法定遺言事項~遺言に書いて強制力(法的拘束力)がある事柄は法律で決まっている~

□ 法定遺言事項=遺言に書いて強制力即ち法的拘束力があるもの(相続人は遺言通り実行する義務があるもの)は以下の事項に限定されます。 

 

(1)相続人及び相続に関すること

①相続人の廃除(民法第893条)、相続人の廃除の取消(民法第894条) *生前行為でもできます。

②相続分の指定、相続分の指定の第三者への委託(民法第902条)

③遺産分割方法の指定、遺産分割方法の指定の第三者への委託(民法第908条)

④遺産分割の禁止(民法第908条) 

⑤遺産分割における相続人間の担保責任の指定(民法第914条)

⑥負担付遺贈の受遺者が放棄した場合の指示(民法第1002条)

⑦負担付遺贈の目的物の価値が減少した場合の指示(民法第1003条)

⑧遺留分侵害額請求先(遺留分侵害額負担者)の順序の指定(民法第1047条 1②)

 

(2)相続以外の財産処分に関すること

①遺贈(民法第964条)

②財産の寄付、財団法人設立のための寄付行為(一般法人法第152Ⅱ) *生前行為でもできます。

③信託の設定(信託法第3③) *生前行為でもできます。

④生命保険の死亡保険金受取人の指定・変更(保険法第43、72条)*生前行為でもできます。

 保険者に対する通知が対抗要件(保険法第44、73条Ⅱ) 

 

(3)身分に関すること

①子どもの「認知」(民法第781条Ⅱ) *生前行為でもできます。

②未成年後見人の指定(民法第839条)、未成年後見監督人の指定(民法第848条)、財産管理のみの未成年後見人の指定(民法第839条) ※ 遺言でのみ指定することができます。

 

(4)遺言の執行に関すること

①遺言執行者の指定(民法第1006条)

②遺言執行者の指定の委託(民法第1006条)

③遺言執行者の報酬(民法第1018条Ⅰ)

④遺言執行者の復任(民法第1016条)遺言執行者の職務権限の限定

 

(5)その他

①特別受益の持ち戻し免除(民法第903Ⅲ)

②無償譲与財産を親権者に管理させない意思表示と管理者の指定

③祭祀主宰者の指定(民法第897条) ※ 親族以外の者を指定することもできます。

④遺言の撤回(民法第1022条)

行政書士は街の身近な法律家

埼玉県行政書士会所属

行政書士渡辺事務所

行政書士・渡邉文雄

 

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1. 相続人及び相続に関すること

 

(1) 相続人の廃除、相続人の廃除の取り消し 

 

 ① 相続人の廃除

 

 暴力をふるう、暴言を吐くなど素行の悪い者は、遺言で、相続人から廃除できます。ただし、遺言者の死後、家庭裁判所で認められた場合のみ廃除となります。 

 

□ 詳しくは、》》 遺言による推定相続人の廃除 をご覧ください。

 

② 相続人の廃除の取り消し

 

 相続人廃除は被相続人の意思でいつでも取り消すことができます。

 

(生前廃除・生前取消)

 家庭裁判所に申し立て、相続人の廃除をした場合、被相続人の意思でいつでも、家庭裁判所に相続人取消請求の申し立てを行い、相続人の廃除の取り消しをすることができます。 理由は一切問われません。

 

(生前廃除・遺言で取消)

  家庭裁判所に申し立て、相続人の廃除をしたが、事情が変わった場合等、遺言で廃除を取消し、相続人に戻すことができます(生前廃除取消の遺言)。

 理由は一切問われませんが、取り消しが遺言者の真意であることが分かるよう、理由を書いておくことをおすすめします。 

 

(遺言で廃除・遺言で取消) 

 遺言で相続人の廃除をしたが事情が変わったときは、新たな遺言で相続人に戻すことができます。 理由は一切問われません。

 なお、事情が変わった事等により、新たな遺言で廃除を取り消すことは、相続人の廃除の取り消しではなく、遺言の撤回です。

 

(2) 「相続分の指定」「相続分の指定の第三者への委託」

 

① 相続分の指定

  

  相続人の相続分は民法で定められており、この相続割合を 「法定相続分」 といいます。

 ただし、遺言で相続割合(誰にどのくらい遺産をあげるか)を指定できます。(遺言で指定した相続割合のことを 「指定相続分」といいます)

  

