■ 財産分与を金銭で支払う場合は課税されるものはありませんが、不動産などの現物の財産分与は、税法上売却と見做され、購入時より評価額が上がっていると、増加分について、譲渡する側(所有名義人)に「譲渡所得税」(値上がりによる増加益に対する税)が課税されます。購入時期の古い不動産は注意が必要です。
■ 居住用財産を財産分与する場合は、3,000万円以上値上がりしていなければ譲渡所得課税はありません。
■ 居住用財産を譲渡した場合の譲渡所得課税の特例は、親子や夫婦など特別な関係でない者への譲渡が要件となっていることから、財産分与する場合は離婚届受理後に財産分与の手続きを行う必要があります。
1. 譲渡所得課税(値上がりによる増加益に対する課税)
・長期譲渡所得:所有期間5年(※1)超の場合 所得税 15.315%(復興税(※2)0.315%を含む)、地方税 5%
・短期譲渡所得:所有期間5年(※1)以下の場合 所得税 30.63%(復興税(※2)0.63%を含む)、地方税 9%
(※1)基準日は譲渡をした年の1月1日
(※2)平成25年から令和19年まで
2. 「譲渡所得」の計算式
譲渡所得=譲渡収入の金額 (※1) −【(取得費 (※2)+ 譲渡費用)】
(※1)譲渡収入の金額=分与財産の時価
(※2)取得費=不動産の購入価格 (※3)+【設備費+改良費 − 減価償却費相当額】
(※3)不動産の購入価格が分からないときや、取得費よりも分与財産の時価の5%の方が大きいときは、分与財産の時価の5%が「取得費」とみなされます。
3. 居住用財産を譲渡した場合の譲渡所得課税の特例
居住用財産(※1)を譲渡した場合(※2)は、所得税について3,000万円の特別控除があります(居住期間は関係ありません)。
また、所有期間10年超の居住用財産を譲渡した場合は、3,000万円を超える部分についても、税率が軽減されます。
(※1)居住用財産:譲渡者が現に居住の用に供している家屋又は家屋・
敷地
(※2)居住の用に供さなくなった日から3年を経過する日の属する年の
12月31日までの間の譲渡を含む。
4. 特例が認められない場合
(1)居住用財産を親族に譲渡
居住用財産を譲渡した場合の譲渡所得課税の特例は、配偶者など特
別な関係でない者への譲渡が要件となっている(※)ことから、財産
分与する場合は離婚届受理後に財産分与の手続きを行う必要がありま
す。
(※)所得税関係措置法施行令20条の3第1項各号、23条
(2)別居し、所有者(名義人)が居住していない場合
①所有者が従来居住していた、②所有者の配偶者が居住している、
③所有者が現在居住している家屋がその所有者の家屋でない等の要件
を満たせば、別居し、所有者(名義人)が居住していない場合も特例
を受けることができます(所得税関係措置法通達31の3-6、35ー5)
(3)前年、又は前々年に買い替えの特例等他の特例を受けている
前年、又は前々年に買い替えの特例等他の特例を受けている場は、
居住用財産を譲渡した場合の譲渡所得課税の特例は認められません。
5. 分離課税と総合課税
不動産の譲渡所得については、他の所得(給与所得や事業所得等)と分離して所得税額を計算することになっています(分離課税)。 株式等不動産以外の資産は、給与所得や事業所得等他の所得と総合して所得税額を計算し(総合課税)。
6. 譲渡所得税が課税されることを知らずに財産分与の合意をした
譲渡所得税が課税されことを知らずに、不動産などの現物の財産分与等の合意をした場合、要素の錯誤を理由として合意が無効になるかどうかが問題となります。
判例では、譲渡所得税が課税されることを知っていれば合意をしなかったであろうことが予想される場合であっても、譲渡所得税を負担しないことを合意の動機として表示しない限り、要素の錯誤があったとはいえず、財産分与は有効である(東京高判60.9.18判時1167号33頁)他があります(出典:第一東京弁護士会人権擁護委員会[編](2016)『離婚を巡る相談100問10答 第二次改定版』ぎょうせい.200-207頁)。
例え税金がかからないような場合であったとしても、翌年に確定申告をしなければいけません。
7. 譲渡損失が発生した場合
時価が購入時より値下がりした不動産を分与した場合には、譲渡所得はマイナスになります(譲渡損といいます)。
平成16年度の税制改正により、居住用不動産の分与による譲渡損に限って、一定の要件の下に、土地・建物等の譲渡所得以外の所得との損益通算及び繰り越し控除を認める規定が設けられました(措置法41条の5の2)。