遺言による生命保険金受取人の変更、遺言による生命保険受取人の「指定」。保険金請求権は相続財産か?保険金と特別受益。離婚と保険金受取人

□ 遺言で、生命保険の死亡保険金受取人の指定又は変更ができます(保険法第43、72条)が、遺言による保険金受取人の変更が無条件でできるのは、2010年(平成22年)4月1日以後に締結された生命保険契約のみです。これより前に契約した生命保険契約については、保険契約約款等で禁止されていない場合のみ、遺言による保険金受取人の変更が可能です。

□ 2010年(平成22年)4月1日より前に締結された生命保険契約について、遺言による保険金受取人の変更をしようとする場合は、保険契約約款等で禁止されているか否かについて各保険会社に確認する必要があります。

□ 遺言による保険金受取人の変更にはリスクがあります。死後、相続人が保険会社に保険金受取人変更の通知をしなかったり、変更通知の前に支払いがなされた場合は、受取人変更を保険会社に対抗できません。

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ポイント 関連情報

➤遺言で保険金受取人を変更又は指定する

遺言で保険金受取人を予備的に変更する

保険金受取人を変更する遺言文例

1. 遺言による保険金受取人の変更が無条件でできるのは、2010年(平成22年)4月1日以後に締結された生命保険契約のみです

 

(2010(平成22)年4月1日より前に契約した生命保険契約について)

 

 2010(平成22)年4月1日より前に契約した生命保険契約については、保険契約約款等で禁止されていない場合のみ、遺言による保険金受取人の変更が可能です。保険契約の約款等で禁止されている場合はできません。  

 したがって、2010年(平成22年)4月1日より前に締結された生命保険契約について、遺言による保険金受取人の変更をしようとする場合は、保険契約約款等で禁止されているか否かについて各保険会社に確認する必要があります。

 

2. 保険金受取人の変更をするときに定める遺言条項

 

(1) 生命保険死亡保険金受取人を変更する条項 

 

 

(2)  死後、相続人は保険会社に連絡する旨定める条項

 

 保険法では、遺言で、保険証券で指定した生命保険の死亡保険金受取人を変更した場合は、保険金受取人変更の通知を保険契約者の相続人がするものと規定され、保険会社への通知をもって受取人変更の対抗要件とするとされています。(保険法44条2項)(ちなみに、受取人を指定していない場合は、相続人の一人が保険金の請求をすることとされている)

 

 したがって、遺言で保険金受取人を変更しても、死後、相続人が保険会社に保険金受取人変更の通知をしなかったり、変更通知の前に支払いがなされた場合は、受取人変更を保険会社に対抗できません。(死亡保険金は請求から2週間~1か月程度で支払われる)

 

 遺言による生命保険金受取人の変更又は指定をする場合は、遺言に、死後、相続人(又は遺言執行者)は速やかに保険会社に連絡するよう記載することをおすすめします。

 

(3)  遺言執行者の指定 

 

 遺言執行者も保険金受取人変更の通知をすることができます。保険金受取人変更の通知が速やかに確実に行われるよう、遺言執行者を指定しておくことをおすすめします。

 

 遺言執行者の権限には、保険金受取人の変更に関して保険会社が求める手続きをする権限も含まれるとされています。

 

3. 遺言者(保険契約者)と被保険者が異なる場合は、遺言による保険金受取人の変更は、被保険者の同意がなければ、その効力を生じません

 

(参考)

 保険法45条 (保険金受取人の変更についての被保険者の同意)   

 死亡保険契約の保険金受取人の変更は、被保険者の同意がなければ、その効力を生じない。  

 

4. 遺言による生命保険受取人の「指定」の可否は、その生命保険契約の定めにより異なります 

 

 「遺言による生命保険受取人の指定」については、保険法に明文の規定がなく、各生命保険契約の定めるところに従います。したがって、遺言による保険金受取人の指定をしようとする場合は、保険契約約款等で禁止されているか否かについて各保険会社に確認する必要があります。 

 

5.  保険金請求権が相続財産になるのは、遺言者が自分自身を受取人として指定している場合だけです 

 

 生命保険金を受け取る権利は、被保険者の死亡により発生するものであり、被相続人が一旦取得したのち相続されるものではないので、基本的には相続財産には属さないと解されています。ただし、被相続人(遺言者)が自分自身を受取人として指定している場合は、保険金請求権は相続財産に属すると解されています。

 

(生命保険金の相続財産上の性格)

 

 生命保険の死亡保険金については、遺言で受取人を指定していれば指定受取人の固有の財産となり、相続財産には算入しません。 

 

① 生命保険金は相続財産には属さないと解されています。(最判昭和40年2月2日)

 

② 生命保険金は遺留分減殺(侵害額請求)権の対象とはなりません。(最判平成14年11月5日)

 

6 生命保険金は特別受益にあたるか否か 

 

 生命保険金は民法903条の遺贈には当たらないが、相続人間の不公平が民法903条の趣旨に照らして是認できないほど著しい事情があるときは持ち戻しの対象になる、としている。(最決平成16年10月29日) 

 

(生命保険金請求権と特別受益持戻) 

生命保険金請求権の取得のための費用である保険料(掛金)は、被相続人が支払ったものであり、保険契約者である被相続人が死亡したことにより

保険金請求権が発生することに鑑み、保険金を受け取る相続人と受け取らない相続人の間でに生ずる不公平が到底是認することができないほどに著しいと評価できる特別な事情がある場合には、生命保険金請求権は、民法903条の特別受益に準じて持戻しの対象になるとされています。(出典:みらい総合法律事務所【編著】( 2021)『応用自在!遺言書・遺産分割協議書作成のテクニック』日本法令.544頁)

 

7. 離婚と保険金受取人

 

 生命保険契約で保険金受取人を妻〇〇と指定し、その後離婚しても、保険金受取人の変更をしなければ保険金受取人は変わりません。


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