 遺言による指定相続分は法定相続分と同じにしても変えても自由です。なお、遺言による指定相続分は法定相続分に優先します。

 

 遺言による相続分の指定の方法として、相続財産の種類(不動産、動産、株式など)を指定したり特定の相続財産を指定しても、それが相続財産全体に対する割合を表していれば、「相続分の指定」とみなされます。 

 

 特定の相続人について、「相続財産」と「指定した相続財産」を合わせた価格が当該相続人の法定相続分を超えるときは、「相続分の指定を含む遺産分割方法の指定」と解されます。

 

 相続分の指定は一部の相続人に対してだけ指定することもできます。(指定を受けなかった相続人は法定相続分となる)

 

 なお、相続財産の全体について各相続人に分数的割合により相続させる遺言は、相続分の指定をしたにすぎないとして、権利関係の確定のために遺産分割協議が必要になることがあります。

 

□ 詳しくは、》》 相続分の指定と割合を定めて相続させる遺言 をご覧ください。

 

② 相続分の指定の委託

 

 相続人同士の話し合いでは遺産分割がスムーズにゆきそうもないと思われるときは、遺言で配分方法の指定を委託(相続分の指定を委託)することができます。  

 

 相続分の指定の委託は相続人、包括受遺者には委託できません。相続分の指定の委託を受けることができるのは、相続に利害関係を持たない第三者です。 (大高決S49)

 

(参考)

(遺産分割方法の指定の委託は、)相続人、包括受遺者には委託できません。第三者に委託します。ただし、相続人、包括受遺者であっても、その相続人に関わりのない遺産分割方法を指定させるのであれば第三者となります。(出典:・日本公証人連合会(2017)『 新版 証書の作成と文例 遺言編[改訂版]』立花書房.81頁)  

 

 指定された者が委託を拒絶した場合及び、指定できないときは指定の委託は効力を失います。(その場合、相続分は法定相続分の規定に従う)

 

 指定された者は、受託又は辞退について遅滞なく相続人に通知すべきものと考えられています。

 なお、受託又は辞退が不明の状態が続くことにより法律関係が不安定となることから、遺言に「委託された者が一定期間内に通知しないときは、その委託が失効する」旨を定める場合もあります。  

 

(3) 「遺産分割方法の指定」「遺産分割方法の指定の第三者への委託」

 

① 遺産分割方法の指定

 

 遺言で、「土地Aは長女に、土地Bは次女に相続させる」 というように、どの遺産を誰にあげるか、あげる物とあげる相手を指定することができます。

 

 遺産分割の対象財産に該当しない財産であっても、付言事項として財産の分け方の指定を行うことができます。(ただし、強制力即ち法的拘束力(相続人が遺言通り実行する義務)はありません)

 

□ 詳しくは、》》 遺産分割方法の指定 をご覧ください。  

 

□ 遺産分割の対象財産については、》》遺産分割の対象財産 をご覧ください。

 

② 遺産分割方法の指定の第三者への委託

 

 相続人同士の話し合いでは遺産分割がスムーズにいかないと思われるときは、遺言で遺産分割方法の指定(どの遺産を誰にあげるかの指定)を専門家等に委託することができます。

 

 遺産分割方法の指定の委託を受けることができるのは、相続に利害関係を持たない者に限られます。相続人や包括受遺者には委託できません。 (大高決S49)  

 

 指定の委託をした者が委託を拒絶した場合、若しくは指定できないときは指定の委託は効力を失います。   

 

(4)遺産分割の禁止

 

 遺言で5年を超えない期間を上限として、遺産分割の禁止を定めることができます。  

 例えば、農地の場合、分割すると家業の継続が困難になるときに遺産分割の禁止を定めることがあります。ほかにも、相続人が若年であることから、一定期間遺産分割を禁止するといったケースがあります。 

 

 なお、遺産分割の禁止を定める場合は、相続税との関係や、税優遇制度との関係に注意する必要があります。

 また、相続人の理解を得る必要がある情況のときは、付言事項に遺産分割を禁止する理由を記載することも検討します。 

 

 遺言に遺産分割の禁止を定めても、相続人全員の合意があれば遺産分割できます。 

 

(5)遺産分割における相続人間の担保責任(*)の指定 

 

 遺言でもらった財産に問題があるときは、他の相続人に相続分に応じて穴埋めを求めることができます。他の相続人には穴埋めをする義務があります。( 遺産分割における相続人間の担保責任)

