□ 判断能力を失った重度の認知症に備える対策として「任意後見」があります。任意後見とは、あらかじめ財産管理、金融機関との取り引き、療養看護の手配などの事務手続きを頼んでおく契約です。
一人暮らしの高齢者や子どものいないご夫婦で相手が先に逝ってしまったケースは、特に任意後見契約が必要です。
□ 任意後見契約が登記されているときに法定後見開始の審判をするためには、財産管理に問題があるなど特別の必要性が要件とされています。
1. 法定後見は既に判断能力が低下している方が対象、任意後見はあらかじめ判断能力の低下に備えてする契約
任意後見は、判断能力を失う重度の認知症に備え、あらかじめ財産管理、金融機関との取り引き、療養看護の手配などの事務手続きを頼んでおく契約です。
一方、法定後見は、既に判断能力が低下している方が対象です。契約によって生じるものではなく、民法に定められた一定の者(配偶者や親族等)からの請求に基づき家庭裁判所が審判を行い、後見人の選任を行うものです。
2. 法定後見では後見人を選任するのは家庭裁判所です
後見人を誰にするかについては、任意後見では自分で決められるので、将来を見越して事前に準備ができます。
一方、法定後見では選任するのは家庭裁判所です。したがって、親族が後見人になると限らず、親族以外の第三者(専門職)が後見人に選任されることもあります。
3. 後見人の取消権
任意後見人には取消権はありません。本人がした法律行為を取り消すことはできません。 これに対し、法定後見人は、本人が詐欺にあった場合などは、原則として取り消すことができます。
4. 任意後見人は法定後見開始の申し立てをすることができる
任意後見開始後、被後見人がした法律行為を取り消す必要があるような状況になったり、同意権が必要な状況になった場合、任意後見人は法定後見開始の申し立てをすることができます。これにより、成年後見人等が選任されれば、任意後見契約は終了します。
5. 任意後見「予定者」に関し、法定後見の申し立てがあった場合
任意後見契約を結んでいた任意後見「予定者」に関し、法定後見の申し立てがあった場合は任意後見が優先します。