1. 自筆証書遺言は全文及び、日付を自書し、押印する。自書したものをコピーして使用してはならない。
2. 法務局に自筆証書遺言を保管する場合
・ 用紙はA4で片面のみ使用
・ 余白を、上5ミリメートル以上、下10ミリメートル以上、左側20ミリメートル以上、右側5ミリメートル以上空ける
・ 各ページにページ番号を入れる
・ 封入したり、綴じたりしない
3. 表紙、表題(タイトル) 表紙の作成、表題(タイトル)の記載は任意です
4. 本文
① 遺言事項は法律行為別(又は法律行為の種類別)に分けて書く
② 法律行為である遺言事項については、法的拘束力のないものも含め本文に記載し、法律行為以外の遺言事項については、最後に付言として記載する
5. 作成日付は、西暦または元号で、年月日を全てを省略することなく正確に記入する
6. 遺言の末尾に住所を書き、戸籍上の氏名で署名の上、捺印する(住所の記載は任意)
7. 別紙(自書によらない遺産目録)には、各ページに署名と捺印が必要(本文と同じ印鑑)
8. 余分なものは描かない 。法務局に自筆証書遺言を保管する場合は「止め印」「以下余白」はやめる
9. 法務局に自筆証書遺言を保管する場合は綴じない(ホッチキス等で止めない)。 契印もやめる。
10. パソコンにより作成した財産目録や、不動産登記事項証明書又は預貯金通帳のコピー(預貯金通帳のコピーは銀行名、支店名、口座名義、口座番号が記載されていること)を添付する場合は、添付する財産目録等の各ページに、遺言者の自書による署名と捺印をする。
① 自筆証書遺言は封筒に入れ、封をするのが一般的です。
理由は法的な効力があるからということではなく、勝手に読まれないため及び紛失しないためです。
法務局に保管を委託する場合は封入しないで持参します。
② 封筒の表には遺言書と書くのが一般的です。
法律で定められてはいませんが相続人等に分かりやすくするためです。
③ 封筒の裏に「開封せずに家庭裁判所に提出する事」等、注意書きを書いておくと相続人等が誤って開封することを防げます。
なお、印鑑は、封印及び署名捺印の2か所とも、遺言書に捺印したものと同じものを用いる必要があります。
行政書士は街の身近な法律家
埼玉県行政書士会所属
行政書士渡辺事務所
行政書士・渡邉文雄
1. 全文及び、日付を自書し、押印する
自筆証書遺言は全文及び、日付を自書し、押印する必要があります 。その趣旨は、「筆跡によって本人が書いたものであることを判定でき、それ自体で遺言が遺言者の真意に出たものであることを保障することにあります」(最判昭和62.10.8)
日付自書の趣旨は、遺言能力を判断する基準時を明らかにするため、及び複数の遺言書が見つかった場合に、どれが有効かを判断するためです。
なお、自書したものをコピーして使用してはならない。
カーボン紙で複写の方法により記載された場合は、「自書」と認められる(最判平成5.10.019)
民法第968条(自筆証書遺言)
1.自筆証書によって遺言をするには、遺言者が、その全文、日付及び氏名を自書し、これに印を押さなければならない。
2.前項の規定にかかわらず、自筆証書にこれと一体のものとして相続財産(第997条第1項に規定する場合における同項に規定する権利を含む。)の全文又は一部の目録を添付する場合には、その目録については、自書することを要しない。この場合において、遺言者は、その目録の毎葉(自書によらない記載がその両面にある場合にあっては、その両面)に署名し、印を押さなければならない。
3.自筆証書(前項の目録を含む。)中の加除その他の変更は、遺言者が、その場所を指示し、これを変更した旨を付記して特にこれに署名し、かつ、その変更の場所に印を押さなければ、その効力を生じない。
2. 自筆証書遺言の作成に、紙質、用紙の大きさ、筆記用具の制限はありません
紙質、用紙の大きさ、筆記用具の制限はありません。また、縦書き、横書きいずれでも構いません。
ただし、用紙は長期保存に耐える用紙をおすすめします。
かって、洋紙は酸性紙のため20年程度で変色し劣化が始まることが問題となりましたが、現在では中性紙化が進んでいます。コピー機用のPPC上質紙は半数以上が中性紙化されており100年以上もつとも言われています。
筆記用具は、改ざんが容易な鉛筆や消せるボールペンはNGです。黒のボールペン等消えないもので清書してください。
※ 法務局に自筆証書遺言を保管する場合
・ 用紙はA4で片面のみ使用となります。(縦書きでも横書きでもよい。)
・ 余白を、上5ミリメートル以上、下10ミリメートル以上、左側20ミリメートル以上、右側5ミリメートル以上空ける必要があります。
