遺言による認知について。

□ 認知は、届出によるほか、遺言によってすることができます。 

□ 内縁関係の夫婦間の子に相続させるためには、認知が必要です。 

□ 子が「成年」のときは、認知は、認知される子本人の承諾が必要です(承諾は、遺言者の死後でもよいとされている)。

□ 死亡した子の認知は、その子に直系卑属があるときに限りすることができます。 

□ 認知届は遺言執行者が提出するので、遺言執行者を必ず指定します。

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埼玉県行政書士会所属

行政書士渡辺事務所

行政書士・渡邉文雄

 

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➤遺言で認知する

胎児の認知

認知する遺言文例

胎児を認知する遺言文例

1. 認知とは

 

  婚外で生まれた子は、父親が、家族の手前もあり、なかなか認知しないのが世の常ですが、認知は父親が役所に認知届を提出する方法のほか、遺言で行うことができます。ただし、口頭や書面による認知は無効です。

 

  婚姻関係にない状態で生まれた子は、非嫡出子(婚外子)として母親の戸籍に入ります。

  認知とは、婚姻関係にない女性が産んだ子を、男性が自分の子として認めることです。自分の子として認めることにより親子関係が発生し、扶養義務が生じます。また、認知された子には、相続する権利が発生します。

 

  認知を受けた非嫡出子(婚外子)の相続分は嫡出子と同じになっています(平成25年9月5日以後に開始した相続について、嫡出でない子(婚外子)の相続分も嫡出子と同等になった)。

  ただし、認知をしていない非嫡出子(婚外子)に相続権はありません。

 

  認知には、父親が自ら進んで自分の子であることを認める「任意認知」と家庭裁判所の審判による「裁判認知」があります。

  認知の訴えができる期間は父親の死後に3年以内です。 

 

  認知をする者が、未成年者、成年被後見人であっても、法定代理人の同意を要しません。

 

(特別養子となった子の認知)

 

 特別養子となった子については、認知することはできないとされています。(出典:日本公証人連合会(2017)『 新版 証書の作成と文例 遺言編[改訂版]』立花書房.176頁)

 

2. 任意認知と遺言認知

 

(1) 任意認知

 

  任意認知するには、父親が「認知届」を、住所地又は本籍地の役場に提出します。認知届に必要なものは、戸籍謄本と印鑑です。

 

  認知届は成人してからでもできます。(母親の本籍地の役場等に提出します)。子が「成年」のときは、認知される子本人の承諾が必要です。 

 

  死亡した子の認知は、その子に直系卑属があるときに限りすることができます(直系卑属が成年であるときはその承諾が必要です)。

 

(2) 遺言で認知

 

  認知は、届出によるほか、遺言によってすることができます。

 

  遺言で認知するときは、次の点に注意し遺言書を作成します。

 

① 認知される子の特定方法

 

  子を認知する遺言 の「認知される子」の場合は、例えば、「本籍:〇〇県〇〇市 〇〇 〇丁目〇〇番地 氏名:〇〇〇〇(令和△△年△月△日生)」と記載し特定します。

 

  一般に、身分関係のない者を特定する場合は、氏名、生年月日、住所(住民登録上)で特定しますが、認知の手続きに必要なので、認知する子の本籍、戸籍筆頭者及び母親の氏名等についても書くことをお勧めします 。  

 

② 遺言執行者を必ず指定

 

  遺言執行者が認知届を提出する(※)ので、遺言執行者を必ず指定します遺言執行者をきちんと決めておけば、遺言による認知は確実に実行されます。 

 

※ 遺言執行者は就任の日から10日以内に、認知届を提出しなければならない

 

③ 子が「成年」のときは、認知は、認知される子本人の承諾が必要

 

  子が「成年」のときは、認知は、認知される子本人の承諾が必要です。「承諾」は、遺言者の死後でもよいとされています。同意を得る際には本籍を確認する必要があります。

 

④ 死亡した子の認知

 

  死亡した子も、その直系卑属があるときに限り、認知できます。(ただし、遺言執行者が認知届出を提出する際、直系卑属が成年であるときはその承諾書を添付する必要があります) 。

 

⑤ 非嫡出子(婚外子)の相続権

 

  平成25年9月5日以後に開始した相続については、嫡出でない子の相続分も嫡出子と同等になりました。ただし、認知をしていない非嫡出子(婚外子)に相続権はありません。 

 

⑥ 遺言で認知する子の相続分

 

  認知した子については きょうだい として認めたくない人もいます。  トラブルが予想される場合は、遺言で認知する子の相続分については法定相続分を相続させるつもりであっても遺言で明示しておくことをおすすめします。

 

3. 認知と戸籍

 

(1)認知された子が「父の姓を名乗る」

 

  認知届を提出しても、子の戸籍は母親の戸籍のままです。認知された子が父の姓を名乗るためには、家庭裁判所に「子の氏変更許可申立書」を提出して許可審判書をとり、市区町村に「入籍届」を提出することが必要です。 

 

(2)遺言による認知と戸籍 

 

  遺言による認知があると、遺言執行者が認知届を提出することにより、戸籍の身分事項欄に認知の記載がなされます。また、認知者氏名の父親の氏名の頭に「亡」がつきます。

 

(3)準正

 

  認知したあとで父親が母親と結婚すると、非嫡出子は嫡出子になります。 

 

 4. 認知の訴えができる期間

 

  認知の訴えができる期間は父親の死後3年以内です。認知されると、相続人に対し、相続分に相当する金銭の支払いを請求できます。

 


ポイ ント 一口豆知識~強制認知~

 父親の意思に反して親子関係を確定させるには、子又はその法定代理人が、父親の住所地等の家庭裁判所に認知の調停を申し立てます。

 必要なものは、「家事調停申立書」、父親と子の戸籍謄本等です。


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