① 未成年後見人の指定
離婚や配偶者の死亡等によって単独親権者になった者は、遺言で、未成年後見人(未成年の子の後見人)を指定することができます。
② 未成年後見監督人の指定
未成年後見人を指定することができる者は、未成年後見人の権限が多岐にわたることから、遺言で、未成年後見監督人を指定することができます。
③ 財産管理のみの未成年後見人の指定
財産管理権を持っている者は、遺言で、財産管理のみの未成年後見人を指定することができます。
※ 未成年後見人、未成年後見監督人及び財産管理のみの未成年後見人の指定ができるのは、いずれも、例えば母親だけが親権者である場合など、最後に親権を行う者であり、かつ、財産管理権を有する場合のみです。
※ 親権者となった親が死亡したとしても、もう一方の存命している親が親権者に復活することはありません。その場合は、未成年後見が開始となります。ただし、存命している親が家庭裁判所に親権者変更の申し立てを行うことができます。
1. 未成年後見人
未成年後見人とは未成年者の法定代理人であり、親権者と同じ権利義務を有します。
未成年後見人は未成年者の監護養育、財産管理、契約等の法律行為などを行います。
2. 遺言による未成年後見人の指定
離婚や配偶者の死亡等によって単独親権者になった場合や、はじめから親権者が一人しかいないときは、遺言で、未成年後見人(未成年の子の後見人)を指定することができます。
未成年後見人の指定は遺言でのみすることができます。
遺言で、未成年後見人、未成年後見監督人若しくは財産管理のみの未成年後見人の指定ができるのは、いずれも、例えば母親だけが親権者である場合など、最後に親権を行う者であり、かつ、財産管理権を有する場合のみです。
民法839条(未成年後見人の指定)
1. 未成年者に対して最後に親権を行う者は、遺言で、未成年後見人を指定することができる。ただし、管理権を有しない者は、この限りでない。
2. 親権を行う父母の一方が管理権を有しないときは、他の一方は、前項の規定により未成年後見人の指定をすることができる。
ひとり親の場合など、自分が死んだら未成年の子の親権者となるべき人がいなくなってしまう場合は、遺言で、未成年後見人を指定しておくことをおすすめします。(ただし、もう一方の親がいるときは、その親は家庭裁判所に親権者変更の申し立てを行うことができます。)
3. 未成年後見人を複数指定することができる、未成年後見人に法人を指定することができる
未成年後見人は複数選任することができます。また、法人を選任することもできます。
民法旧842条では、未成年後見人は1人でなければならない、としていましたが、「民法等の一部を改正する法律」(平成23年法律第61号、平成24年4月1日施行)で民法の同条が削除され、未成年後見人を複数選任することが可能になりました。また、同改正により、未成年後見人が複数人ある場合の権限行使方法や、それに対して何らかの法律関係にある第三者の意思表示の方法について規定されました(民法857条の2)。
民法857条の2(未成年後見人が数人ある場合の権限の行使等)
1. 未成年後見人が数人あるときは、共同してその権限を行使する。
2. 未成年後見人が数人あるときは、家庭裁判所は、職権で、その一部の者について、財産に関する権限のみを行使すべきことを定めることができる。
3. 未成年後見人が数人あるときは、家庭裁判所は、職権で、財産に関する権限について、各未成年後見人が単独で又は数人の未成年後見人が事務を分掌して、その権限を行使すべきことを定めることができる。
4. 家庭裁判所は、職権で、前二項の規定による定めを取り消すことができる。
5. 未成年後見人が数人あるときは、第三者の意思表示は、その一人に対してすれば足りる。
民法840条(未成年後見人の選任)
3. 未成年後見人を選任するには、未成年被後見人の年齢、心身の状態並びに生活及び財産の状況、未成年後見人となる者の職業及び経歴並びに未成年被後見人との利害関係の有無(未成年後見人となる者が法人であるときは、その事業の種類及び内容並びにその法人及びその代表者と未成年被後見人との利害関係の有無)、未成年被後見人の意見その他一切の事情を考慮しなければならない。
4. 未成年後見人が遺言で指定されていないとき
未成年後見人は、親権者の遺言で指定されていなければ、親族や利害関係者の請求によって家庭裁判所が選任します。