・ 各ページにページ番号を入れます。(余白には何も書かないこと)
・ 封入したり、綴じたりしないで(ホッチキス等で止めない)持っていきます。
3. 表紙、表題(タイトル)
遺言状の表題(タイトル)は、一般に「遺言書」と書きます。表題(タイトル)の記載は任意ですが、遺言であることを明確に示し誤解が生じないために記載するものです。
表紙の作成も任意です。なお、法務局に自筆証書遺言を保管する場合は不要です。
4. 本文
① 遺言事項は法律行為別(又は法律行為の種類別)に分けて書くのが一般的です。
② 付言事項をどこに書くかについて法的な決まりはありませんが、法律行為である遺言事項については、法的拘束力のないものも含めて本文に記載し、法律行為以外の遺言事項については、最後に付言として記載するのが一般的です。
5. 作成日付について
遺言書の作成日付は西暦または元号で書きます。年月日を全てを、省略することなく自書で正確に記入します。
□ 例:2019年3月1日のように具体的な日付を書きます。「2019年3月吉日」等、日にちが特定できない書き方は無効になります。
年月のみで「日」を書く場合は不可(大判大正7.4.1)
6. 住所、氏名、押印について
遺言の末尾に住所を書き、戸籍上の氏名で署名の上、忘れずに捺印します。
住所の記載は任意ですが、相続開始後、遺言の真偽をめぐって紛議になることを避けるため記載する意味合いがあります。ただし、曖昧なときは記載しないこと。
捺印は認印でも有効ですが、相続開始後、遺言の真偽をめぐって紛議になることを避けるため、実印で押印をおすすめします。また、できれば、印鑑証明書を同封しておくこともおすすめです。
なお、最高裁判所は指印による遺言も有効とし、花押による遺言は無効としています。
7. 別紙(自書によらない遺産目録)について
別紙(自書によらない遺産目録)には、各ページに署名と捺印が必要です(本文と同じ印鑑)。
8. 「止め印」「以下余白」について
契約書や委任状の作成にあたって、文書の記載がここで終わりであることを示し、以降の余白に書き加えられることを防ぐため及び、その余白はもともとあった記載が改ざんされ削除されたものではないことを示すため、文書の末尾のすぐ後に印鑑を押したり(止め印)、文末に「以下余白」と記述したり、余白部分に大きく斜線を引くことがあります。
これは慣行として行われているものであり、法律で定められているものではありませんが、改ざん防止に一定の効果が期待できます。
※ 法務局に自筆証書遺言を保管する場合は、「止め印」「以下余白」はやめた方が無難です。
9. 余分なものは描かない
地図やイラストを描くのややめましょう。赤で斜線を引いたものが無効とされた判例もあります。
10. 2枚以上になるとき
遺言書が2枚以上になる場合は、ホッチキス又は糊で長へん綴じにし、見開き部分の中心線上に、2ページにまたがるようにして、一か所、契印を押すのが一般的です。
なお、契印は、その文書が一連のものであり、遺言者以外による追加、差し替えがないことを示す意味がありますが、法的な効力があるということではなく、なくても遺言書の効力に影響はありません。
遺言書が複数枚にわたる場合の契印は法律上の要件ではない。ただし、遺言書の一体性という点で遺言書の効力が問題となる(最判昭和37.5.19)
※ 法務局に自筆証書遺言を保管する場合は綴じないで(ホッチキス等で止めない)持っていきます。 契印はやめた方が無難です。
遺言書が2枚以上になる場合、1枚の紙の両面に書くことについて法的な制約はありません。ちなみに、財産目録をパソコンにより両面印刷で作成する場合は、両面とも署名と押印が必要とされています。
しかしながら、使用する紙質や筆記具等によっては、裏面の文字が表に滲んだり透けたりする恐れがありますので、片面だけにすることをおすすめします。
パソコンにより作成した財産目録や、不動産登記事項証明書又は預貯金通帳のコピー(預貯金通帳のコピーは銀行名、支店名、口座名義、口座番号が記載されていること)を添付する場合は、添付する財産目録等の各ページに、遺言者の自書による署名と捺印がないと無効です。
11. 裁判所の検認
封をした自筆証書遺言は裁判所の検認を受けなければ開封できません。遺言を読めるのは葬儀の後になってしまいます。(検認の申し立てから手続きが完了するまで通常1~1.5か月間を要します)
葬儀の方法、埋葬場所等を書く場合は、書いたことを話しておくか、》 エンディングノート にも書くなどすることをおすすめします。