□ 相続回復請求権とは、戸籍の誤った記載などによって、表見相続人(*)が相続財産を占有管理しているとき、真正相続人が表見相続人に対し財産を返すよう請求する権利のことです。
* 表見相続人とは、表面的には相続人に見えるが本当の相続人ではない人などのこと。
行政書士は街の身近な法律家
埼玉県行政書士会所属
行政書士渡辺事務所
行政書士・渡邉文雄
1. 相続回復請求権とは
表見相続人とは、表面的には相続人に見えるが本当の相続人(真正相続人)ではない人、もしくは本当の相続人だが、他の相続人の持分を侵害している人などのことを言います。
相続回復請求権とは、表見相続人が相続財産を占有管理しているとき、真正相続人が表見相続人に対し財産を返すよう請求する権利のことです。
2. 表見相続人が相続財産を占有管理しているケースとしてはどのようなものがあるか
① 戸籍の誤った記載などによって真正相続人が分からなかったケース
② 表見相続人の先順位相続人が行った相続放棄の意思表示が無効だったケース
③ 表見相続人に相続欠格事由が存在したことが判明したケース
④ 表見相続人が身分行為の無効・取消によって相続人の地位を失ったケース
3. 本当は自分のものを占有されているが、相続回復請求権では返還請求できないケース
ア、 共同相続人の一人が、善意無過失で、自らの相続分をオーバーして他の相続人の持分を占有管理している場合
この場合は、相続権を侵害された他の相続人は、所有権に基づく返還請求をすることになります。
※ 相続回復請求権と所有権に基づく返還請求権の時効期間の相違に注意。相続回復請求は5年以内、所有権に基づく返還請求は10年以内です。
イ、 表見相続人が相続財産を第三者に売却した場合
この場合、相続権を侵害された真正相続人は、当該第三者に対して、所有権に基づく返還請求をすべきとされています。
4. 表見相続人と時効
(1) 表見相続人と取得時効
表見相続人には、時効取得(*)は認められません。
表見相続人が相続財産を第三者に売却した場合は、財産を譲り受けた者には時効取得が認められます。
* 所有の意思をもって、平穏かつ公然と20年間占有した場合は時効によって取得できます。さらに、占有開始が善意かつ無過失であった場合は、10年間で時効取得できます。
(2) 相続回復請求権の時効による消滅
相続回復請求権は、相続権を侵害されたことを知ってから5年以内(時効期間)に、表見相続人に対し、請求しなければなりません。
なお、相続開始の時(亡くなったとき)から20年(除斥期間)を経過したときは、相続権が侵害されたことを知っていたかどうかにかかわらず、相続回復請求権は消滅します。(民法884条)