5. 未成年後見人の欠格事由
民法第847条(後見人の欠格事由)
次に掲げる者は、後見人となることができない。
一 未成年者
二 家庭裁判所で免ぜられた法定代理人、保佐人又は補助人
三 破産者
四 被後見人に対して訴訟をし、又はした者並びにその配偶者及び直系血族
五 行方の知れない者
6. 未成年後見監督人の指定
未成年後見人の権限が多岐にわたることから、その監視者を設けることができます。 この監視者のことを「未成年後見監督人」と言います。
未成年後見人を指定することができる者は未成年後見監督人を指定することができます。未成年後見監督人の指定も遺言でのみ可能です。
未成年後見監督人も複数を選任することができます。
未成年後見監督人は必ず置かなければならないものではなく、未成年後見監督人が遺言で指定される例は稀といわれています。
民法848条(未成年後見監督人の指定)
未成年後見人を指定することができる者は、遺言で、未成年後見監督人を指定することができる。
7 財産管理のみの未成年後見人の指定
財産管理権を持っている者は、遺言で、「財産管理のみの未成年後見人」を指定することができます。 財産管理のみの未成年後見人の指定も遺言でのみ可能です。
8. 停止条件付未成年後見人の指定(離婚裁判中に未成年後見人の指定をする場合)
前述したとおり、未成年後見人の指定は、離婚や配偶者の死亡等によって単独親権者になった場合や、はじめから親権者が一人しかいないときに、単独親権者になった者が遺言ですることができる、とされています。
離婚裁判中については、まだ単独親権者になってはいないので、この時点で未成年後見人を指定する遺言をする場合は、停止条件付未成年後見人の指定を行うことになります。
停止条件付未成年後見人の指定は、未成年後見人の指定を、一定の条件の成就(単独親権者になっていること)にかからしめる形式のものです。
なお、離婚裁判中又は離婚不成立確定後に遺言者が死亡した場合は、未成年後見人の指定に関する遺言条項は、条件不成立(単独親権者にならなかったこと)により無効となります。
9. 離婚後、親権者になっていた者が亡くなったらどうなるか
離婚後に親権者になっていた親が死亡しても、もう一方の存命している親が親権者に復活することはありません。
離婚後に親権者になった親の遺言で未成年後見人が指定されていればその者がなり、指定されていなければ、子の親族や利害関係者の請求によって、家庭裁判所が後見人を選任することになります。
ただし、もう一方の存命している親は、家庭裁判所に親権者変更の申し立てを行うことができます。
なお、単独親権者の養親が死亡し、実父母が生存する場合も同様です。
民法837条(親権又は管理権の辞任及び回復)
1. 親権を行う父又は母は、やむを得ない事由があるときは、家庭裁判所の許可を得て、親権又は管理権を辞することができる。
2. 前項の事由が消滅したときは、父又は母は、家庭裁判所の許可を得て、親権又は管理権を回復することができる。
民法838条(後見の開始)
後見は、次に掲げる場合に開始する。
一 未成年者に対して親権を行う者がないとき、又は親権を行う者が管理権を有しないとき。
二 後見開始の審判があったとき。
10. 家庭裁判所による未成年後見人の選任
親権者の死亡等のため未成年者に対し親権を行う者がいなくなった場合は、家庭裁判所は、申立てにより、未成年後見人を選任します。
民法840条(未成年後見人の選任)
1. 前条の規定により未成年後見人となるべき者がないときは、家庭裁判所は、未成年被後見人又はその親族その他の利害関係人の請求によって、未成年後見人を選任する。未成年後見人が欠けたときも、同様とする。
2.未成年後見人がある場合においても、家庭裁判所は、必要があると認めるときは、前項に規定する者若しくは未成年後見人の請求により又は職権で、更に未成年後見人を選任することができる。
3.未成年後見人を選任するには、未成年被後見人の年齢、心身の状態並びに生活及び財産の状況、未成年後見人となる者の職業及び経歴並びに未成年被後見人との利害関係の有無(未成年後見人となる者が法人であるときは、その事業の種類及び内容並びにその法人及びその代表者と未成年被後見人との利害関係の有無)、未成年被後見人の意見その他一切の事情を考慮しなければならない。
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