養育費が支払われないときはどうしたらいいのか

□ 養育費は、相手に扶養義務を果たすよう要求したときから請求できる、とされています。養育費が支払われないとき及び支払いが滞ったときは、内容証明郵便で請求した事実を残します。 

□ 養育費の一部が不履行となったときは、滞納分だけでなく期限が到来していない分も含めて差し押さえができます。 

□ 給料の場合は、給与額から税金と社会保険料を差し引いた残額の2分の1、残額の2分の1が33万円を超えるときは33万円を除いた部分が差押可能です。 


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埼玉県行政書士会所属

行政書士渡辺事務所

行政書士・渡邉文雄

 

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1. 養育費が支払われないとき及び、養育費の支払いが滞ったときの対処法 

 

□ 養育費の支払いが滞ったときは、「直接強制」の方法により財産の差し押さえができます。

 また、平成16年法律152号(平成17年4月1日施行)により、「間接強制」の方法によっても強制できることになりました。「間接強制」とは、債権者の申立てにより、裁判所が債務者に対し支払いを命ずる制度です。

□ 養育費の一部が不履行となったときは、滞納分だけでなく期限が到来していない分も含めて差し押さえができます。 

 

 

2. 「強制執行」について

 

□ 強制執行は、離婚協議書に定めた約束事を履行させるため、裁判所が相手の財産を差し押さえ、競売にかけてお金に換えるなどして強制的に金銭等を回収してくれる制度です。 

□ 強制執行という手続きを利用するためには、強制執行の根拠となる「債務名義」を取得しなければなりません。「債務名義」には以下のものがあります。

① 家庭裁判所の「調停」(養育費の金額の取り決めを行う)

② 家庭裁判所の「審判」(養育費の金額を定めてもらう)

③ 「裁判の判決」(養育費の金額を定めてもらう)

④ 強制執行認諾文言付公正証書(離婚協議書を強制執行認諾文言付公正証書で作っておけば、養育費の支払いが遅れたときは、裁判をすることなく差し押さえをしてもらうことができます。) 

 

 

3. 強制執行の手続きの流れ

 

(1) 強制執行認諾文言付離婚公正証書が「ある場合」

 

① 相手に「手紙」などで支払い期限を明示して養育費を支払うよう請求します。

 

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② 期限までに支払いがないときは、「内容証明郵便」で支払い期限を明示して請求します。

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③ それでも支払いがない場合は、地方裁判所に対し「強制執行」の申し立てをします。

 

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□ 地方裁判所に対する「強制執行の申し立て」手続き

 

① 強制執行で給料等を差し押さえる場合、まずは相手方の勤務先や口座の情報など「差し押さえる財産の情報を調査」します。(相手の口座を特定しないと差し押さえできません。裁判所は相手がどのような財産を持っているかは調査してくれません。「どこにある、どの財産」を差し押さえてほしいのかを裁判所に説明する必要があります給与を差し押さえるのであれば、「勤務先」の情報、預金口座を差し押さえるのであれば「銀行名・支店名などの口座」の情報を裁判所に伝える必要があります。)

 

※ 一般に履行強制の場合は、財産の状況がわからないときは地方裁判所に財産開示請求を申し立て開示させることができますが、強制執行認諾約款付公正証書による履行強制の場合は、財産開示請求制度を利用することはできません。(民事執行法第197条)

 

注意事 項 養育費・賠償金 取り立てやすく 民事執行法の改正要綱答申

・・・確定判決等に基づいて裁判所に申し立てれば、相手の預貯金口座の残高や不動産などの財産関連の情報を指定した金融機関や公的機関から入手できる・・・。・・・養育費の取り立てに場合は、・・・元配偶者の勤務先情報も取り寄せられる。・・・相手を裁判所に出頭させ、財産を明らかにさせる仕組みも・・・

出典(2018.10.5朝日新聞7頁)

 

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② 「執行文」「送達証明」を公正証書を作成した公証役場に問い合わせます。

 

ア、強制執行を行うには、離婚公正証書の正本に執行文(*1)を付けてもらう必要があります。

 

 