 ただし、遺言で、この穴埋めをする義務(相続人間の担保責任)を排除、変更し、穴埋めする人(担保責任の負担者)を指定し、あるいは特定の者の負担を免除することができます。 

 

* 担保責任とは、次のような場合に他の相続人が補償をしなければならない責任をいいます。

① 遺言である相続人が財産をもらったが、遺言者の所有でないことが判明した、② 数量が不足している、

③ 消滅していた、

④ 破損などキズのある財産だった、

⑤ 価値がなくなっていた、

⑥ 債権をもらったものの債務者が無資力で支払い不能であることが判明した。  

 

(6)負担付き遺贈の受遺者が放棄した場合についての指示

 

 遺言で遺産を負担付きであげたが、受遺者が「いらない」と言って放棄した場合は、負担の利益を受ける者が自ら受遺者となることができます。

 ただし、遺言で、これと異なる意思表示をしておくことができます。

 

□ 詳しくは、》》負担付遺贈・条件付遺贈・期限付遺贈 をご覧ください。

 

(7)負担付き遺贈の目的の価値が減少した場合についての指示

 

 負担付きであげた遺産の価値が、限定承認や遺留分を返せと言う請求などによって減ってしまった場合は、減少割合に応じて負担も減少します。

 ただし、遺言で、これと異なる意思表示をしておくことができます。

 

□ 詳しくは、》》負担付遺贈・条件付遺贈・期限付遺贈 をご覧ください。

 

(8)遺留分侵害額請求先(遺留分侵害額負担者)の順序の指定

 

 民法では、遺留分侵害額を負担すべき者は、受遺者・受贈者が複数いるときは、その目的の価額の割合に応じて負担することを基本としています。

 ただし、 遺言で、遺留分侵害額請求先(遺留分侵害額負担者)の順序を指定することができます。

 

□ 詳しくは、》》遺留分を侵害する遺言をするとき をご覧ください。 

 

2. 財産処分に関すること 

 

(1)遺贈

 

 遺贈とは、遺言により、財産の全部または一部を、相続人、または相続人以外の他人若しくは法人に無償譲渡することをいいます。

 

( 遺言書では、相続人に無償譲渡する場合は「相続させる」とし、 内縁の妻、孫、息子の嫁、友人など、相続人以外に無償譲渡する場合を「遺贈」として使い分けています。ただし、財産の種類によっては例外があります)

 

 遺贈は受遺者が先又は同時に死亡した場合は効力が生じません。無効となり、相続財産に戻ります。

 ただし、相続人への遺贈については、法定相続分にかぎり、孫等代襲相続人が代襲相続します。 

 包括受遺者は、相続人以外の他人であっても、相続人と同等の権利義務を有します。  

 

□ 詳しくは、》》 遺贈・死因贈与 をご覧ください。

 

① 負担付き遺贈

 

 「負担付き遺贈」とは、遺贈をするにあたり、受遺者に法律上の義務を負担させることを言います。遺贈をしないで、負担だけを課しても法的拘束力はありません。

 「負担付き遺贈」の受遺者が負担の履行をしなくても遺贈の効力は生じます。ただし、相続人に取消請求権が発生します。 

 

 特定遺贈の場合は債務を承継しないので、債務を承継させるときは遺言で負担を指定する必要があります。(包括遺贈では、受遺者は遺贈を受けた割合に応じて遺言者の債務を承継する) 

 

□ 詳しくは、》》 負担付遺贈・条件付遺贈・期限付遺贈 をご覧ください。

 

② 補充遺贈(予備的遺贈

 

 「補充遺贈(予備的遺贈)」とは、遺贈の効力が発生しないことを停止条件とする第2の遺贈です。

 

 遺贈する相手が遺言者より先(又は同時)に亡くなってしまうと、あげる予定の遺贈については無効となり(代襲相続がある場合を除く)、相続人による共有財産となりますが、この場合に、誰に承継させるかについて予備的遺贈(補充遺贈)をしておくことができます。

 

 遺贈する相手が遺言者より先に亡くなってしまった場合は、遺言を書き直すのが基本ですが、遺言者が認知症になってしまった場合には書き直すことができません。(書いても無効)

 事情により、予備的遺贈(補充遺贈)を検討します。 

 

□ 詳しくは、》》予備的遺贈(補充遺贈) をご覧ください。

 

