□ 夫婦だけで子どもがいない場合、配偶者がすべて相続できると思っていませんか?親等が亡くなっている場合、配偶者は4分の3で、きょうだいに4分の1いきます。配偶者が相続した4分の3についても、配偶者の死後、配偶者の親等が亡くなっているときは、何も世話になっていない?配偶者の きょうだいのところに行ってしまいます。
□ 相続人は配偶者と「きょうだい」のケースで、財産は全て配偶者にあげたいときは、必ず遺言書を書いてください。そうしないと、きょうだいに4分の1いき、自宅を売却しなければならないことにもなりかねません。
行政書士は街の身近な法律家
埼玉県行政書士会所属
行政書士渡辺事務所
行政書士・渡邉文雄
必ず遺言書を作成すべきケース
□ 子どもがいない、法定相続人がいない
・「夫婦の間に子がいない」、相続人は配偶者と自分のきょうだい
・「独身で子がいない」、きょうだいは既に亡くなり、甥や姪(代襲相続人)がいる
□ 結婚、離婚、再婚、死別
・ 妻を籍に入れていない
・ 別居し離婚状態の配偶者がいる
・ 妻は既に亡くなり、子どもが何人かいる
・「再婚」し、後妻(夫)の子と先妻(夫)の子がいる
□ 相続人以外に財産をあげたい
・ 相続権の無い孫に財産をあげたい (「遺贈」)
・ 相続権の無いきょうだいに財産をあげたい (「遺贈」)
・ 亡くなった長男の嫁に世話になった (「遺贈」「特別寄与料」)
□ 法定相続割合以外で財産を分けたい
・ 妻に財産をすべてあげたい
・ 認知していない子にも財産をあげたい
・ 相続人のうちの一人だけが面倒を見てくれた(「寄与分」)
・「生前贈与」、「特別受益」がある
□ 妻が認知症のおそれがある
相続時、遺産分割協議の内容を理解できない重度の認知症の場合、
成年後見人の選任が必要になります。
□ 子(息子・娘)が先に亡くなり、孫(代襲相続人)がいる
□ 「認知」した子がいる
□ ひとり親、未成年の子がいる
□ 障害のある子がいる
□ 同居の子と別居の子がいる
□ 相続人が多い。
□ 相続人同士が離れ離れに住んでいる。
□ 相続人同士普段あまり会っていない(疎遠)。
□ 海外に住んでいる相続人がいる
□ 被相続人が80~90歳代で相続人が70歳代。
□ 行方不明の相続人がいる
□ 相続人(資格者)がいない
□ 相続させたくない相続人がいる(「相続人廃除」)
□ 家業を継ぐ者に特定の財産を承継させたい(「事業承継」)
□ 遺産は自宅兼店舗しかない、売るわけにはいかない (「事業承継」)
□ 相続財差が土地と中古住宅
□ 遺産に多くの不動産がある
□ 遺産が不動産だけ
□ 地代をもらっている
□ 共有になっている土地がある
□ 担保に入れている不動産がある
□ 借金がある。連帯保証人になっている
□ 相続人が「同居」、または貸している(「使用貸借」)不動産がある
□ 遺言を書いたあと家を建て替えた
□ 相続税が高そう
□ ペットの面倒を見てほしい
1. 子どものいないおひとりさまの場合(相続人がいない財産は国庫に帰属します)
子どものいないおひとりさまの場合、①親や祖父母など直系尊属が生きていればそこに、②それも亡くなっていたら、きょうだいに、③きょうだい が亡くなっていたら、甥・姪が相続します。
「きょうだい」や甥・姪には遺留分はありません。遺言書で財産は自由に処分できます。
日頃の交流の無い甥・姪に財産を渡すよりも、世話になった知人にあげたいときは、遺言で遺贈しますが、その場合、あらかじめ自分の意志を伝えて了解を得、遺言執行人に指定しておきましょう。
相続人が分らないときは財産は国庫に帰属しますが、遺言で「特別縁故者」に財産をのこすことができます。
相続人がいなくても、亡くなった後の整理や葬儀のことなど遺言は必要です。
亡くなった後の整理や葬儀のことをやってもらうことを条件に遺産の一部をあげることができます(「負担付遺贈」の遺言)。
なお、亡くなった後の整理や葬儀のことは 》 》死後の事務委任契約 を結んでおくけば確実です。また、認知症などに備え 》 》任意後見契約 を結び介護や財産管理を頼んでおくと安心です。
2. 子どもがいない夫婦
夫婦だけで子どもがいない場合、配偶者がすべて相続できると思っていませんか?
