遺言による財産分与の対象か否か?紛らわしいもの

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埼玉県行政書士会所属

行政書士渡辺事務所

行政書士・渡邉文雄

 

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1. 遺言による財産分与の対象となる相続財産以外の遺産

 

 「相続財産」以外にも遺言による財産分与の対象になるものがあります。

 

2. 生命保険金

 

 遺言者が自身を受取人として指定している場合、すなわち、遺言者が保険契約者と被保険者及び保険金の受取人の資格を兼ねている場合は、保険金請求権は相続財産に属すると解されており、遺言による財産分与の対象になります。 

 

3.  民間企業等の死亡退職金 

 

法令又は会社等の内規に死亡退職金を支給する旨の規定はあるものの、具体的な受取人の指定(受給者の範囲、順位)に関する規定がない場合は相続財産に属し、遺産分割の対象となると考えられています(最三小判昭和62年3月3日から判断)。 

 したがって、遺言による財産分与の対象になり、 遺言で特定の相続人に相続させたり、遺贈することができます。

 なお、 通常、会社の退職金規程には、退職金の受給者の範囲、順位が定められていますので、死亡退職金を遺言で特定の相続人に相続させたり遺贈しようとするときは、予め、会社の退職金規程に受給者の範囲、順位の定めがないことを確認する必要があります。

 

(出典:第一東京弁護士会人権擁護委員会[編](2016)『離婚を巡る相談100問10答 第二次改定版』ぎょうせい.191-192頁) 

 

4.  公務員・私立学校法人の職員の死亡退職手当 

 

 相続財産に属しません。遺産分割の対象とはならず、受取人の固有の権利と考えられます。

 したがって、遺言による財産分与の対象にはなりません(遺言があっても無効です)。

 

5. 遺族年金

 

 公的年金の遺族年金は、法律によって受給権者が定められていることから、受給権者の固有の権利であり相続財産に属しません。遺産分割の対象となりません。

 したがって、遺言による財産分与の対象にはなりません(遺言があっても無効です)。

 

6. 未支給年金

 

 未支給年金とは被相続人が亡くなる前の年金でまだ支給日の来ていないもののことです。 

 公的年金の未支給年金は、法律によって受給権者の範囲と順位が定められていることから、受給権者の固有の権利であり相続財産に属しません。したがって、遺言による財産分与の対象にはなりません(遺言があっても無効です)。 

 

7.  個人年金

 

 個人年金とは、公的年金(国民年金や厚生年金等)を補填する目的で、生命保険会社と契約する「私的年金」の一種です。

 生死に関わらず一定期間「年金」が受け取れる「確定年金」、生存している限り一生涯「年金」が受けとれる「終身年金」、生存している限り一定期間年金が受け取れる「有期年金」など、様々な種類があります。

 

 個人年金を受給していた方が亡くなった場合は、遺族は「年金受給権」を承継し、残りの期間の「年金」を受け取ることができます (終身年金、有期年金を除く)。

 

 当該の個人年金の規定に、受給していた方が亡くなった場合における受給権者が定められているときは、被相続人の代わりに受給する個人年金は受給権者の固有の権利であり相続財産に属しません。したがって、遺言による財産分与の対象にはなりません(遺言があっても無効です)。

 

8. 退職年金

 

 退職年金とは、「企業年金」制度のある会社に勤めていた被保険者が死亡した場合、退職金の一部を「年金」として受け取るものです。

 退職年金を受給していた方が亡くなった場合は、遺族は「年金受給権」を承継し、残りの期間の「年金」を受け取ることができます。

 

 当該の退職年金の規定に、受給していた方が亡くなった場合における受給権者(受給権者の範囲と順位)が定められていますので、被相続人の代わりに受給する退職年金は受給権者の固有の権利であり、相続財産に属しません。したがって、遺言による財産分与の対象にはなりません(遺言があっても無効です)。

 

(退職年金の受取人を変更する)

 

 遺言で、当該の退職年金の規定に定められている退職年金の受取人を変更することができる場合があります。

 遺言で、受取人を変更をしようとするときは、予め、受託機関に、規定上可能か否かについて確認する必要があります。


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