行政書士は街の身近な法律家
埼玉県行政書士会所属
行政書士渡辺事務所
行政書士・渡邉文雄
1. 給付文言
給付条項とは、「誰が、誰に対して、どのような給付をすべきなのか、あるいはすべきでないのか」とか、「誰が、誰に対して、いつまでに、いくらを支払うか」といった合意を内容とする条項です。強制執行をするためには、給付文言となっていることが必要です。
給付文言とするためには「支払う」と明確に記載することが必要です。 「支払うことを確認する」や「支払義務があることを確認する」、「支払うものとする」という文言では給付文言とはなりません 。
2. 「直ちに」、「速やかに」、「遅滞なく」
「直ちに」、「速やかに」、「遅滞なく」の順で時間的即時性の要求度が高いとされています。
「直ちに」や「遅滞なく」とする規定に反した場合には、不当というだけでなく違法と評価されます。
「速やかに」は基本的に訓示的意味合いがあり、直ちに違法とまで評価されない場合が多いとされています。
「遅滞なく」は正当な理由に基づく遅れは許されるとされています。
(出典:吉田利宏(2020)『新法令用語の常識』日本評論社.)
3. 「が」と「の」。「乙『が』指定する口座に振込んで支払う」と、「乙『の』指定する口座に振込んで支払う」の違い
格助詞「が」と「の」には、双方とも、『主格』・『連体修飾格』の用法があります。
『主格』とは、格助詞の付いた語が主語になるということを意味し、『連体修飾格』とは、格助詞のすぐうしろに名詞がつながり、格助詞の付いた語がその名詞を説明する、ということを意味します。
格助詞は「『主格』の用法として、「が」と「の」双方とも用いることができます。
4. 語尾の「〇〇する」と「〇〇するものとする」のちがい
作為義務(何かをなすべきこと)を内容とする合意を定める場合は「〇〇する」という表現にするのが一般的です。
ただし、民法(任意規定)に反する定めをする場合は、「〇〇するものとする」の文言を用います。
なお、「〇〇するものとする」は、「ものとする」を付けた方が語呂がいいことから使われることもあります。
作為義務を内容とする合意を定める場合に、「〇〇するものとする」とすると、原則を定めたものと解釈され、合理的な理由があればしなくても良いという意味が出てくるとされています。
また、「〇〇するものとする」の文言は、強制執行をすることができる給付文言にはならないとされています。
5. 語尾の「〇〇しない」と「〇〇しないものとする」のちがい
不作為義務(何かをしないこと)を内容とする合意を定める場合は「〇〇しない」という表現にするのが一般的です。
ただし、「ものとする」を付けた方が語呂がいいことから、「〇〇しないものとする」という表現が使われることもあります。
なお、不作為義務を内容とする合意を定める場合に、「〇〇しないものとする」とすると、原則を定めたものと解釈され、合理的な理由があればしても良いという意味が出てくるとされています。
6. 語尾の「〇〇をするものとする」と「〇〇をしなければならない」のちがい
両者とも、作為義務(何かをなすべきこと)を内容とする合意を定める表現ですが、「〇〇をしなければならない」とすると表現と少しきつい感じがある場合にこれをやわらげる表現として、「〇〇をするものとする」が使われることがあります。