1. 公正証書とは
公証役場で作成される契約書等です。原本は公証役場で20年間保管してもらえるため、偽造や紛失の心配はありません。
2. 公正証書の効果
(1)証拠力
公証役場で作成される契約書等は、文書の成立や内容の真実性が推定され、信ぴょう性が認められ、強い証拠力を有します。
公正証書に書かれた日付には、確定日付(*)としての効力が認められます。
* 確定日付 その文書の押捺の日付を確定し、その文書がその確定日付を押捺した日に存在することを証明するものです。
(2)心理的圧力
3. 公正証書により強制執行するための要件(債務名義)
債務名義(民事執行法22条)とは、いわば強制執行ができる資格です。
公証役場で作成される契約書等により強制執行することがが認められていますが、公正証書により強制執行するためのには次の要件があります。
① 金銭の一定額の支払いについて作成された公正証書であること
有価証券の一定の数量の給付について作成されたものも認められています。
「一回でも怠ったときは」のように、金額が一定されていない契約は強制執行できません。
第〇条 甲は乙に対し、丙及び丁の養育費として、令和〇年〇〇月(*)から丙・丁、それぞれが満20歳に達する日の属する月まで、毎月一人につき金〇万円を、毎月末日限り、乙の指定する、〇〇銀行〇〇支店の乙名義の預金口座(口座番号〇〇〇〇〇〇)に振込する方法により支払う。なお、振込手数料は甲の負担とする。
〇 給付文言であることが必要です
給付文言とするためには「支払う」と明確に記載することが必要です。 「支払うことを確認する」や「支払義務があることを確認する」、「支払うものとする」という文言では給付文言とはなりません 。
② 執行認諾条項(執行認諾約款、執行受諾文言)が記載されていること
甲は、〇に定める金銭の支払いを怠ったときは、直ちに強制執行に服する旨認諾した。
民事執行法22条(債務名義)
強制執行は、次に掲げるもの(以下「債務名義」という。)により行う。
一 確定判決
二 仮執行の宣言を付した判決
三 抗告によらなければ不服を申し立てることができない裁判(確定しなければその効力を生じない裁判にあつては、確定したものに限る。)
三の二 仮執行の宣言を付した損害賠償命令
三の三 仮執行の宣言を付した届出債権支払命令
四 仮執行の宣言を付した支払督促
四の二 訴訟費用、和解の費用若しくは非訟事件(他の法令の規定により非訟事件手続法(平成23年法律第51号)の規定を準用することとされる事件を含む。)、家事事件若しくは国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約の実施に関する法律(平成25年法律第48号)第29条に規定する子の返還に関する事件の手続の費用の負担の額を定める裁判所書記官の処分又は第42条第4項に規定する執行費用及び返還すべき金銭の額を定める裁判所書記官の処分(後者の処分にあつては、確定したものに限る。)
五 金銭の一定の額の支払又はその他の代替物若しくは有価証券の一定の数量の給付を目的とする請求について公証人が作成した公正証書で、債務者が直ちに強制執行に服する旨の陳述が記載されているもの(以下「執行証書」という。)
六 確定した執行判決のある外国裁判所の判決(家事事件における裁判を含む。第24条において同じ。)
六の二 確定した執行決定のある仲裁判断
七 確定判決と同一の効力を有するもの(第3号に掲げる裁判を除く。)
③ 執行文の付与(下記3.−(1))
公証人に公正証書に「執行文を付与」してもらいます。
「債権者○○○○は、債務者○○○○に対し、この公正証書によって強制執行をすることができる」
民事執行法26条(執行文の付与)
1. 執行文は、申立てにより、執行証書以外の債務名義については事件の記録の存する裁判所の裁判所書記官が、執行証書についてはその原本を保存する公証人が付与する。
2. 執行文の付与は、債権者が債務者に対しその債務名義により強制執行をすることができる場合に、その旨を債務名義の正本の末尾に付記する方法により行う。
④ 債務者に債務名義の謄本等を「送達」 (下記3.−(2))
執行証書を公証人にあらかじめ債務者に「送達」してもらいます。
民事執行法29条(債務名義等の送達)
強制執行は、債務名義又は確定により債務名義となるべき裁判の正本又は謄本が、あらかじめ、又は同時に、債務者に送達されたときに限り、開始することができる。第27条の規定により執行文が付与された場合においては、執行文及び同条の規定により債権者が提出した文書の謄本も、あらかじめ、又は同時に、送達されなければならない。
4. 強制執行の申立の手順
(1)公証人に債務名義(公正証書)に「執行文を付与」してもらいます。
執行文 「債権者○○○○は債務者○○○○に対し、この公正証書によって強制執行することができる」
(2)執行証書を公証人にあらかじめ債務者に「送達」してもらいます。
5. 借地借家法により公正証書で作成しなければならない契約
① 事業用定期借地権設定契約
② 定期借地権設定契約で更新しない旨の特約
③ 定期建物賃貸借契約
関連取り扱い業務
▼ 契約書等作成(11,000円~)
※ 契約の内容により異なります。代理人として作成できます。
▼ 告発状・告訴状作成(11,000円~)
※ 内容により異なります。
▼ 督促状作成(11,000円~)
※ 内容により異なります。法的主張が相手と全く違うときはお受けできません(金銭的主張の違うときを除く)。