財産分与(財産関係の清算)の対象となる財産は?

□ 婚姻中に購入した夫名義の不動産に対し、実質共有財産として妻に具体的な共有持分が認められるのは、双方の収入等から見て、協力して返済を行ってきたと考えられる場合に限られます。(出典:第一東京弁護士会人権擁護委員会[編](2016)『離婚を巡る相談100問10答 第二次改定版』ぎょうせい.202頁)

 

□ 生活費を折半で負担していた場合は、一般的に実質的共有財産とされるものであっても、自分で蓄えた財産については分与の対象に含めなくてもよいとされています。

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埼玉県行政書士会所属

行政書士渡辺事務所

行政書士・渡邉文雄

 

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1. どの財産が、財産分与財産関係の清算)の対象となるのか

 

民法762条(夫婦間における財産の帰属)

1. 夫婦の一方が婚姻前から有する財産及び婚姻中自己の名で得た財産は、その特有財産(夫婦の一方が単独で有する財産をいう。)とする。

2. 夫婦のいずれに属するか明らかでない財産は、その共有に属するものと推定する。 

 

民法768条(財産分与) 

3. 前項の場合には、家庭裁判所は、当事者双方がその協力によって得た財産の額その他一切の事情を考慮して、分与をさせるべきかどうか並びに分与の額及び方法を定める。 

 

(1) 共有財産

 

 財産分与の対象となるのは、「共有財産」と「実質的共有財産」です。 

 

 共有財産とは、婚姻期間中に夫婦の協力によって蓄えられ、維持されてきた財産で共有名義となっている財産のことであり、清算的財産分与(夫婦の財産関係の清算)の対象となります。

 

 ただし、家具・電化製品、タンス預金、ヘソクリ等家庭内の現金など、夫婦のいずれに属するか明らかでない財産については、共有名義の無いものについても共有財産と推定され、 清算的財産分与の対象となります。

 

 なお、別居後に取得した財産については、清算的財産分与の対象とはならないとされています。  

 

(2) 実質的共有財産 

 

 例えば妻が家事労働に従事し夫の日常生活・社会生活を支える専業主婦家庭における、夫の給料や年金が振り込まれた夫名義の預貯金など、夫婦の協力によって蓄えられ維持されてきた財産は、たとえ片方の名義になっているものであっても、実質的共有財産として清算的財産分与の対象となります。 

 ただし、第三者との関係では、これらの財産は名義人の特有財産(固有財産)です。 

 

① 家などの不動産

 

婚姻中に購入した夫名義の不動産に対し、実質共有財産として妻に具体的な共有持分が認められるのは、双方の収入等から見て、協力して返済を行ってきたと考えられる場合に限られます。(出典:第一東京弁護士会人権擁護委員会[編](2016)『離婚を巡る相談100問10答 第二次改定版』ぎょうせい.202頁)

 

・・・妻に具体的な共有持分が認められるのは例外的な場合であって、夫婦の収入がほぼ等しく、妻も連帯保証人となっている場合など、双方の収入から協力して返済を行ってきたと考えられれる場合に限られます。・・・(出典:第一東京弁護士会人権擁護委員会[編](2016)『離婚を巡る相談100問10答 第二次改定版』ぎょうせい.204頁)

 

② 生命保険金については、既に支払われた「満期保険金」は財産分与の対象になります。

 

 離婚後に満期を迎える生命保険は、保険契約の内容により、解約時に戻ってくる返戻金(又は離婚時までに払った保険金総額)が財産分与の対象となります。

 

③ その他、、夫の給料が振り込まれた預貯金(*1)、個人年金国債などの有価証券、こどもの学資保険(*2)については、片方の名義になっていても、「実質的共有財産」として財産分与の対象となるとされています

 

(*1) 結婚期間中に預貯金したものであっても、親等から個別に贈与されたものは財産分与の対象とはなりません。

 

(*2) 夫婦で子どもの将来のために預貯金した、こどもの名義の預貯金であっても、子ども名義が形式にすぎないときは財産分与の対象になる、とされています。

 

 (3) 医師、会計士、弁護士等の資格 

   

 医師、会計士、弁護士等の資格を、相手の収入に支えられて取得した場合、これらの資格を財産とみなして財産分与の対象とすることができるとされています。 

 

(4) 生活費を折半で負担していた場合の財産分与

 

 生活費を折半で負担していた場合は、上記で実質的共有財産とされるものであっても、自分で蓄えた財産については分与の対象に含めなくてもよいとされています。

 

2. 財産分与財産関係の清算)の対象とならないもの

 

(1) 特有財産(固有財産)

   

 離婚に伴う清算的財産分与(夫婦の財産関係の清算)の対象とならない財産として、以下のものがあげられます。

 

① 結婚するときに実家からもらった財産(嫁入り道具)

② 結婚後に相続や贈与で親・兄弟等からもらった財産

③ 独身時代から持っていた預貯金

④ 衣服、スポーツ用品、アクセサリーなど、日常生活で一方が使っているもの

 

 ただし、特有財産(固有財産)と認められるためには、①名義が自分であること、②結婚後共同で蓄えたものと明確に区別できることが必要です。

 

 なお、上記①から④に該当する財産であっても、夫婦が協力したことによって価値が維持された場合や、夫婦の貢献により価値が増加した等の特別な事情がある場合は、その貢献度に応じて財産分与の対象とされる場合があります。  

 

(2) 第三者名義の財産

 

 法人名義などの第三者名義の財産は、原則的に離婚に伴う清算的財産分与(夫婦の財産関係の清算)の対象とはなりません。

 ただし、実態が個人経営と変わらない場合、夫婦の協力によって蓄えられ維持されてきた財産と認められるときは、財産分与額の基礎として考慮することが可能と考えられています。

 

(出典:第一東京弁護士会人権擁護委員会[編](2016)『離婚を巡る相談100問10答 第二次改定版』ぎょうせい.57頁)

 

3. 退職金の財産分与

  

□  》退職金の財産分与 をご覧ください  

 

4. 生命保険の財産分与

 

□  》生命保険の取り扱い をご覧ください 

 

 5. マイナスの財産(債務)の財産分与

 

(5 - 1) マイナスの財産の取り扱い

  

 プラスの財産のほかに、夫婦の共同生活を営むために生じた借金などマイナスの財産がある場合は、プラスの財産からマイナスの財産を差し引いた残額を分配するというのが一般的です。

 

 プラスの財産からマイナスの財産を差し引くとマイナスになってしまう場合は財産分与請求権は生じません。この場合、債務の負担割合について協議し合意することはできます。 

 

(5 - 2) 個人的な借金

 

 財産分与の対象には、借金や住宅ローンなどのマイナスの財産(債務)も含まれますが、もっぱら自分のためにした個人的な借金は、配偶者が連帯保証をしていない限り、離婚に伴う清算的財産分与(夫婦の財産関係の清算)の対象になりません。