親等が亡くなっているときは、配偶者に4分の3、きょうだいに4分の1いきます。
配偶者が相続した4分の3は、配偶者の死後、配偶者の親等が亡くなっているときは、何も世話になっていない配偶者の きょうだい のところに行ってしまいます。(※)
義父母や夫のきょうだい等に遺産分割を要求され、住む家がなくなるのも困ります。
子どもがいない夫婦は、互いに「全財産を配偶者に相続させる」遺言書を書きましょう。
なお、遺言を遺しておけば、配偶者の きょうだい とは話し合うことなく相続の手続きができます。
※ 後継ぎ遺贈型遺言信託により、例えば、「自宅の敷地と建物を妻に相続させるが、妻が死亡したら〇〇が受け継ぐこととする」といったように「順次財産を受け継ぐ者を指定する遺言」をすることができるようになりました。
3. 妻を籍に入れていない
事実婚や夫婦別姓の場合、妻に相続権はありません。子どもに遺産分割を求められ、家に住み続けることができなくなる恐れがあります。あるいは、甥や姪から「正当に」遺産分割を要求され、同様の事態になる恐れがあります。
4. 妻は既に亡くなった、複数の子がいる
相続でもめるのは、親の重しがなくなったときです。遺言を書き、遺産分割でのもめ事をあらかじめ防いておきます。
5. 息子が先に亡くなった。息子の孫と他の子がいる
子と孫(代襲相続人)は対等の立場で遺産分割協議をしても上手くいかないと言われます。遺言で被相続人の意思を明示してあげる必要があります。
6. こどもがいない、きょうだいは既に亡くなっており、甥・姪がいる
遺言により、遺産分割協議が複雑化するのを防ぐことができます。甥・姪(代襲相続人)の相続の余地をなくする遺言を書きます( 甥・姪(代襲相続人)に遺留分はありません)。
7. 同居の子と別居の子がいる
土地・建物は同居して世話をしてくれた子に相続させ、別居の子には預金を相続させます。なお、それでは別居の子の相続分が不足する場合は代償金でバランスをとります(代償金がないときは付言事項に理由を明記します)。
きょうだい は対等の立場で遺産分割協議をしても上手くいかないと言われます。遺言で親の意思を明示しておく必要があります。
8. 認知した子がいる
認知された子については きょうだい として認めたくないという人もいるといわれます。トラブルを避けるため、遺言で財産の相続を明示しておきます。
9. 再婚。相続人は後妻とその子及び先妻の子
義理の親子の関係は微妙なところがあります。被相続人が亡くなった後のことを想像し、遺言で財産の相続を明示しておきます。後妻の子は、後妻の死後、後妻が夫から相続する財産を相続することを考慮し、先妻の子と後妻の子の相続分を実質的に公平にします。また、遺言で遺言執行者に後妻に指定しておきます。
再婚。後妻が先妻の子に自分の固有財産(相続した実家)は渡したくない
10. 相続人が多い、相続人同士の関係がうまくいっていない、相続人同士が離れ離れに住んでいる、普段あまり会っていない
相続人同士のコミュニケーションが希薄になっていると、相続のトラブルが起きやすく、遺産分割協議がまとまりにくくなります。
11. 推定相続人に認知症の人がいる、またはそのおそれがある
相続時、遺産分割協議の内容を理解できない重度の認知症の場合、成年後見人の選任が必要になります。
認知症と診断されると、相続に伴う預金の払い戻しを請求しても、原則として、「後見人」がいないと金融機関は応じてくれません。家庭裁判所に後見人の選任の申し立てを行う必要があります。しかし、遺言執行者を指定しておけば、その心配はありません。
遺言で、自分の死後、認知症、またはそのおそれがある人のお世話をお願いする 方法として、① 財産を、信頼できる人に「遺贈」(あるいは「死因贈与」)し、お世話をお願いする。② 「遺言信託」し、生活費や看護療養費等を給付してもらう。の2方法があります。
12. ひとり親で未成年の相続人がいる
未成年者については、遺産分割協議に「法定代理人」の参加が必要です。通常、親権者が代理人となります。親権者もまた相続人のときは、「特別代理人」が必要となります。家庭裁判所に特別代理人選任の申し立てを行い、特別代理人を含めて遺産分割協議を行う必要があります。
ひとり親の場合など、自分の死後、未成年者の親となるべき人がいなくなってしまう場合は、「未成年後見人」を遺言で指定しておきます。
