□ 自筆証書遺言で訂正があるときは、場所を指示し、変更した旨を付記して、特にこれに署名し、かつ、その変更の場所に印を押さなければならないとされています。
□ 自筆証書遺言で加除変更が民法で定める方式を満たしていない場合は、加除変更がなされなかったものとして扱われます。
□ 具体的には、訂正箇所に二重線を引きます。塗りつぶすのはNGです。訂正印を二重線の近くに押します。(文字に重ねて押してもよいがもとの文字を見えなくしてはならない)
□ 訂正したことをよりはっきりさせるため、その行の近くの余白に、削除した文字の数等を書き署名します。 (例)「〇〇字を削除 山田太郎」
□ 秘密証書遺言書の加除変更も同様の方法で行います。
行政書士は街の身近な法律家
埼玉県行政書士会所属
行政書士渡辺事務所
行政書士・渡邉文雄
1. 方法その1(訂正するとき)
① 訂正箇所に二重線を引きます。黒く塗りつぶしたり、修正テープ等で塗りつぶすのはNGです。
↓
② 正しい文言を、横書きの場合その上部、縦書きの場合はその左側に書きます。
↓
③ 訂正印を二重線の近くに押します。(文字に重ねて押してもよいがもとの文字を見えなくしてはならない)
↓
④ 訂正の内容をよりはっきりさせるため、その行の近くの余白に、加えたり削除したりした文字の数等を書き署名します。
(例)「2字を削除4字加入 渡辺春男」
2. 方法その2(加筆するとき)
① その行の加筆箇所に、吹き出し(💬)で加入する内容を書き入れ、加筆した箇所の近くに訂正印を押します。
↓
② 遺言書の最後の余白に訂正内容を書き、署名します。
3. 方法その3(文字数が多く訂正箇所の近くに書ききれないとき)
① 訂正箇所に二重線を引きます。黒く塗りつぶしたり、修正テープ等で塗りつぶすのはNGです。
↓
② その行のある箇所の余白に訂正印を押します。
↓
③ 遺言書の最後の余白に訂正内容を書き、署名します。
(例)「本遺言書○○行目中「A」を「B」と訂正した」 または、「本遺言書○○行目「AB」の二字を削除した」 等
4. 加除・訂正方式に違背がある場合はどうなるか
遺言書の加除変更が民法の方式を満たしていない場合は、加除変更がなされなかったものとして扱われます。
このような加除・訂正方法は厳格すぎることから、判例は、加除・訂正方式に違背があったとしても、明らかに誤記である場合には、その違背は遺言の効力に影響を及ぼさないとしています。(最判昭和52年11月21日家裁月報30巻4号90頁)(安達敏男・吉川樹士(2017)『第2版 一人でつくれる契約書・内容証明の文例集』日本加除出版.320頁)
5. 備考
□ 訂正印は、署名に用いたものを使います。
□ 秘密証書遺言書も同様の方法で訂正します。
□ 訂正例
止め印
契約書や委任状の作成にあたって、文書の記載がここで終わりであることを示し以降の余白に書き加えられることを防ぐため及び、その余白はもともとあった記載が改ざんされ削除されたものではないことを示すため、文書の末尾のすぐ後に印鑑を押したり(止め印)、文末に「以下余白」と記述したり、余白部分に大きく斜線を引くことがあります。
これは慣行として行われているものであり、法律で定められているものではありませんが、改ざん防止に一定の効果が期待できます。