第1条(契約の趣旨)
委任者〇〇〇〇(以下「甲」という。)及び受任者〇〇〇〇(以下「乙」という。)は甲の死亡後の事務に関し、以下のとおり委任契約を締結する。
第2条(委任事務の範囲)
1. 甲は、乙に対し、甲の死亡後における次の事務(以下、「本件死後事務」という。)を委任する。ただし、甲が別に遺言で定めている場合はそれによるものとする。
① 甲の死亡により必要となる 行政官庁等への諸届と費用の支払い
② 通夜及び告別式等葬儀に関する事務と費用の支払い
③ 火葬及び納骨等埋葬に関する事務と費用の支払い
④ 不要な家財道具及び身の回りの生活用品の処分と費用の支払い
⑤ 医療機関の退院手続き、医療費その他費用の支払い及び入院保証金等の返還金受領
⑥ 老人ホーム等施設の退所手続き、施設利用料等の支払い及び入居一時金等の返還金受領
⑦ 甲の相続開始時までに支払い義務が確定していた公共料金、公租公課の支払い
2 甲は、乙に対し、前項の事務処理をするにあたり、乙が復代理人を選任することを承諾する。
第3条(通夜、告別式、永代供養)
通夜及び告別式は、〇〇寺に依頼する。納骨及び埋葬は、〇〇霊園による永代供養とする。
第4条(連絡)
甲が死亡した場合、乙は、予め甲が別に指定する者に速やかに連絡するものとする。
第5条(費用の負担)
乙が本件死後事務を処理するために必要な費用は、甲の遺産から支払いを受けることができるものとする。
第6条(報酬)
甲は、乙に対し、本件死後事務の報酬として、金〇〇万円を支払うものとし、本件死後事務終了後、甲の遺産からその支払を受けることができる。
第7条(契約の変更)
甲又は乙は、甲の生存中、いつでも本契約の内容の変更を求めることができる。
第8条(契約の解除)
1 甲は、いつでも本契約を解除することができる。
2 甲が死亡した場合、甲の相続人は本契約を解除することができない。
3 乙は、経済情勢の変化、その他相当の理由により本契約を達成することが不可能若しくは著しく困難な状態になったときでなければ、本契約を解除することができない。
第9条(契約の終了).
本契約は、次の場合に終了する。
① 乙が死亡し又は破産手続きの開始の決定を受けたとき
② 乙が後見、保佐又は補助開始の審判を受けたとき
第10条(報告義務).
1 乙は、甲の相続人、遺言執行者又は相続財産管理人の請求があるときは、速やかにその求められた事項につき報告する。
2 乙は、甲の相続人、遺言執行者又は相続財産管理人に対し、本件死後事務終了後1か月以内に、本件死後事務につき行った措置及び費用の支出状況について書面で報告する。
甲乙間に上記合意が成立したことを証するため、本書2通を作成し、甲乙が署名捺印の上、各自1通を保有する。
令和〇〇年〇〇月〇〇日
(甲)住所
氏名 印
(乙)住所
氏名 印
ここがポイント
□ 委任事務の範囲(第2条) 委任事項は事案により追加又は削除する必要があります。
□ 受任者の報酬(第6条) 特約がなければ報酬を請求することはできません。
□ 死後事務を処理するために必要な費用(第5条)
死後事務を処理するために必要な費用は相続人に対し請求することができますが、相続人が支払いに応じない場合に備え、受任者が預かり保管している遺産から清算することを可能にする条項をもうける必要があります。
□ 委任者の相続人の解除権を制限する特約(第8条2項)
委任者が死亡したときは委任者の地位は相続人に承継されます。相続人が死後事務委任契約を解除し遺族とトラブルになるおそれがありますので、委任者の相続人の解除権を制限する特約を設ける必要があります。 ただし、この特約を設けても、やむを得ない事由があったときには委任者の相続人による解除が認められる場合があります。
□ 死後事務を処理するために必要な費用及び受任者に対するの報酬の支払を「遺産から受ける」場合は、別途、遺言に受任者への死後事務を処理するために必要な費用及び報酬の支払いを定める必要があります。
□ 委任契約は受任者の死亡により終了し、受任者の相続人に委任契約上の義務が承継されることはありません。したがって、受任者の死亡後も委任契約上の義務を継続させるためには、特約条項として「委任者が受任者に対し復代理人を選任することを承諾する」旨の定めを設ける必要があります。(第2条2項)
□ 葬儀、埋葬の実施方法について、詳細な指示(死亡を知らせる範囲、香典取り扱い(辞退、香典返し等)、遺影、式場、家族葬等、菩提寺、戒名・法名の要否など)を希望する場合は、別紙とする方法が考えられます。(第3条)