 相続財産で支払うこととされている承継債務(再掲:》》 債務の相続(承継)

 

(1) 借金、月賦、未払いの税金・家賃・医療費、相続不動産に関する諸経費(ローンの返済金・固定資産税・借地料・家屋修繕費・火災保険掛金) 

 

(2) 遺言執行費用や遺言執行者報酬

 

 遺言執行費用や遺言執行者報酬は相続財産の負担とされ、相続財産で支払います。 

 

(3) 登記手続き費用・不動産の登録免許税 

 

① 登記手続き費用 相続させる遺言の場合

 相続させる遺言の場合は登記手続きは相続人単独で可能であり、遺言執行の余地がないので、登記手続き費用は遺言執行費用には含まれず、当該不動産を相続する者の負担となる。

 

② 登記手続き費用 遺贈の場合

 遺贈の場合は登記手続きは遺贈義務者との共同申請によらなければならないから、登記手続き費用は遺言執行費用に含まれる。遺言執行費用は相続財産の負担とされ、相続財産で支払う。 

 

③ 不動産の登録免許税

 不動産の登録免許税は消極に解するのが相当と考えられる。

  

(出典;日本公証人連合会(2017)『 新版 証書の作成と文例 遺言編[改訂版]』立花書房.73頁)

 

3. その他で支払い、又は承継することとされている債務

 

(1) 葬儀・埋葬等の費用

 

 葬儀・埋葬等の費用については、相続債務とは言えず、通常、祭祀主宰者が負担すべきものとされる。 

(出典;日本公証人連合会(2017)『 新版 証書の作成と文例 遺言編[改訂版]』立花書房.72頁) 

 

(2) 敷金返還債務

 

 被相続人がアパート経営をしていた場合の「敷金返還債務」については当該不動産の所有権を相続し賃貸人の地位を継承した者(最判昭和44.7)。 

 

(3) 連帯保証人

 

 連帯保証人になっていたときはその地位も引き継ぎ、連帯債務は相続分に応じて分割されたものを承継し、その範囲において連帯債務者となります。(最判S34.6.19)   

 

(4) 賃貸借契約の保証人

 

 賃貸借契約の保証人については保証は相続し保証責任を負います。なお、書面によらない保証は無効です。

 

(5) 一回限りの普通の保証

 

 一回限りの普通の保証もその地位を引き継ぎます。

 

(6) 身元保証

 

 身元保証については、相続は認められないとするのが一般的です。

 保証人の死後に発生する債務については身元保証責任を負うことはありません。ただし、生前に発生していた保証債務は承継します。


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