③ 後継ぎ遺贈 

 

 後継ぎ遺贈とは、相続開始時の受遺者(第一次受遺者)の受ける遺贈利益が、ある条件が成就し、又は期限が到来した時から、遺言で指定した第二次受遺者に移転する旨を内容とする遺言です。

 

 後継ぎ遺贈には、相続開始時の受遺者(第一次受遺者:配偶者等)が亡くなった後、財産を第二次受遺者(長男等)に移転する義務を課す「負担付の遺贈」第一次受遺者の死亡を終期として、財産を第二次受遺者に移転する「期限付遺贈」あります。「期限付遺贈」の場合、財産の移転は、相続開始時の受遺者(第一次受遺者:配偶者等)の行為を介せず当然に行われます。(第二次受遺者は第一次受遺者の行為を介せず遺贈を受けることができる)  

 

 後継ぎ遺贈の遺言は民法上無効(第二次遺贈に法的拘束力はない)(※)とされています。したがって、事情によっては、実効性を担保するため、第一次の受遺者に、「第二次の受遺者に遺贈する」という内容の遺言を作成してもらう等の対策が必要です。

 

※後継ぎ遺贈が民法上無効であるとしても、そのことは第二次相続人が遺産分割を請求することができるということにとどまります。第二次相続人が承認すれば遺言者の意思は実現できます。

 

□ 詳しくは、》》後継ぎ遺贈 をご覧ください。

 

(2) 遺言信託《遺言による信託》(信託法)

 

 遺言信託(遺言による信託)とは、遺言により信託を設定することです。

 具体的には、遺言により信頼できる人に財産を移転し、信託目的に沿ってその財産の管理や処分などを行ってもらいます。

 

 遺言信託(遺言による信託)によって、自分の死後、受託者(親族または第三者)から、受益者(配偶者等)に生活費や看護療養費等を計画的に給付してもらうことができます。 

 

 □ 詳しくは、》》遺言信託(遺言による信託)をご覧ください。  

 

 

~遺言で「後継ぎ遺贈型(受益者連続型)信託」を設定する~

 

「後継ぎ遺贈型(受益者連続型)信託」とは、被相続人の死後の受益者(例えば配偶者)の有する信託受益権(信託財産より給付を受ける権利)が、配偶者の死亡により、予め指定された者(例えば長男)に承継される旨の定めをする信託です。

 

 遺言信託(遺言による信託)で「後継ぎ遺贈型(受益者連続型)信託」を設定することができるようになりました。(信託法第3③) 

 後継ぎ遺贈をしたいが、紛議の余地をなくしたいという場合は、遺言で「後継ぎ遺贈型(受益者連続型)信託」を設定することをおすすめします。

 

□ 詳しくは、 》》「後継ぎ遺贈型受益者連続型信託 をご覧ください。 

 

(3) 「財団法人設立のための寄付行為」「寄付遺贈」

 

① 一般財団法人の設立

 

 遺言で、定款の絶対的記載事項を定め、一般財団法人を設立する意思示ができます。  

 遺言により一般財団法人を設立する場合、遺言の効力発生後、遺言執行者が定款を作成し、公証人の認証を受け、財産の拠出の履行を行わなければなりません。したがって、遺言執行者を指定することが不可欠です。

 

 □ 詳しくは、》》 遺言で一般財団を設立する をご覧ください。

 

② 遺贈寄付

 

 遺贈寄付とは、地方公共団体、学校、宗教団体、慈善施設その他の各種福祉団体等に対し、公益ないし公共の目的のために財産を譲渡することです。 

 

 遺贈寄付の場合、相続に伴う税については、通常は、寄付を受けた者が払います。個人であれば相続税、法人であれば法人税が課税されます。ただし、国・地方公共団体、公益法人、認定NPO法人などは、相続税・法人税とも非課税です。

 

 遺贈寄付にあたっては、あらかじめ、団体の正式名称、主たる事務所の所在地、法人格の有無、代表者等を調べ、寄付先の特定に欠けることのないよう注意します。

 また、相続人がいる場合は、トラブルを防ぐため、遺留分への配慮が必要です。

 

 □ 詳しくは、》》 遺贈寄付 をご覧ください。 

 

(4)生命保険の死亡保険金受取人の指定・変更(保険法)

 