13. 海外等遠くに住んでいる相続人がいる
海外等遠くに住んでいる相続人がいる方は、電話等で協議を行い、合意した遺産分割協議書を送って署名押印してもらう方法があります。海外に住んでいる場合は印鑑証明書は居住国の公証人からサイン証明をもらい印鑑証明書に代えます。
海外等遠くに住んでいる相続人がいると遺産分割協議が大変です。遺言をしておけば遺産分割協議は不要となり、相続手続きがスムーズに運びます。
14. 行方不明の相続人がいる(遺産分割に支障がでます)
行方不明者も法定相続人です。遺産分割協議をするには家庭裁判所に申し出て相続財産管理人を選任してもらい、その相続財産管理人の参加を得て行う必要があります。
相続財産管理人選任には、相続財産が少ない場合は、申し立て費用とは別に予納金(相続財産管理人選任等の費用)が数十万円~100万円程度必要です。
行方不明者がいる場合は、遺言に行方不明者の取り分を明記し、行方不明者に子がいるときはその子に遺贈するなどしておけば、遺産分割に支障がでるのを防ぐことができます。
15. 相続させたくない相続人がいる
相続人廃除は、遺言によって行うこともできます。
16. 遺産に多くの不動産がある。
誰でも条件のいい物件が欲しいものです。話し合いでは中々まとまりません。遺言が必要です。
17. 遺産も多いが借金も多い
「債務、連帯保証人の相続」については、その存在等を必要に応じ遺言に書いておきます。
債務については、「遺言による相続分の指定の債務」については、可分債務について負担割合を指定しても、債権者は拘束されません。遺言の指定に従って請求することも、法定相続分に応じて請求することもできます。
18. 主な遺産は不動産(自宅)
遺産の不動産(自宅)は住み続けなければならない人がいる場合、各相続人で共有することになります。しかし、そこに住まない相続人は納得できない場合があります。相続がもめる恐れがあります。対策を考えた遺言書が必要です。
19. 遺産は自宅兼店舗しかなく売るわけにはいかない
主な遺産が家業の事業基盤(自宅兼店舗あるいは農地)の場合、他の相続人に遺産分割を要求されると後継者が事業を承継するのが難しくなります。
遺言で後継者に自宅兼店舗あるいは、株券、農地など家業の事業基盤を一括して与え代償金を手当てするなどして家業を継続させることが必要です。後継者の配偶者を養子にしておくことも相続対策として有効です。
中小企業の経営の承継の円滑化に関する法律により、遺留分に関する民法の特例制度が創設されました。遺留分権利者の合意と一定の手続きにより、後継者に贈与された自社株式及び一定の財産について遺留分算定の基礎財産から除外することができます。
民法改正(30.7.13公布)
現行では、遺留分減殺請求は、遺留分侵害の現物でしか返還を求めることができませんでした。また、遺留分減殺請求によって遺贈が無効となり、共有関係が当然に生ずることとされていることから、不動産の場合、共有不動産にするしかありませんでした。これらによって事業継承に支障が出ることがありました。
これを回避するため遺留分減殺請求によって生ずる権利は金銭債権とされ、現物ではなく金銭で支払うことができるようになります。事業承継の場合の自社株については、現物ではなく金銭で支払うことができるようになります。(施行は2019年7月1日)
民法改正により、改正前は、「相続させる」旨の遺言による不動産の贈与については、登記をしなくても第三者に対抗できるとされていましたが、改正後は、法定相続分を超える部分については登記をしなければ第三者に対抗できないこととなりました。
その結果、次のような問題が生ずる恐れがあります。
① 不動産を事業承継者に単独で相続させる旨の遺言をしても、他の相続人が自分の法定相続分相当持分を先に登記し善意の第三者に売却してしまうと、事業承継者は第三者に対抗できなくなる。
② 他の相続人の債権者が、事業承継者の登記が未了の間に、他の相続人の法定相続分相当持分に対し債権者代位によって登記を行い仮差押えを行ってしまうと、事業承継者は対抗できなくなる。
20. 遺言に家を相続させると書いたが、建て替えた
遺言に家を相続させると書いたが建て替えたときは、遺言書の作り直しが必要です。
21. 生前贈与、特別受益がある
