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埼玉県行政書士会所属
行政書士渡辺事務所
行政書士・渡邉文雄
1. 遺言の方式による制限
遺言はその効力発生後、遺言者の真意を確認することはできないことから、遺言者の真意に出たものであることを担保し、解釈について混乱が生じないよう、厳格な要式行為とされています。
法の定める方式に違反している遺言は無効です。
遺言の方式による制限として、以下のものなどがあります。
①遺言者の国籍その他の人的資格による遺言の方式の制限、
②証人が有するべき資格による制限、
③書面によらなければならないか否かによる制限、
③書面はだれがどのような方法で記載するかによる制限、
④口答による遺言の場合、記録の要否による制限、
⑤証人の立ち合いの要否による制限、
⑥証人の人数による制限、
民法960条(遺言の方式)
遺言は、この法律に定める方式に従わなければ、することができない。
2. 【自筆証書遺言の有効4要件】
(1) 全文を自書する(民法968条1項)
民法改正(30.7.13公布)により、2019年1月13日から、本文を自筆で書けば、相続財産目録はパソコンで作ることができるようになりました。また、不動産の登記事項証明書や預貯金通帳のコピーの添付でもよいようになりました(民法968条2項)。
詳しくは、 》》パソコン等によろ自筆証書遺言の作成 をご覧ください。
(2) 日付を自書で記載する(民法968条1項)。
遺言書の作成日付は西暦または元号で書きます。年月日を全てを、省略することなく、自書で正確に記入します。
□ 例:令和5年3月1日のように具体的な日付を書きます。「令和5年3月吉日」等、日にちが特定できないものは無効とされています。
年月のみで「日」を欠く場合は不可(大判大正7.4.1)
(3) 自署、捺印する (民法968条1項)。
印鑑は認印(いわゆる「三文判」)でも有効(最高裁判所は指印による遺言も有効とし、花押による遺言は無効としている)ですが、相続開始後、遺言の真偽をめぐって紛議になることを避けるため、実印をおすすめします。
また、できれば、印鑑証明書を同封しておくこともおすすめです。
印鑑登録に使用できる印鑑(実印)については、お住いの市区町村の条例等で定められていますが、市区町村によって若干異なる部分もあり、認印(いわゆる「三文判」)については、使用不可とするところ、好ましくないとするところ等があります。いずれにしましても、一旦印鑑登録を受理されたものは公定力を有し、有効なものとして取り扱われます。
(4) 加除、変更は定められた方式による
詳しくは 》》自筆証書遺言の加除訂正の仕方 》》自筆証書遺言の体裁及び封入の仕方 をご覧ください
民法968条(自筆証書遺言)
1 自筆証書によって遺言をするには、遺言者が、その全文、日付及び氏名を自書し、これに印を押さなければならない。
2 前項の規定にかかわらず、自筆証書にこれと一体のものとして相続財産(第997条第1項に規定する場合における同項に規定する権利を含む。)の全文又は一部の目録を添付する場合には、その目録については、自書することを要しない。この場合において、遺言者は、その目録の毎葉(自書によらない記載がその両面にある場合にあっては、その両面)に署名し、印を押さなければならない。
3. 遺言の禁止規範
(1)遺言代理禁止の原則
遺言は、遺言者自ら内容を確定させることが必要であり、今は意識不明だが、意識があるときに言っていたとして、他の誰かが代理で遺言をすることや、他の者が遺言内容を補充することは禁止されています。
遺言は代理に親しまない法律行為とされ、代理遺言は無効です 。
ただし、相続分の指定、遺産分割方法の指定、及び遺言執行者の指定については、第三者に委託することが認められています。また、受遺者の選定を第三者に委託することを認めた判例もあります。
(2)共同遺言の禁止~夫婦で同一の書面で遺言することはできません~
共同遺言とは、2人以上が、同一の証書で連名で遺言をすることです。共同遺言の例として、夫婦連名でする遺言があります。
共同遺言は、一方が他方に遠慮して自由な遺言ができなくなる恐れがあることや、一人で撤回変更ができなくなるなど、遺言者の最終意思の実現ができなくなる不都合があることから禁止れています。
共同遺言は無効です。遺言は、必ず一人ひとりでしなければなりません。
民法975条(共同遺言の禁止)
遺言は、二人以上の者が同一の証書ですることができない。
4. 「証人欠格」の遺言書の効力
未成年者、推定相続人(将来、相続人になる人)、受遺者(遺言で財産をもらう人)並びに推定相続人・受遺者の配偶者及び直系血族は証人になれません。また、証人の署名の代筆は、できません。 証人欠格の遺言は無効です。
5. 遺言無効確認請求訴訟における立証責任
遺言書が方式を欠く「方式違背の遺言」である等、遺言の成立要件に関する立証責任は、遺言書が有効であると主張する側にある、と考えられています。
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