慰謝料~離婚の慰謝料のルール~

□ 「性格の不一致」など、どちらか一方にだけ責任があるとはいえないケースは、請求が認められるのは難しいとされています。 

 

□ 裁判所の統計によれば・・・200万円~300万円が一番多い。(安達敏男・吉川樹士(2017)『第2版 一人でつくれる契約書・内容証明の文例集』日本加除出版.300頁) 

 

□ 慰謝料は時効により3年で消滅します(慰謝料を請求できるのは「離婚後3年以内」です)。財産分与の時効(財産分与を請求できる期間)は、離婚したときから2年です(除斥期間と考えられており、中断はありません)。

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行政書士渡辺事務所

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➤ 離婚協議書文例(慰謝料)

1. 慰謝料とは

 

 離婚に際し、夫婦の一方から他方に支払われるお金を「離婚給付」といいます。離婚給付には「慰謝料」と「財産分与」が含まれます。離婚給付は「解決金」と呼ぶ場合もあります。 

 

 離婚の慰謝料とは、不貞行為、暴力行為、虐待行為等、離婚原因を作った側(有責配偶者)が、離婚の原因に責任のない配偶者に対し、それらの行為及び離婚に至ったことによる「精神的苦痛」を慰謝するために支払う損害賠償金です。

 

 離婚の原因が、単に「性格の不一致」であるとか、双方に同じくらい離婚の原因について責任があるときは、慰謝料の請求はできません。

 

 離婚の慰謝料は財産分与とは別です。財産分与がなされたのちでも、「不法行為を理由」として改めて請求をすることができます。 

 

民法710条(財産以外の損害の賠償)

他人の身体、自由若しくは名誉を侵害した場合又は他人の財産権を侵害した場合のいずれであるかを問わず、前条の規定により損害賠償の責任を負う者は、財産以外の損害に対しても、その賠償をしなければならない。

 

 民法709条(不法行為による損害賠償)

故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。

 

2. 慰謝料が認められるケース

 

(1) 不貞行為、暴力行為、虐待行為等により精神的苦痛を受けた場合、離婚及び慰謝料を請求できます

 

① 不貞行為(不倫) 

※ 肉体関係を伴わない関係は不貞行為(不倫)とはみなされません。

 

② 配偶者に対する暴力行為(DV)

 

③ 通常の性的交渉を拒否した

 

④ 承知の上で、生活費を渡さない(悪意の遺棄)

 

(2) 慰謝料が認められないケース

 

① 相手には責任を問えるような離婚原因がない 。

 

② 「性格の不一致」、信仰上の対立、家族親族間の折り合いが悪いなど、どちらか一方にだけ責任があるとはいえないケースは、双方の責任の度合いにもよりますが、請求が認められるのは難しいとされています。

 

③ 離婚原因について双方に同程度の責任がある。 

 

④ 不貞行為(不倫)等、離婚原因となる行為の前に、すでに夫婦関係が破たんしていた。  

 

⑤ 慰謝料は、既に財産分与の一部として補てんされている(離婚協議書にその旨明示されている必要があります) 。

 

3. 請求の根拠

 

 慰謝料は損害賠償の一種で、離婚について責任のある者が支払います。

 不貞行為(不倫)については、婚姻関係にある夫婦にはお互いに貞操を守る義務があるので、配偶者に不貞な行為があったときは、義務違反として慰謝料を請求することができます。 

 

4. いくら請求できるか

 

 経緯、背景事情及び離婚原因を考慮し決めます。

 

①  不貞行為(不倫)や暴力行為(DV)など離婚原因となった違法行為の程度

②  裏切りの程度

③ 相手に与えた精神的苦痛の程度

④ 婚姻期間

⑤  社会的地位

⑥ 支払能力(収入、財産)

⑦ 未成熟子の存在

⑧ 破たんに至る経緯、破たん原因に対する双方の責任の程度

⑨  離婚後の経済的生活や再婚の可能性 

 

(慰謝料の額は)裁判所の統計によれば、100万円~300万円くらいまでが多く、その中でも200万円~300万円が一番多いようです。(出典:安達敏男・吉川樹士(2017)『第2版 一人でつくれる契約書・内容証明の文例集』日本加除出版.300頁) 

 

5. 過失相殺

 

 精神的な損害を受けた側にも責めを負うべき点がある場合には、両者の過失を比較し、損害と相殺したうえで慰謝料の額を決めます。 

 

6. 期限の利益喪失条項

 

 慰謝料を分割で支払うことにした場合は、不払いにされても期限が来ている部分しか強制執行できません。この点で、 養育費とは違います、

 したがって、「分割金を1回でも支払わなかった場合は、残金を一括してただちに支払う」という約束をしてもらい、これを強制執行認諾条項付公正証書に入れておけば確実です。   

 

7. 慰謝料には、上記の離婚自体に対する慰謝料のほかに、離婚原因となった不法行為に対する損害賠償があります

 

(1) 不倫相手への請求

 

 不倫は、配偶者と不倫相手による「共同不法行為」です。

 よって、不倫相手にも、精神的苦痛や不倫が原因で結婚生活が破たんしたことを理由として慰謝料を請求することができます。 

 ただし、既に配偶者から充分な慰謝料を支払ってもらっている場合には、重ねて請求できない場合もあります。 

 また、不貞行為は、相手に配偶者がいることを知りながら、または知ることができたにもかかわらず肉体関係を持つことが必要です。不倫相手に配偶者はいないと嘘をついていた場合や隠していた場合には請求できません。

 夫が不倫の相手に対して関係をしっこく迫った場合は、不倫の相手に対する慰謝料を請求することが認められないか、非常に低額になります。

 

 既に夫婦関係が破綻していた場合も請求できません。

 

 慰謝料額は不倫の状況、期間、経済力により異なります。100万円~200万円の間が多いといわれています。

 

(2) 不倫相手への請求の方法

 

 性的関係を持ったことを示す手紙やメール、電話の録音、ラブホテルに出入りしている写真、メモなど不貞行為の証拠となるようなものを集め、「内容証明郵便」で慰謝料請求をします。 

 相手が応じなければ、家庭裁判所に「調停」を申し立てます。なお、不倫相手への慰謝料請求は、調停前置主義の適用がないので、直接、地方裁判所に不倫相手への慰謝料請求訴訟を提起することができます。

 

【内容証明を作る際の注意点】 

 具体的な事実、慰謝料請求の根拠、請求する金額等を簡潔に書きます。事実と違うことや想像や推測で書いてはいけません。 

 

8. 請求の時効

 

 慰謝料は時効により3年で消滅します(慰謝料を請求できるのは「離婚後3年以内」です)。財産分与の時効(財産分与を請求できる期間)は、離婚したときから2年です(除斥期間と考えられており、中断はありません)。

 

 後で請求しても払ってもらうのは困難なので離婚時に請求するのがベターです。

 離婚時に放棄してしまった場合は請求できません。

 

 不倫相手への請求は、「不貞行為の相手を知った時から3年」です。 

 不貞行為の時から20年経過すると、時効により慰謝料請求権が消滅します。 

 

9. 慰謝料と税金 

 

 離婚の際に受け取る慰謝料の「金銭給付」については、損害賠償としてなされるものであり贈与ではありません。損害賠償は、社会的に見て妥当な額である限り非課税所得とされています(所得税法9条1項17号)。

 

 ただし、慰謝料代わりに不動産を贈与する場合は、不動産取得税(地方税)が課税されます。

 

 「不動産」を慰謝料で取得した者が所有権移転登記をする場合は、「登録免許税(不動産価格の2%)」が課税されます。