遺産の前渡しとしての生前贈与は遺言で明示しておきましょう。誰に何を(いくら)生前贈与したか、持ち戻し免除をするのかしないのかを遺言で明示しておけば、遺産分割が容易になります。
22. 妻に財産をすべてあげたい
主な財産が住んでいる自宅で、夫が亡くなった後も妻がそこに住むときは、遺留分を侵害することもやむをえません(法律では遺留分を侵害してはならないと定めているわけではありません。遺留分減殺請求ができるということにとどまります)。
ただし、「遺言書の付言」に具体的な理由を書くなどし、遺留分減殺請求が起こらないような配慮をしておくことが重要です。妻からの二次相続について妻に遺言書を用意させるなど対策を講じておくことが重要です。
民法改正(30.7.13公布)により、
①「配偶者居住権」が創設されました。「配偶者居住権」とは、配偶者が相続開始のときに住んでいる建物に、亡くなるまで無償で住み続けることができる権利です。遺産分割において、自宅は配偶者が「配偶者居住権」を取得して引き続き住み、子どもは負担付所有権を取得する、という分け方ができるようになります。配偶者居住権は遺言で遺贈することもできます。
これまでは、配偶者は、家を相続すると預貯金などはあまり相続できませんでしたが、これからは、住んでいる家を「配偶者居住権」で取得させることによって、配偶者居住権は所有権よりも評価額が低いことから、その分預貯金を多く相続することができます。 合わせて 「配偶者短期居住権」も創設され、配偶者が相続開始の時に居住していた建物に遺産分割が終了する(最低6か月間は保障)まで無償で使用できます。
*:配偶者居住権は相続する権利ではなく、遺言や、遺産分割協議による法定相続人の合意、家庭裁判所による遺産分割の審判によって、被相続人の配偶者が取得する法定債権です。配偶者に一身専属的な権利であり、譲渡はできません。配偶者居住権(長期)では、存続期間が長期間に及ぶことから、第三者対抗要件としての登記が定められています。
(令和2年4月1日施行。改正法は令和2年4月1日以降に開始した相続、遺言による遺贈は遺言書作成日付が令和2年4月1日以降のものについて適用されます。)
②また、結婚期間が20年以上の夫婦間で行った居住用不動産の生前贈与・遺贈については、遺産分割の対象から除かれ、相続時に遺産として計算しなくてもよい(特別受益の持ち戻しをしない)ことになりました(これまでは、相続の時にこれも遺産に加えて相続分を計算する必要があった)。
(令和元年7月1日施行。改正法は元年7月1日以降に行った生前贈与、遺言による遺贈は遺言書作成日付が令和元年7月1日以降のものについて適用されます。)
23. 亡くなった長男の嫁に財産をあげたい( 長男の嫁が介護をしてくれた)
寄与分は遺産分割協議によってのみ決められるものであり、遺言に書いても法的拘束力はありませんが、相続人同士の協議における判断材料となり、 争いを防ぐ心理的効果が期待できます。寄与の内容や経過をできるだけ具体的に記載すればより効果的でしょう。
民法改正により「特別の寄与」制度が設けられ、介護をしてくれた、亡くなった長男の嫁は「特別寄与料」として金銭を請求できるようにようになりました。しかし、遺産分割協議で申し出るのは心理的に負担があり、認められるかどうかも不確実です。
確実に財産をあげたいのであれば、遺言で寄与分を考慮した遺贈をすることをおすすめします。
民法改正前は被相続人の息子の嫁等、相続人以外の親族が被相続人に対し無償の療養看護や労務の提供を行っても「寄与分」の請求はできませんでしたが(ただし、被相続人の息子が存命であれば、その寄与分として請求できた)、民法改正(30.7.13公布)により「特別の寄与」制度が設けられ、「特別寄与料」として金銭を請求できるようにようになりました。具体的には、戸籍上の親族(配偶者、6親等内の血族、3親等内の姻族であり、子の配偶者はこの中に含まれる)が介護してきたときなどが該当します。 (令和元年7月1日施行。改正法は令和元年7月1日以降に開始した相続について適用されます。)
24. 孫に財産をあげたい
未成年の孫に財産をあげたいが、親に管理させたくないときは、遺言中にその旨を明示しておきます。
25. 別居し離婚状態の配偶者がいる
遺産分割協議が困難になります。
ご自分で書かれた遺言書の点検をご希望の方
遺言書の作成サポートをご希望の方