遺産分割方法の指定、遺産分割の実行の指定

 □ 遺産分割の方法には、①相続人一人ひとりに現物で分ける「現物分割」、②不動産の場合にみられますが、相続人の一人が取得し他の相続人には不足分を代償金として金銭で支払う「代償分割」、③相続財産を未分割のまま売却し現金化して分ける「換価分割」土地などを共有にして持ち分で分ける「共有」があります。

 

□ 遺産分割方法の指定とは、「代償分割」「換価分割」「共有」を遺言で指示することです。これらの 遺産分割方法のいずれによるのかを指示するのが、遺産分割方法の指定の本来の意味ですが、どの財産を誰に相続させるかを指示する「遺産分割の実行の指定」 を含むと解されています。

 遺産分割方法の指定は遺言によってのみすることができます(民法908条)。 

民法908条(遺産の分割の方法の指定及び遺産の分割の禁止)

被相続人は、遺言で、遺産の分割の方法を定め、若しくはこれを定めることを第三者に委託し、又は相続開始の時から五年を超えない期間を定めて、遺産の分割を禁ずることができる。


行政書士は街の身近な法律家

埼玉県行政書士会所属

行政書士渡辺事務所

行政書士・渡邉文雄

 

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1. 現物分割

 

 相続人一人ひとりに現物のまま分配する方法です。たとえば、自宅及び現金は妻に、農地は長男にというふうに、一つひとつの財産について取得者を決めます。

 なお、土地を分筆して分ける場合についても現物分割と呼びます。 

 この方法はとても分かりやすい方法ですが、財産の価値がそれぞれ異なるので、法定相続分どおりに分けることが難しく、不公平が出てしまうという欠点があります。

 相続人それぞれに欲しい財産があるや、他人に渡したくない財産がある場合、それぞれの相続分に応じうまく分けられれば最良の方法です。   

 なお、現物分割が原則的な分割方法とされています(民法258条2項)。

 

民法258条(裁判による共有物の分割)

1 共有物の分割について共有者間に協議が調わないときは、その分割を裁判所に請求することができる。

2 前項の場合において、共有物の現物を分割することができないとき、又は分割によってその価格を著しく減少させるおそれがあるときは、裁判所は、その競売を命ずることができる。

 

2. 代償分割 

 

 代償分割は、現物は相続人の一人に取得させ、他の相続人には不足分を代償金として金銭で支払う方法です。 

 相続財産が居住する不動産、農地、事業用不動産の場合はこの方法が適しているケースが多いと言えます。 また、不動産など物理的に切り分けることによって価値が下がってしまう場合もこの方法が適しているケースと言えます。  

 代償分割をするときの不動産の評価額は、分割の協議をする時点の時価(実勢価格)でするのが原則です。

 ただし、現に家族が住みこれからも住み続ける予定の家の敷地の評価は、時価ではなく路線価を基準として財産評価します。理由は売らない限り現金にはならないからです。 

 代償分割は柔軟な分割をすることができますが、その人に代償金を支払う資力があることが必要です。 

 

 不動産などを多めに相続させた相続人に対し、他の相続人に見返りとして現金を払うよう指示する場合は、①代償金を支払うべき者、②代償金を受ける者、③何の代償か、④代償金の金額、⑤支払方法、⑥支払い期限について記載します。 

 

3. 換価分割(価格分割)

 

 換価分割は相続財産を未分割のまま売却して現金で分割する方法です。遺言で換価分割の指示を行うことによって、遺贈の実質的な効果を変えることなく相続手続きや不動産の売却手続きの手間や費用を軽減できます。

 

 換価分割は現物分割が困難であり、代償分割もできない場合はこの方法によります。 

 換価分割は公平に分けることができますが、対象財産に住んでいる人がいる場合は新たに住まいを探さなければなりません。また、処分費用がかることや、売却益に所得税が課せられるなどの欠点があります。  

 

4. 共有(共有分割)

 

 共有(共有分割)は、土地などを共有にし持ち分で分ける方法です。現物分割の一種です。

 自己の所有権である「持分の範囲」であれば、自らの持分を自由に譲渡、処分することができます。また、自らの持分を他の共有者または第三者に売却することも自由です。 

 持ち分を超えた短期の賃貸借契約などの管理行為は、持ち分の過半数で決定します。(民法252条)

 売却、改築、形状変更等の処分・変更行為は共有者全員の同意が必要です。(民法251条)

 共有物への第三者の不法行為に対し交渉することや提訴することなど保存行為は単独でできます。(民法252条但し書き) 

 

 共有(共有分割)した住宅には、相続人全員で合意すれば、相続登記をすることなくそのまま住み続けることができます。ただし、相続登記が済んでいないと売却手続きはできません。 

 

5. 「遺産分割方法の指定」と「遺産分割の実行の指定」

 

 「遺産分割方法の指定」とは、遺言で、「代償分割」「換価分割」「共有」を指示することです。「遺産分割の実行の指定」とは、遺言で、特定の遺産を特定の相続人に取得させる指示をすることをいいます(どの財産を誰に相続させるか指示する)。

 「代償分割」「換価分割」「共有」のいずれによるのかを指示するのが、遺産分割方法の指定の本来の意味ですが、どの財産を誰に相続させるかを指示すること(「遺産分割の実行の指定」)を含むと解されています。

 遺産分割方法の指定は遺言によってのみすることができます(民法908条)。

 

6. 遺産分割方法の指定の遺言と相続させる旨の遺言

 

 遺産分割方法の指定の遺言の場合は、遺産分割協議が成立するまでの間は遺産は相続人による共有の状態になると解される余地があるので、遺産分割協議を経ずに直ちに物権的承継効果を生じさせることを望む場合は、相続させる旨の遺言とするのが明解です。

 

遺言で遺産分割協議によって分割すべきことを明確にしていない場合、直ちに物権的承継効果を生じるか否かが問題になり得るので、いずれの趣旨で遺言するのか明らかになるよう定めるべきである。分割協議を経ずに直ちに物権的承継効果を生じさせることを望む場合には、相続させる旨の遺言とすべきである。(出典;NPO法人 遺言・相続リーガルネットワーク( 2017)『改訂 遺言条項例300&ケース別文例集』日本加除出版.71頁)

 

 

法定相続分の範囲を超えて分割方法が指定される場合もあり、その場合には被相続人による法定相続分と異なる相続分割合の指定(民902条)が含まれているものと解される場合が多いであろう(出典;NPO法人 遺言・相続リーガルネットワーク( 2017)『改訂 遺言条項例300&ケース別文例集』日本加除出版.70頁) 

 

7. 遺産分割方法の指定が必要なケース

 

① 親と、子のうちの一人が同居していて、主な遺産は自宅の土地と建物だけという場合は、遺産分割が難しいケースです。不動産を共有にするのは、後で問題が起きる可能性が高いといわれています。同居している子に自宅の土地建物を相続させ、他の子には法定相続分のお金を払う、代償分割の指定の検討をおすすめします。 

 

➁ 遺産の分割で不動産を共有にした場合、建て替えや持ち分の売却には相続人全員の合意が必要となります。また、その後の相続で共有者はどんどん増えてゆきます。たとえ多少不平等になっても共有は避けるのが無難と言われています。


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