□ 成年後見制度とは、判断能力が不十分な方(認知症高齢者、知的障害や精神障害のある方)の財産管理、金融機関との取り引き(年金の受け取り など)、療養看護の手配(介護サービスの利用契約・支払い など)などの事務手続きを代理し支える制度です。
□ 成年後見には「法定後見」と「任意後見」の二つがあります。法定後見の対象になるのは、既に判断能力が低下している方です。一方、任意後見の対象になるのは判断能力がある方です。
□ 法定後見では、家庭裁判所が後見人を選任します。一方、任意後見では、本人が後見人を選び、契約により依頼します。
□ 法定後見では、親族が自ら後見人になりたいと望んでも、預貯金が1,200万円以上あると弁護士等が後見人に選任されるか、弁護士等が後見監督人としてつけられることが多い、と言われています。専門職後見人(後見監督人)の報酬は・・・。
□ お金がないため成年後見制度を利用できない方を支援する制度として、市区町村の「成年後見制度利用支援事業」があります。
□ 財産管理のためだけなら、こうすれば成年後見を使わないで済む。
□ 成年後見についての相談、後見業務サポートをする組織として、行政書士会にコスモス成年後見サポートセンター埼玉県支部(℡ 048-833-0647)があります。
1. 成年後見制度とは
認知症と診断されると、施設に入所するため預金を引き出そうとしても、原則として、「後見人」がいないと預金をおろすこともできません。
成年後見制度とは、認知症などで判断能力が低下(*)したときに、「後見人」に財産管理、金融機関との取り引き(年金の受け取り など)や療養看護の手配(介護サービスの利用契約・支払い など)などの事務手続きを代理してもらう制度です。
* 判断能力とは、例えば、買い物等をする際に、その価格が適正か不適正か等を考えるのに必要な能力のことです。
2. 成年後見制度の種類
成年後見には、「法定後見」と「任意後見」の二つがあります。
(1) 法定後見
法定後見の対象になるのは、既に判断能力が低下している方です。家庭裁判所が後見開始の審判を行い「後見人」を選任します。
(2) 任意後見
任意後見契約を結べるのは現在判断能力がある方に限られます。本人が後見人(後見人受任者;後見人予定者)を選び契約します。
(3) 法定後見と任意後見の違い
法定後見と任意後見の違いは、後見人を選ぶのに本人の意向が反映されるか否かにあります。
3. 法定後見と任意後見の「後見人の権限」の違い
任意後見人には契約など本人がした法律行為への同意権はありません。また、任意後見人は、本人が騙されたり詐欺にあった場合など本人がした法律行為を取り消すことはできません。。
これに対し、法定後見人は、原則として本人がした法律行為を取り消すことができます。
4. 任意後見は、特に一人暮らしの高齢者に必要です
子どものいない夫婦でパートナーが先に逝ってしまった場合は、任意後見制度は特に必要です。
判断能力がしっかりしているうちに、後見人受任者(後見人予定者)を自分でさがし、任意後見契約を結んでおくことをおすすめします。
5. 成年後見制度はお金がかかります
(1) 専門職成年後見人の報酬のめやす
法定後見では、親族が自ら後見人になりたいと望んでも、預貯金が1,200万円以上あると弁護士等専門職が後見人に選任されるか、後見監督人としてつけられることが多い、と言われています。
専門職成年後見人が、通常の後見事務を行った場合の報酬(これを「基本報酬」と呼び ます。)のめやすとなる額は、月額2万円です。
ただし、管理財産額(預貯金及び有価証券等の流動資産の合計額)が高額な場合 には、財産管理事務が複雑、困難になる場合が多いので、管理財産額が1000万 円を超え5000万円以下の場合には基本報酬額を月額3万円~4万円、管理財産 額が5000万円を超える場合には基本報酬額を月額5万円~6万円とします。(出典:裁判所ホームページ)
(2) 専門職成年後見監督人報酬のめやす
家族が後見人になった場合は、弁護士等専門職が後見監督人としてつけられます。
専門職成年後見監督人が、通常の後見監督事務を行った場合の報酬(基本報酬)のめやすとなる額は、管理財産額が5000万円以下の場合には月額1万円~2万円、管 理財産額が5000万円を超える場合には月額2万5000円~3万円とします。なお、保佐監督人、補助監督人、任意後見監督人も同様です。(出典:裁判所ホームページ)
6. 相続対策が難しくなります
相続税節税のため自宅不動産を家族(後見人)に生前贈与することは、後見人の利益となる財産の移動となり、認められません。
主な財産が自宅不動産の場合、成年後見人をつけて財産管理をしてもらうと、配偶者の生活費の手当てなど相続対策が難しくなります。
また、成年後見は、いったん始めると、本人の死亡までやめられません。
7. 市区町村の「成年後見制度(法定後見)利用支援事業」
経済的な理由で成年後見制度(法定後見)を利用できない方を支援する制度として、市区町村で行っている「成年後見制度(法定後見)利用支援事業」があります。(厚生労働省の事業)
後見開始の申し立てに関する費用や後見人等報酬を負担することが困難な場合、この制度により援助を受けることができます。
8. 社会福祉協議会「日常生活自立支援事業(地域福祉権利擁護事業)」
認知症などで判断能力が不十分になったとき、財産管理や生活上の手続きを支援しもらう制度として、成年後見制度のほかに、社会福祉協議会がやっている「日常生活自立支援事業」があります。
日常生活自立支援事業は、通帳・カードなどの保管や、税金や電気、ガス、水道代等公共料金の支払い、家賃、施設利用料、入院費などの支払い、年金などの収入の受取りなど日常生活のお金の受け払いをやってくれます。
① 日常的金銭管理サービス
・年金及び福祉手当の受領に必要な手続き
・医療費を支払う手続き
・税金や社会保険料、公共料金を支払う手続き
・日用品等の代金を支払う手続き
・上記の支払いに伴う預金の払戻、預金の解約、預金の預入れの手続き
② 書類等の預かりサービス(保管できる書類等)
・年金証書
・預貯金の通帳
・権利証契約書類
・保険証書
・実印、銀行印
・その他、実施主体が適当と認めた書類(カードを含む)
③ 福祉サービスの利用援助
・福祉サービスを利用し、または利用をやめるために必要な手続き
・福祉サービスについての苦情解決制度を利用する手続き
・住宅改修、居住家屋の賃借、日常生活上の消費契約及び住民票の届出等の行政手続きに関する援助
・その他福祉サービスの適切な利用のための必要な一連の援助
・福祉サービスの利用料を支払う手続き
※ 介護保険サービス、病院・施設への入退所契約、等の代理はやってくれません。
9. 財産管理のためだけなら、こうすれば、成年後見制度を使わなくても済みます
➀ 銀行カードの暗証番号をメモしておく。
② 定期預金は解約する。
③ 不動産があるときは家族と信託契約を結んでおく。
④ 遺言書を書く。