行政書士は街の身近な法律家
埼玉県行政書士会所属
行政書士渡辺事務所
行政書士・渡邉文雄
1. 強制執行認諾文言付公正証書の場合
➣ 相手に手紙などで支払い期限を明示して養育費を支払うよう請求します。
➣ 期限までに支払いがないときは、地方裁判所に対し「強制執行」の申し立てをします。
□ 差し押さえる財産の情報を調査
「どこにある、どの財産」を差し押さえてほしいのかを裁判所に説明する必要があります。給与を差し押さえるのであれば、「勤務先」の情報、預金口座を差し押さえるのであれば「銀行名・支店名などの口座」の情報を裁判所に伝える必要があります(元配偶者の口座等を特定しないと差し押さえできません)。
※財産開示請求制度を利用し、差し押さえる財産の情報を調査することができます
令和2年4月1日に改正民事執行法が施行され、改正前は、強制執行認諾文言付公正証書による強制執行の場合は、財産開示請求制度を利用することはできませんでしたが、改正後は、利用することができるようになりました(民事執行法197条1項。改正前の同項では、公正証書は除かれていた)。
また、市町村や日本年金機構等に情報提供を求めることができる制度ができました。市町村や日本年金機構等が有している債務者の勤務先情報を調査することができます。
法改正前に作成された公正証書であっても可能です。
□ 強制執行申立提出書類
➊ 強制執行申立書(債権差押命令申立書)
❷ 給与差し押さえの場合、元配偶者の会社の登記簿謄本(資格証明書)
❸ 請求債権目録(養育費を請求する権利の内容)
❹ 差押債権目録(給与を差し押さえる場合には、給与を支払う会社や給与の金額など。預金を差し押さえる場合には、口座)
❺ 当事者目録(給与を差し押さえる場合には、申立人、元配偶者、そして元配偶者の勤める会社)
➣ 書類がそろったら、元配偶者の勤務する会社の所在地の地方裁判所に書類を提出します。
□ 給与を差し押さえる場合には、元配偶者が勤務する会社と養育費分の給与からの天引き、支払う口座を話し合います。
※ 給与を差し押さえる場合には、給与額から税金と社会保険料を差し引いた残額の2分の1(慰謝料の場合は4分の1)、残額の2分の1が33万円を超えるときは33万円を除いた部分が差押可能です。
※ 元配偶者が会社経営者であれば役員報酬を差し押さえることができます。
※ 支払期限の過ぎたものだけでなく、これから支払期限のくるもの(将来の給与など)についても差し押さえることができます(慰謝料は過去の不払い分のみ) 。
※ 一度強制執行を行えば、将来にわたって元配偶者の給料から天引きで養育費を受け取れます。
※ 転職をした場合は、改めて差し押さえ手続きを行う必要があります。
◎ 強制執行認諾文言付公正証書だが、公正証書を作成したときに「執行文付与」を受けず、公証役場から(多くは)夫に対して公正証書の謄本を「交付送達」しておかなかった場合
① 元配偶者に「手紙」などで支払い期限を明示して養育費を支払うよう請求します。
② 期限までに支払いがなかった場合は「内容証明郵便」で支払い期限を明示して養育費を支払うよう請求します(内容証明郵便は証拠としての能力があります)。
➣ 期限までに支払いがないときは、地方裁判所に対し「強制執行」の申し立て、「債務名義」の送達申請 をします。
「債務名義」の送達申請とは、裁判所執行官に対し、公正証書の謄本を、強制執行前または執行と同時に元配偶者に送達すべき旨の申立てです。
送達後「送達証明」を取得すれば、強制執行をしてもらう準備は完了です。
以下、上記「地方裁判所に対し「強制執行」の申し立て」と同じです。
2. 離婚協議書(私署証書)の場合
① 元配偶者に「手紙」などで支払い期限を明示して養育費を支払うよう請求します。
② 期限までに支払いがなかった場合は「内容証明郵便」で支払い期限を明示して養育費を支払うよう請求します(内容証明郵便は証拠としての能力があります)。
③ それでも期限までに支払いがなかった場合は、家庭裁判所に対して、養育費支払いの調停申立を行います (地方裁判所に養育費支払いを求めて給付請求の訴えを提起することもできます)。
➣ 家庭裁判所に対して、養育費支払いの調停申立を行う場合は、元配偶者の住所地の家庭裁判所又は、当事者が合意で定める家庭裁判所に「養育費請求調停申立書」を提出します。
➣ 子ども・申立人・元配偶者の戸籍謄本、申立人の収入に関する資料(源泉徴収票、給与明細書など)、事情説明書(養育費の支払いに関する状況)、連絡先等の届出書なども提出します。
□ 調停が成立すると「調停調書」が作成されます。これにより強制執行(差し押さえ)が可能となります。
地方裁判所に対する「強制執行の申し立て」手続きは、上記1.の「地方裁判所に対し「強制執行」の申し立て」と同じです。
□ 調停が不成立になった場合は、自動的に「審判」手続きが開始されます。
審判がくだされると「審判書」が作成されます。これにより「強制執行」(差し押さえ)が可能となります。
地方裁判所に対する「強制執行の申し立て」手続きは、上記1.の「地方裁判所に対し「強制執行」の申し立て」と同じです。