遺贈をするに際し、受遺者に一定の法律上の義務を課すことができる(負担付遺贈)

遺贈に条件(停止条件・解除条件)や期限(始期・終期)を設定することで、遺贈の効力の発生時期や消滅時期を定めることができる

□ 負担付遺贈は、負担の履行がなくても遺贈の効力が生じる。これに対し、停止条件付遺贈は、条件が成就した初めて遺贈の効力が生じる。

□ 停止条件付遺贈は、成就するかどうか未確定な事実が成就したら、遺贈の効力を発生させる。 

□ 解除条件付遺贈は、発生するかどうか不確実な事実が成立したら、遺贈の効力を消滅させる。 

□ 始期付遺贈は、遺言者の死亡により始期付権利を取得させ、期限が到来した時点で完全な権利を取得させます。また、始期付遺贈は、期限が到来しないうちに受遺者が死亡したときは無効となり、その遺贈にかかる財産は相続人に帰属する。 

□ 終期付遺贈は、遺言者の死亡により終期付権利を取得させ、終期が到来したら遺贈の効力は失われ、遺贈の目的物は相続人に帰属する。

 1. 負担付遺贈

 

(1) 負担付遺贈とは

 

 負担付遺贈とは、遺贈をするに際して、受遺者に一定の法律上の義務を課して遺贈することをいいます。 負担付遺贈の規定は相続させる旨の遺言にも準用されます。

 

(負担の内容)

 

 負担の内容の典型例は、受遺者が被相続人から受ける経済的利益の一部を、遺言で指定した者に給付するというものです。

 

 遺贈の目的とは全然関係ない事項を負担の内容とすることもできるとされています。 

 

(負担付き遺贈の例)

 

 負担付き遺贈の例として、「 葬儀費用や遺言執行にかかる費用の負担者とその割合を指定する」「相続税の負担者を指定する」などがあります。 

 また、「配偶者の世話をすること」「配偶者が死亡するまで扶養すること」や「葬儀を執り行うこと」「残されたペットの世話をすること」を負担とすることも可能です。 

 

 

(負担付遺贈の受益者)

 

 負担付遺贈の受益者は、第三者でも、社会公衆でもよいとされています。

 

(負担付遺贈の受遺者の責任)

 

 負担付遺贈を受けた受遺者は、「受遺」財産の価格を超えない限度でその負担を履行すればよい、とされています。 

 

民法1002条(負担付遺贈)

1.負担付遺贈を受けた者は、遺贈の目的の価額を超えない限度においてのみ、負担した義務を履行する責任を負う。

 

(2) 負担付遺贈の放棄

 

 負担付遺贈を受けた受遺者が義務(負担)を履行したくないときは、「遺贈」を放棄することができます。

 受遺者が負担付遺贈を放棄したときは、負担による利益を受けるはずだった者が自ら受遺者になることができます。

 

 相続人全員で協議し、改めて別の人に負担付遺贈を分配し直し、その人に義務(負担)を履行してもらうことも可能です。    

 

負担付き遺贈の受遺者が放棄した場合についての指示)

 

 遺言で、負担付き遺贈の受遺者が放棄した場合についての意思表示をしておくことができます。

 

民法第1002条(負担付遺贈)

2 受遺者が遺贈の放棄をしたときは、負担の利益を受けるべき者は、自ら受遺者となることができる。ただし、遺言者がその遺言に別段の意思を表示したときは、その意思に従う。 

 

(3) 負担付遺贈の取り消し

 

 負担付遺贈の受遺者が、遺贈を放棄しないで義務を果たさない(負担を履行しない)ときは、他の相続人は期限を定めて履行の催告をしたうえで、裁判所にその負担付遺贈にかかる遺言の取り消しを求めることができます。

 この請求は相続人は1人でもできます。 負担付遺贈が取り消された場合は、その負担付遺贈にかかる財産は相続人に帰属します。 

 

 負担付遺贈の負担の不履行による取り消し請求は、負担が履行されないとしたら遺言者は遺贈をしなかったであろうと考えられる場合のみ認められると解されています。

 

民法1027条(負担付遺贈に係る遺言の取消し) 

負担付遺贈を受けた者がその負担した義務を履行しないときは、相続人は、相当の期間を定めてその履行の催告をすることができる。この場合において、その期間内に履行がないときは、その負担付遺贈に係る遺言の取消しを家庭裁判所に請求することができる。

 

(4)負担付き遺贈の目的の価値が減少した場合についての指示

 

 負担付きであげた遺産の価値が、限定承認や遺留分を返せと言う請求などによって減ってしまった場合は、減少割合に応じて負担も減少します。

 ただし、遺言でこれと異なる指示をすることができます。

 

民法第1003条(負担付遺贈の受遺者の免責) 

 負担付遺贈の目的の価額が相続の限定承認又は遺留分回復の訴えによって減少したときは、受遺者は、その減少の割合に応じて、その負担した義務を免れる。ただし、遺言者がその遺言に別段の意思を表示したときは、その意思に従う。

 

(5)特定遺贈で債務を承継させるとき 

 

 特定遺贈の場合は債務を承継しないので、債務を承継させるときは遺言で負担を指定する必要があります。(包括遺贈では、受遺者は遺贈を受けた割合に応じて遺言者の債務を承継します)

 

(6)負担付遺贈と停止条件付遺贈の違い 

 