 遺言で「生命保険の死亡保険金受取人の変更」をすることができます。

 遺言による保険金受取人の変更が無条件でできるのは、平成22年4月1日以後に締結された生命保険契約です。それより前に契約した生命保険契約については、保険契約約款等で禁止されていない場合のみ、遺言による保険金受取人の変更が可能です。

 

 遺言で指定した生命保険受取人が遺言者より前に亡くなった場合は、一般的にはその時点で遺言者が受取人変更手続きをすると思いますが、その時点で遺言者が認知症等で行為能力を失った場合はできません。こうした事態に備え、生命保険受取人の予備的変更条項を設けることができます。

 

 遺言で、保険証券で指定した生命保険の死亡保険金受取人を変更した場合は、保険会社への通知をもって受取人変更の対抗要件とするとされています。

 受取人変更が確実に行われるために、遺言で、「遺言執行者を指定」しておくことをおすすめします。 

 

□ 詳しくは、》》 遺言で生命保険受取人を変更する をご覧ください。

 

3. 身分に関すること 

 

(1)認知

 

 子どもの「認知」は遺言でもできます。非嫡出子は父の認知によって父親と法律上の親子関係が生じ、財産を相続できるようになります。 

 

□ 詳しくは、》》 遺言で認知する  をご覧ください。 

 

(2)「未成年後見人の指定」「未成年後見監督人の指定」「財産管理のみの未成年後見人の指定」

 

※ 未成年後見人・未成年後見監督人・財産管理のみの未成年後見人を指定できるのは、いずれも被相続人が最後に親権を行う者で、管理権を有する場合だけです。

 

① 未成年後見人の指定

  

 単独親権者になった者は、遺言で、未成年後見人(未成年の子の後見人)を指定することができます。未成年後見人の指定は遺言でのみ可能です。

 ひとり親の場合など、自分の死後、未成年の子の親権者となるべき人がいなくなってしまう場合は、遺言で、未成年後見人を指定しておくことをおすすめします。(ただし、もう一方の親がいるときは、その親は家庭裁判所に親権者変更の申し立てを行うことができます。)

 未成年後見人は、親権者の遺言で指定されていなければ、親族や利害関係者の請求によって家庭裁判所が選任します。 

 

停止条件付未成年後見人の指定(離婚裁判中に未成年後見人の指定をする)

 

 離婚裁判中はまだ単独親権者になっていないので、この時点で未成年後見人の指定をしたい場合は、停止条件付未成年後見人の指定を行うことができます。

 

② 未成年後見監督人の指定

 

 未成年後見人の権限が多岐にわたることから、その監視者を設けることができます。 この監視者のことを「未成年後見監督人」と言います。 

 未成年後見人を指定することができる者は未成年後見監督人を指定することができます。未成年後見監督人の指定は遺言でのみ可能です。

 

③ 財産管理のみの未成年後見人の指定

 

 財産管理権を持っている者は、「財産管理のみの未成年後見人」を指定することができます。 財産管理のみの未成年後見人の指定は遺言でのみ可能です。

 

 □ 詳しくは、》》 遺言で未成年後見人を指定する をご覧ください。

 

4. 遺言の執行に関すること 

 

(1)遺言執行者の指定

 

 遺言執行者とは、遺言の内容を実現する人のことです。 遺言で、配偶者、子(成人に限ります)、第三者のいずれも指定できます。 

 遺言執行者は、不動産の名義変更を、基本的にはひとりで出来ます。 

 

 遺言で、認知、相続人廃除・相続人廃除の取消をしようとする場合は、遺言執行者が届を提出するので、遺言執行者を必ず指定しなければなりません。

 

□ 詳しくは、》》 遺言執行者の指定 をご覧ください。

 

(2)遺言執行者の指定の委託 

 

 遺言で、遺言執行者の指定を第三者に委託できます。  

 

民法1006条(遺言執行者の指定)

1.遺言者は、遺言で、一人又は数人の遺言執行者を指定し、又はその指定を第三者に委託することができる。

2.遺言執行者の指定の委託を受けた者は、遅滞なく、その指定をして、これを相続人に通知しなければならない。

3.遺言執行者の指定の委託を受けた者がその委託を辞そうとするときは、遅滞なくその旨を相続人に通知しなければならない。

 

(3)遺言執行者の報酬  

 

 遺言による遺言執行者の報酬の定めは、定額で定める場合と算定方法で定める場合があります。

 

民法1018条(遺言執行者の報酬)