*1;「 執行文」とは、離婚公正証書の末尾に付ける、「強制執行をすることができる」旨の記載のことです。

 

イ、公証人役場に依頼し、「送達証明」(*2)を取得します。

 

*2;「送達証明」は、債務者に対する「こういう内容の強制執行をします」という予告のことです。離婚公正証書の送達後、相手方に送達したことを証明するため、公証人役場から「送達証明」を取得します。

 

③ 「債務名義」(離婚公正証書)の送達申請 

■ 裁判所執行官に対し、離婚公正証書の謄本を、強制執行前または執行と同時に相手方に送達すべき旨を申立てます。

 

□ 離婚公正証書に「執行文」を付け送達してもらい、送達後「送達証明」を取得すれば、強制執行をしてもらう準備は完了です。

 

□ 強制執行申立提出書類

① 強制執行申立書(債権差押命令申立書)

② 給与差し押さえの場合、相手の会社の登記簿謄本(資格証明書)

③ 請求債権目録(養育費を請求する権利の内容)

④ 差押債権目録(給与を差し押さえる場合には、給与を支払う会社や給与の金額など。預金を差し押さえる場合には、口座)

⑤ 当事者目録(給与を差し押さえる場合には、申立人、相手方、そして相手方の勤める会社) 

 

※ 書類がそろったら、相手の勤務する会社の住所地の地方裁判所に書類を提出ます。 

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□ 相手が勤務する会社と、養育費分を給与から天引きするか、天引きした給与を申立人のどの口座に支払うかを話し合います。 

□ 相手が会社員や公務員の場合は、給料や退職金を差し押さえます。 

■ 給料の場合は、給与額から税金と社会保険料を差し引いた残額の2分の1(慰謝料では4分の1)、残額の2分の1が33万円を超えるときは33万円を除いた部分が差押可能です。 

■ 相手が会社経営者であれば役員報酬を差し押さえることができます。 

 

□ 支払期限の過ぎたものだけでなく、これから支払期限の来るものについても、将来の給与などを差し押さえることができます。  

 一度強制執行を行えば、将来にわたって義務者の給料から天引きで養育費を受け取れます。 

※ 転職をした場合は、改めて差し押さえ手続きを行う必要があります。

※ 慰謝料では過去の不払い分のみです。

 

(2) 強制執行認諾文言付離婚公正証書が「ない場合」

 

① 相手に「手紙」などで支払い期限を明示して養育費を支払うよう請求します。

 

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② 期限までに支払いがなかった場合は「内容証明郵便」で支払い期限を明示して養育費を支払うよう請求します。(内容証明郵便は証拠としての能力があります)

 

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③ それでも期限までに支払いがなかった場合は、家庭裁判所に対して、養育費請求の「調停」を申し立てます

 

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□ 養育費請求の調停を申し立てる場合は、相手方の住所地の家庭裁判所又は、当事者が合意で定める家庭裁判所に「養育費請求調停申立書」を提出します。

■ 子ども・申立人・相手方の戸籍謄本、申立人の収入に関する資料(源泉徴収票、給与明細書など)、事情説明書(養育費の支払いに関する状況)、連絡先等の届出書なども提出します。

 

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□ 調停が成立すると「調停調書」が作成されます。これにより強制執行(差し押さえ)が可能となります。

 

□ 調停が不成立になった場合は、自動的に「審判」手続きが開始されます。

■ 審判がくだされると「審判書」が作成されます。これにより「強制執行」(差し押さえ)が可能となります。

ポイント ここがポイント

□ 強制執行する前に、手紙、内容証明等で、これ以上支払いが滞る場合は強制執行手続きをとる、とあらかじめ伝えておきます。 いざこざはなるべく起こさないようにするのが、支払ってもらう秘訣です。

 

□ 強制執行は手続きが煩雑で費用もかかります。履行勧告・履行命令の制度で解決するのがベストです。

(参考)韓国では、養育費の支払い方法を記した離婚協議書を裁判所に提出することが義務付けられています。米国では国や州による支払い命令や徴収制度があります。スゥエーデンには国による立て替え払い制度があります。