□ 遺言信託(遺言による信託)とは遺言により信託を設定することです。すなわち、遺言で受託者が受益者のために遺言者の財産を管理・給付・処分をすべき旨の信託を設定することができます。
□ 遺言信託(遺言による信託)によって、自分の死後、受託者(親族または第三者)から、受益者(配偶者等)に、生活費や看護療養費等を計画的に給付してもらうことができます。
□ 遺言信託(遺言による信託)で「後継ぎ遺贈型受益者連続型信託」を設定することができます。
行政書士は街の身近な法律家
埼玉県行政書士会所属
行政書士渡辺事務所
行政書士・渡邉文雄
1. 遺言信託(遺言による信託)とは
遺言信託(遺言による信託)とは、遺言により信託を設定することであり、自分の死後の財産の管理・運営を親族または第三者に依頼することができます。
遺言信託(遺言による信託)によって、自分の死後、配偶者に生活費や看護療養費等を計画的に給付してもらうことができます。
また、遺言信託(遺言による信託)によって、財産を未成年の子や障がい者等のために管理してもらい、その財産から未成年の子や障がい者等に、定期的に生活費を支給してもらうことができます。
遺言信託(遺言による信託)によって、孫に、大学入学から卒業まで毎年150万円を支給してもらう、ということもできます。
* 信託法第3条 (信託の方法)
信託は、次に掲げる方法のいずれかによってする。
一 (略)
二 特定の者に対し財産の譲渡、担保権の設定その他の財産の処分をする旨並びに当該特定の者が一定の目的に従い財産の管理又は処分及びその他の当該目的の達成のために必要な行為をすべき旨の遺言をする方法
三 (略)
財産管理や受益者の生活支援等は、被相続人の死亡後すみやかに行う必要があります。「遺言信託」は検認の必要がない公正証書遺言が望ましいといえます。
2. 遺言信託(遺言による信託)の効果
遺言信託(遺言による信託)による信託財産の名義は受託者に変更されます。 しかし、信託財産は受託者の固有財産と一緒になるわけではありません。信託財産の管理は受託者が行いますが、受託者の固有財産からは独立し管理運営されます。
3. 受託者(お世話をお願いする相手)
遺言信託(遺言による信託)の受託者には、自分の子どもや兄弟姉妹、甥・姪など、親族の中から堅実で信頼できる人を選任することをおすすめします。(第三者に依頼することもできます。 )
遺言信託(遺言による信託)は、遺言作成前に受託者と信託内容について話し合い、確認しておく必要があります。
4. 受益者(お世話をしてもらう当人)
遺言信託(遺言による信託)の受益者としては、認知症になった配偶者、障害のある子、後妻、内縁の妻などが考えられます。
5. 信託財産(預ける財産)
遺言信託(遺言による信託)の信託財産(預ける財産)としては、不動産、金融資産などがあります。
6. 遺言信託(遺言による信託)で「後継ぎ遺贈型受益者連続型信託」を設定することができる
7. 「遺言信託(遺言による信託)」と「負担付遺贈」の違い
遺言信託(遺言による信託)等「信託制度」では、受託者に課した任務への違反行為に対しては、受益者等は差し止め請求や、解任をすることができます。
一方、「負担付遺贈」では、受遺者が義務を果たさないときは、他の相続人は、期限を定めて履行の催告をしたうえで、裁判所にその負担付遺贈にかかる遺言の取り消しを求めることができます。取り消された場合、対象財産は相続人に帰属します。
参考
□ 信託銀行の財産承継信託
・ 信託銀行の財産承継信託は、信託銀行が財産の管理運用を受託し、被相続人の死後、残された相続人等が安定した生活がおくることができるよう信託財産を管理運用し、収益を受益者に計画的に配分する制度です。
信託銀行の財産承継信託は財産の多い方の利用が多い制度と言われています。