1.家庭裁判所は、相続財産の状況その他の事情によって遺言執行者の報酬を定めることができる。ただし、遺言者がその遺言に報酬を定めたときは、この限りでない。

2.第648条第2項 及び第3項 の規定は、遺言執行者が報酬を受けるべき場合について準用する。

 

 遺言執行費用は相続財産の負担とされ(1021条)、個々の相続人の負担分は取得する相続財産の割合に比例按分した額であり、かつ、当該相続人が取得する相続財産の額を超えないとされていますが、遺言で、遺言執行費用をどの財産から支出するのか具体的に定めることもできます。

 

(4)遺言執行者の復任権の許可  

 

 遺言執行者の復任の許可とは、遺言執行者が第三者に遺言執行者の任務を行わせることを遺言者が許可すること(第三者に遺言執行者の職務の全部、又は一部の委託を許すこと)をいいます。 

 

 2018民法改正前は、遺言執行者は、やむを得ない事由がある場合か、遺言者が遺言で復任を許可した場合以外は、第三者にその任務を行わせることはできませんでした。

 しかし、 民法改正により、遺言執行者は、遺言による復任の禁止がなければ、復任を許可する遺言や、やむを得ない事由がなくても、自己の責任において第三者にその任務を行わせることができることとなりました。

 

 なお、遺言執行者が第三者にその任務を行わせる場合には、遺言執行者は相続人に対し、第三者の選任及び監督について責任を負う、とされました。

 

□ 詳しくは、》》 遺言執行者の復任の許可 をご覧ください。

 

(5) 遺言執行者の職務権限の限定

 

 遺言者は、遺言執行者の職務権限を限定できる、と解されています。

 

5. その他の強制力のある遺言事項

 

(1) 特別受益者の相続分の指示

 

① 特別受益の持戻の免除

 

 被相続人から結婚のときの持参金、又は生計の資本として財産をもらった人は、遺産分割をするにあたって、特別受益の持戻として法定相続分から差し引かれます。 

 ただし、遺言で特別受益をその人の相続分から差し引かないようにとの指示をしておくことができます。(「特別受益の持戻を免除する」)これにより、特別受益の持戻は不問とされます。

 ただし、遺留分の計算には影響しません。特別受益は遺留分侵害額請求の対象財産のままです。

 

 なお、この意思表示は明示でも黙示でも可能とされていますが、相続人間で紛議にならないよう遺言で明示することをおすすめします。

  

□ 詳しくは、》》 特別受益持戻を免除する をご覧ください。 

 

② 特別受益の持戻をするようにとの指示

 

 ①項とは逆に、その財産を「特別受益としてその人の相続分から差し引くようにとの指示」をしておくこともできます。

 

□ 詳しくは、》》 特別受益持戻を免除する をご覧ください。

 

(2)無償譲与財産を親権者に管理させない意思表示と管理者の指定

 

 遺言で孫等未成年者に財産をあげる場合、あげた財産を親に管理させたくないときは、遺言で、無償譲与財産を親権者に管理させない意思表示と管理者の指定をし、親権者以外の者を財産管理者に指定することができます。 

 

(3)祭祀の主宰者(祭祀財産承継者)の指定

 

 祭祀の主宰者とは、葬儀の喪主をつとめたり、仏壇や墓などを引き継いで先祖の供養をする人です。

 祭祀の主宰者は被相続人の指定により決まります。遺言で原則として1名指定します。親族以外の者を指定することもできます。祭祀の主宰者の指定は、口頭でも書面でもよいことになっています。 被相続人の指定がない場合は慣習に従います。

 

民法897条(祭祀に関する権利の承継)

 系譜、祭具及び墳墓の所有権は、前条の規定にかかわらず、慣習に従って祖先の祭祀を主宰すべき者が承継する。ただし、被相続人の指定に従って祖先の祭祀を主宰すべき者があるときは、その者が承継する。

 前項本文の場合において慣習が明らかでないときは、同項の権利を承継すべき者は、家庭裁判所が定める。   

 

 (4)遺言の撤回

 

□ 》》遺言の撤回、撤回とみなされる場合、遺族による取消 をご覧ください。

 

(5)相続準拠法の適用について

 

 在日外国人が日本で遺言をする場合、成立及び効力とも日本法に従ったものにしたいときには、遺言で、準拠法として日本法を指定することが必要です。 


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