補充遺贈(予備的遺贈)とは。

□ 予備的遺言による遺贈を補充遺贈(予備的遺贈)といいます。補充遺贈は、本則(本位的遺言、主位的遺言)の遺贈の失効を停止条件とする停止条件付きの遺贈です。 

□ 遺言で財産を遺贈する相手が、遺言者より前に又は同時に亡くなったときは、遺贈は失効して相続財産に戻りますが、補充遺贈(予備的遺贈)により他の人に遺贈することができます。  

□ 遺贈する相手が先に亡くなったら遺言を書き直せばいいと考えがちですが、認知症になってしまうと書き直すことはできません。(書き直しても無効)

1. 補充遺贈(予備的遺贈)とは

 

  予備的遺言による遺贈を補充遺贈(予備的遺贈)といいます。

  補充遺贈(予備的遺贈)は遺贈の失効(本位的遺言の効力不発生) を停止条件とする、停止条件付きの遺贈と解されています。

  補充遺贈(予備的遺贈)とは、当初予定した財産を与える相手(第一次受遺者)が、➀遺言者より前に又は同時に死亡した場合、あるいは、②相続を放棄する場合、③受遺者が遺贈を放棄する場合等に備え、次の順位の相続させる者又は受遺者(第二次受遺者)を定めておく遺言です。

  補充遺贈(予備的遺贈)で相続分割合の変更を行うこともできます。 

 

  なお、受遺者が先に亡くなったら、その時に遺言を書き直せばいいと考えがちですが、認知症になってしまったら書き直すことはできません。(書き直してもそれは無効です。) 

 

2. 遺言で財産を相続させる(又は遺贈する)とした者が、遺言者より先にまたは同時に死亡した場合について備える補充遺贈

 

   財産を相続させる(又は遺贈する)相手が遺言者より前に又は同時に亡くなった場合は、代襲相続を除き、相続させる(又は遺贈する)は失効し無効となり、相続させる(又は遺贈する)と遺言した財産は相続財産に戻ります(相続人全員で遺産分割協議をやらなければならない。) 

 

  ただし、予備的遺言で、遺言者より先にまたは同時に推定相続人(又は受遺者)が死亡した場合は、次順位の推定相続人(又は第二次受遺者)に相続させる(又は遺贈する)旨を明らかにすることができます。

 

3. 相続放棄又は遺贈放棄について備える補充遺贈

 

  遺言で財産を相続させる(又は遺贈する)とした者が相続を放棄(又は遺贈を放棄)する場合について、目的財産の帰属を定めることができ、次順位の推定相続人等に相続させる(又は遺贈する)旨を明らかにすることができます。   

 

民法994条(受遺者の死亡による遺贈の失効)

1. 遺贈は、遺言者の死亡以前に受遺者が死亡したときは、その効力を生じない。

2. 停止条件付きの遺贈については、受遺者がその条件の成就前に死亡したときも、前項と同様とする。ただし、遺言者がその遺言に別段の意思を表示したときは、その意思に従う

 

民法995条 (遺贈の無効又は失効の場合の財産の帰属)

遺贈が、その効力を生じないとき、又は放棄によってその効力を失ったときは、受遺者が受けるべきであったものは、相続人に帰属する。ただし、遺言者がその遺言に別段の意思を表示したときは、その意思に従う。

 

(特定の財産を相続させる旨の遺言と合わせて、遺言者が当該財産を処分した場合の予備的遺言)

 

(行方不明の相続人に遺産を相続させる場合の予備的遺言)

 

4. 補充遺贈が特に必要なケース   

 

  財産を与える相手が自分より年上、または同年齢の時は、補充遺贈が必要です。   

 

5. 補充遺贈の遺言文例

 

(例1)

第〇条 遺言者は、遺言者の有する下記不動産をA(○○年○○月○○日生)に遺贈する。

2 Aが遺言者より前に又は同時に死亡(※)していた場合は、遺言者は前項の受遺者をB○○○○(○○年○○月○○日生)とする。   

 

(※)「同時に死亡」の部分を入れないと、万が一、この遺言による相続が「AとBが同時に死亡」した相続となった場合にAの相続人全員による遺産分割協議が必要になります。(又は、法定相続分による相続となる)

 

(例2)

第〇条 遺言者は、遺言者の有する下記不動産を妻○○○○(○○年○○月○○日生)に相続させる。

 

2 万が一、妻○○○○が遺言者より前に又は同時に死亡していた場合は、遺言者は前項記載の不動産を遺言者の甥○○○○(○○年○○月○○日生)に遺贈する。 

 

 


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