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埼玉県行政書士会所属
行政書士渡辺事務所
行政書士・渡邉文雄
関連情報
➤ 全財産を売却するなど換価処分して残金を相続させる(遺産の清算配分)遺言文例
➤ 特定の財産を除く、その余の財産を換価処分して残金を相続させる遺言文例
➤ 特定の財産を相続させ、その余は遺産分割方法の指定をする遺言文例
遺 言 書
遺言者〇〇〇〇は以下のとおり遺言する。
第1条
別紙1の土地・建物を、妻〇〇〇〇(昭和〇〇年〇〇月〇〇日生)に相続させる。
第2条
遺言者の相続開始時に有する、前条の財産を除き、別紙2の預金及び株式の全部を含む、その余の全財産を換価し、その換価金から遺言者の一切の債務を弁済し、かつ、遺言の執行に関する費用を控除した残金を、次のとおり相続させる。
妻 〇〇〇〇(昭和〇〇年〇〇月〇〇日生)に 24分の3
長男〇〇〇〇(昭和〇〇年〇〇月〇〇日生)に 24分の7
長女 〇〇〇〇(昭和〇〇年〇〇月〇〇日生)に 24分の7
次女 〇〇〇〇(昭和〇〇年〇〇月〇〇日生)に 24分の7
第3条
遺言者は、これまで長男〇〇〇〇、長女〇〇〇〇、次女〇〇〇〇にした生前贈与による特別受益持戻しをすべてを免除する。
第4条
1 遺言者は、この遺言の遺言執行者として、長男〇〇〇〇を指定する。
2 遺言者は、遺言執行者に対し、次の権限を授与する。
① 遺言者の有する株式、預貯金等の金融資産について名義変更、解約及び払戻しを行うこと
② 貸金庫の開扉と内容物の受領
③ その他この遺言の執行に必要な一切の処分を行うこと
3 遺言執行者は、その権限を第三者に委任することができる。
(付言事項)
長男〇〇〇〇、長女〇〇〇〇、次女〇〇〇〇には、父の思いをくみ取って、遺留分を放棄してくれることを望みます。
私は、妻〇〇〇〇が平穏な生活をおくることできるようこの遺言をしました。妻の生活状況を考え行ったこの遺言を理解してください。助け合って仲良く暮らしてください。
幸せな人生でした。ありがとう。
令和〇〇年〇〇月〇〇日
(遺言者住所)
遺言者 〇〇〇〇 ㊞
別紙1
遺産目録
1 土地
所在 〇〇市〇〇町〇〇丁目
地番 〇〇番〇〇
地目 宅地
地積 〇〇〇.〇〇平方メートル
2 建物
所在 〇〇市〇〇町〇〇丁目〇〇番地〇〇
家屋番号 〇〇番〇〇
種類 居宅
構造 木造瓦葺二階建
床面積 一階 〇〇.〇〇平方メートル
二階 〇〇.〇〇平方メートル
遺言者 〇〇〇〇 ㊞
別紙2
遺産目録
1. 〇〇銀行〇〇支店に対する遺言者名義の定期預金(口座番号〇〇〇
〇)
2. 株式会社〇〇の株式 〇〇〇〇〇 株
遺言者 〇〇〇〇 ㊞
ここが遺言(相続)のポイント
□ 遺産の清算配分の態様には、
①・・・積極財産全部を換価して、債務清算後の剰余金を相続人のみに相続させる型のもののほかに、
②この剰余金を相続人以外の者にも遺贈するもの、
③特定の財産を特定の相続人に相続させ又は特定の者に遺贈た上で、その余の財産について換価、清算配分を指示するもの、
④換価処分すべき財産に順位を付して指定し、換価は債務等の清算に必要な限度にとどめて、その余は他の分割方法を指示するもの
等、種々の態様が考えられる。
(出典:『 新版 証書の作成と文例 遺言編[改訂版]』36頁)
□ 「換価分割」は公平な方法ですが、不動産の売却益に所得税が課せられることがあるという欠点があります(「代償分割」は、この問題は生じない)。
〈「換価分割」に伴う譲渡所得税について〉
換価分割による不動産の分与は、購入時より評価額が上がっていると、増加分について、分与を受けた相続人に「譲渡所得税」(値上がりによる増加益に対する税)が課税されます。
(1)譲渡所得税
・長期譲渡所得:所有期間5年超の場合 所得税15.315%(復興税0.315%を含む)、地方税5%
・短期譲渡所得:所有期間5年以下の場合 所得税30.63%(復興税0.63%を含む)、地方税9%
居住用資産は、譲渡所得税について3,000万円の特別控除があります。
所有期間10年超の居住用資産は、3,000万円を超える部分についても、税率が軽減されます。
(2)「譲渡所得」の計算式
譲渡所得=譲渡収入の金額 (※1) −【(取得費 (※2)+ 譲渡費用)】
(※1)譲渡収入の金額=分与財産の時価
(※2)取得費=不動産の購入価格 (※3)+設備費+改良費 − 減価償却費相当額
(※3)不動産の購入価格が分からないときは、分与財産の時価の5%が取得費となります。
□ 換価処分し相続させる遺言の場合、相続人に共同で換価、清算、配分を実行させることが妥当でないときは、遺言執行者を指定するとともに、必要な場合は遺言執行者に与える権限についても規定しておくことをおすすめします。
□ 遺産分割協議を経ずに直ちに物権的承継効果を生じさせることを望む場合には、相続させる旨の遺言とすべきである。(出典:『改訂 遺言条項例300&ケース別文例集』70-71頁)
□ 遺言者は清算すべき債務を個々に指示する事ができ、指示のない相続債務は・・・各相続人に分属する。・・・、相続財産に関する費用(民885条)、遺言の執行に関する費用(民1021条)は、・・・相続財産の負担である。・・・葬儀費用、納骨費用等は、被相続人の債務ではないが、遺言により相続財産をもって支払うべきものと指示することもできる。
(出典:『 新版 証書の作成と文例 遺言編[改訂版]』37頁)。
本文例はあくまでも一例です。遺言者のご希望はもとより、推定相続人や遺贈したい人の状況、相続財産の状況などによって遺言文は違ってきます。
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