 負担付遺贈は、負担の履行がなくても遺贈の効力が生じます。これに対し、停止条件付遺贈は、条件が成就した初めて遺贈の効力が生じます。

  

2. 条件付遺贈

 

 (1) 条件付遺贈とは

 

 条件付遺贈とは、遺言による財産の譲渡(遺贈)の効力の発生を、 未確定あるいは不確実な事実の成否にかからしめる形式の遺贈のことをいいます。

 一定の事実が実現したとき(条件が成立したとき)に、遺贈の法的効果(財産の移転)を発生させます。

 条件付遺贈には、停止条件付遺贈と解除条件付遺贈があります。

 

(2) 停止条件付遺贈

 

 停止条件付遺贈とは、遺言による財産の譲渡(遺贈)の効力の発生を、未確定な事実の成就にかからしめる形式の遺贈のことをいいます。(成就するかどうか未確定な事実が成就したら遺贈の効力を発生させる)

 

 遺贈は一般的に被相続人の死亡により効力が発生し財産が移転しますが、停止条件付遺贈の場合には、遺言者の死亡時に、先ず停止条件付権利を取得させ、未確定な事実が成就(条件が成立)した時点で完全な権利を取得させます。 

 例えば、「大学に入学したら遺贈する」と遺言した場合は、受遺者となる者が、被相続人の死亡時にはまだ大学に入学していなければ、大学に入学するまでの間は遺贈の効力は停止(停止条件付権利を取得)し、大学に入学した時点で完全な権利を取得させるととなります。

 なお、遺言者の死亡時に停止条件の不成立が確定しているとき(大学に入学しないことが確定しているとき)は、遺贈は無効となり、その停止条件付遺贈にかかる財産は相続人に帰属します。

 

(3) 解除条件付遺贈 

 

 解除条件付遺贈とは、遺言による財産の譲渡(遺贈)の効力の消滅を、将来、発生するかどうか不確実な事実の成立にかからしめる形式の遺贈です。(発生するかどうか不確実な事実が成立したら遺贈の効力を消滅させる)

 

 遺贈は一般的に被相続人の死亡により効力が発生し財産が移転しますが、解除条件付遺贈の場合は、遺言者の死亡時に解除条件付権利を取得させ、条件が成立したら権利を失わせます。

 例えば、遺言者の息子の嫁に遺贈する場合、「離婚すれば遺贈の効力を失う」と遺言した場合は、息子の嫁は遺言者の死亡時に解除条件付権利を取得しますが、離婚した場合はその時点で権利を失います。

 なお、遺言者の死亡時に解除条件の成立が確定しているとき(離婚することが確定しているとき)は、遺贈は無効で、その財産は相続人に帰属します。

 

 遺言者の死亡以前に解除条件の不成立が確定した場合は条件のない遺贈となります。

 受遺者が条件成就より前に死亡したときは、遺贈の効力に影響はありません。

  

 (民法第131条) 

 条件が法律行為の時に既に成就していた場合において、その条件が停止条件であるときはその法律行為は無条件とし、その条件が解除条件であるときはその法律行為は無効とする。

2 条件が成就しないことが法律行為の時に既に確定していた場合において、その条件が停止条件であるときはその法律行為は無効とし、その条件が解除条件であるときはその法律行為は無条件とする。 

 

3. 期限付遺贈 

 

 (1) 期限付遺贈 とは

 

 遺言の内容に期限を付することが許される場合は、遺言による財産の移転(遺贈)に期限を付けることができます。期限となる事実は、将来到来することの確実なものでなければなりません。

 到来する時期が確実なものを確定期限、到来する時期が不確実なものを不確定期限といいます。

 遺言による財産の移転の効力の発生に期限を付したものを始期付遺贈といい、遺言による財産の移転の効力の消滅に期限を付したものを終期付遺贈といいます。

 

(2) 始期付遺贈

 

 始期付遺贈とは、遺言による財産の譲渡の効力の発生に期限を付した形式の遺贈のことをいいます。

 遺贈は一般的に被相続人の死亡により効力が発生し財産が移転しますが、始期付遺贈の場合には、遺言者の死亡により始期付権利を取得させ、期限が到来した時点で完全な権利を取得させます。期限が到来するまで請求することはできません。

 例えば、「令和〇〇年〇〇月〇〇日に遺贈する」と遺言した場合は、被相続人の死亡時に指定の期日に達していなければ、それまでの間は遺贈の効力は停止し、始期付権利を取得させます。指定の期日に達した時点で完全な権利を取得させるととなります。

 なお、期限が到来しないうちに受遺者が死亡したときは、始期付遺贈は無効となり、その始期付遺贈にかかる財産は相続人に帰属します。 

 

(3) 終期付遺贈

 

 終期付遺贈とは、遺言による財産の譲渡の効力の消滅に期限を付した形式の遺贈のことをいいます。

 遺贈は一般的に被相続人の死亡により効力が発生し財産が移転しますが、終期付遺贈の場合には、遺言者の死亡により終期付権利を取得させ、終期が到来したら遺言による財産の譲渡の効力は失われます。そして、遺贈の目的物は相続人に帰属します。

 

 期限が到来しないうちに受遺者が死亡したときは、遺贈の効力には影響がなく、受遺者の相続人が受遺者としての地位を承継する、と解されています。(出典;NPO法人 遺言・相続リーガルネットワーク( 2017)『改訂 遺言条項例300&ケース別文例集』日本加除出版.164頁)

 


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