□ 不動産の財産分与は、ローンが残っていると名義変更に銀行の承諾が必要です。
■ 銀行が名義変更を承諾しないことが予めわかっているとき離婚協議書に「銀行が承諾しないときは所有権移転登記はローン完済後に行う」旨記載するなどします。
■ ローンが残っていて銀行が名義変更を承諾するかどうか不明のときは・・・
行政書士は街の身近な法律家
埼玉県行政書士会所属
行政書士渡辺事務所
行政書士・渡邉文雄
文例 1
(ローンが残っていて銀行が名義変更を承諾しないことが予めわかっているとき)
第〇条 甲は乙に下記の不動産を財産分与する。甲は乙に対し、下記不動産につき財産分与を原因とする所有権移転登記手続きをする義務があることを認める。
記
(省略)
2 甲は、第〇条第〇項の住宅ローン債務が完済されたときに、本件不動産につき前記財産分与を原因とする所有権移転登記手続きをする。登記手続き費用は甲の負担とする。
① 所有権移転登記手続きや登記手続きの費用を負担する者を必要に応じ記載します。
② 財産分与した不動産について所有権移転登記をするときには「登録免許税(不動産価格の2%)」が課税されます。「登録免許税をどちらが支払うか」について、あとでもめないよう必要に応じ記載します。
③ マンションの場合は、「所有名義をどうするか、光熱費等管理費・修繕積立金等の支払者および支払い方法」について、必要に応じ記載します。
④ 不動産の財産分与は、ローンが残っていると名義変更に銀行の承諾が必要です。銀行が名義変更を承諾しないことが予めわかっているときは、「銀行が名義変更を承諾しないときは不動産の所有権移転登記は住宅ローン完済後に行う」旨、記載します(*)
* 住宅ローン付きの不動産を財産分与として譲り受けて、自分に名義変更した場合、銀行は、これを根拠に即時残債務全額の返済請求をしたり、抵当権の実行をすることが予想されます。・・・
銀行が承諾しない場合には、所有権移転登記は、ローン債務完済後に行うことの取り決めをする必要があります。(出典:安達敏男・吉川樹士(2017)『第2版 一人でつくれる契約書・内容証明の文例集』日本加除出版.299頁)
② 離婚後も一方が引き続き住む場合は、住宅ローンの負担や固定資産税などの負担を決め、必要に応じ記載します。
文例 2
(ローンが残っていて銀行が名義変更を承諾するかどうか不明のとき)
第1条 甲は、乙に対し、離婚に伴う財産分与として、下記不動産(以下「本件不動産」という。)を給付することとし、当該不動産について財産分与を原因とする所有権移転登記手続きをする義務があることを認める。
記
(省略)
2 甲は、第2条2項の承諾を得ることができたときに、本件不動産について、財産分与を原因とする所有権移転登記手続きをする。なお、登録免許税等登記手続きに関する費用は、乙の負担とする。
3 本件不動産に課せられる固定資産税等の租税公課その他一切の費用は、所有権移転登記のされる日までは甲の負担とし、当該登記日の翌日以降は乙の負担とする。
(住宅ローン債務の返済等)
第2条
本件不動産取得の際、甲が〇〇銀行(取扱店〇〇支店)から借り受けた住宅ローンの残債務については、所有権移転登記が完了した日の属する月の支払分から乙が支払う。
2 甲は、乙に対し、前項の残債務について、支払義務者を乙に変更することを〇〇銀行(取扱店〇〇支店)と交渉することを約束する。
3 乙が残債務を引き受けることについて銀行が承諾しない場合は、甲と乙は共同して、本件不動産について所有権移転請求権保全の仮登記をするものとし、乙が本件住宅ローンを完済したときに、甲は、第1条第1項に定める所有権移転登記手続きをするものとする。
4 前項の場合、第1項に定める残債務の支払いについては、所有権移転請求権保全の仮登記手続きが済んだ月の支払分から、甲に代位して、乙が支払うこととする。
(参考:安達敏男・吉川樹士(2017)『第2版 一人でつくれる契約書・内容証明の文例集』日本加除出版.307-309頁)