1. 遺産分割とは
相続が開始すると、相続財産は相続人全員の共有となります。この共有状態を解消し、個々の財産の帰属を決めるのが遺産分割です。
遺産分割は、遺言や家庭裁判所の審判によって禁止された場合を除き、いつでも、協議ですることができます。(民法907条(遺産の分割の協議又は審判等)、民法908条(遺産の分割の方法の指定及び遺産の分割の禁止))
民法907条(遺産の分割の協議又は審判等)
1. 共同相続人は、次条第1項の規定により被相続人が遺言で禁じた場合又は同条第2項の規定により分割をしない旨の契約をした場合を除き、いつでも、その協議で、遺産の全部又は一部の分割をすることができる。
2. 遺産の分割について、共同相続人間に協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、各共同相続人は、その全部又は一部の分割を家庭裁判所に請求することができる。ただし、遺産の一部を分割することにより他の共同相続人の利益を害するおそれがある場合におけるその一部の分割については、この限りでない。
民法908条(遺産の分割の方法の指定及び遺産の分割の禁止)
1. 被相続人は、遺言で、遺産の分割の方法を定め、若しくはこれを定めることを第三者に委託し、又は相続開始の時から5年を超えない期間を定めて、遺産の分割を禁ずることができる。
2. 共同相続人は、5年以内の期間を定めて、遺産の全部又は一部について、その分割をしない旨の契約をすることができる。 ただし、その期間の終期は、相続開始の時から10年を超えることができない。
3. 前項の契約は、5年以内の期間を定めて更新することができる。ただし、その期間の終期は、相続開始の時から10年を超えることができない。
4. 前条第2項本文の場合において特別の事由があるときは、家庭裁判所は、5年以内の期間を定めて、遺産の全部又は一部について、その分割を禁ずることができる。ただし、その期間の終期は、相続開始の時から10年を超えることができない。
5. 家庭裁判所は、5年以内の期間を定めて前項の期間を更新することができる。ただし、その期間の終期は、相続開始の時から10年を超えることができない。
2. 遺言による「指定分割」
遺言により遺産分割の方法を指定している場合には、その指定に従って分割します。
民法908条(遺産の分割の方法の指定及び遺産の分割の禁止)
1. 被相続人は、遺言で、遺産の分割の方法を定め、若しくはこれを定めることを第三者に委託し、又は相続開始の時から5年を超えない期間を定めて、遺産の分割を禁ずることができる。
ただし、相続人全員の合意があれば、遺言による「指定分割」に従わなくてもよいとされています。
民法907条(遺産の分割の協議又は審判等)
1. 共同相続人は、次条第1項の規定により被相続人が遺言で禁じた場合又は同条第2項の規定により分割をしない旨の契約をした場合を除き、いつでも、その協議で、遺産の全部又は一部の分割をすることができる。
3. 相続人の協議による「協議分割」
遺言による「指定分割」がないときには、相続人の話し合いで遺産を分割します。
遺言による「指定分割」があっても、相続人全員が合意すれば自由に決めることができます。
民法907条(遺産の分割の協議又は審判等)
1. 共同相続人は、次条第1項の規定により被相続人が遺言で禁じた場合又は同条第2項の規定により分割をしない旨の契約をした場合を除き、いつでも、その協議で、遺産の全部又は一部の分割をすることができる。
4. 家庭裁判所の調停による分割
遺言がなく、相続人が合意できないときは、家庭裁判所の調停により、遺産を分割することができます。なお、調停の結論は当事者が決定します。
5. 家庭裁判所の審判による分割
調停が成立しなかった場合は自動的に審判手続きが開始され、家庭裁判所の審判により遺産を分割します。
双方の主張のうち合理的な方法が採用されますが、法定相続分による共有となることもあります。
その場合、その後遺産分割協議ができないようであれば、原則として競売により売却し、売却代金を分けます。なお、競売による売却は任意売却と比べ不動産の価格が低くなります。
民法907条(遺産の分割の協議又は審判等)
2. 遺産の分割について、共同相続人間に協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、各共同相続人は、その全部又は一部の分割を家庭裁判所に請求することができる。ただし、遺産の一部を分割することにより他の共同相続人の利益を害するおそれがある場合におけるその一部の分割については、この限りでない。