付言事項(法定外遺言事項)と負担付遺贈。

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埼玉県行政書士会所属

行政書士渡辺事務所

行政書士・渡邉文雄

 

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1. 法定外遺言事項とは 

 

  付言事項は、相続人等に対し、一定の作為又は不作為を求める意思表示を内容とするもの(法定外遺言事項)とそれ以外のもの(狭義の付言事項)とに分けることができます。

 

2. 法定外遺言事項の例  

 

(1) 葬儀についての希望、散骨やお墓に関する依頼

 

① 葬儀・法要の方法を指定

② 散骨の希望、散骨場所、散骨の方法を指定

③ お墓や永代供養の依頼 

 

 

 自筆証書遺言(法務局保管制度利用を含む)は、検認等の関係で内容がわかるのが葬儀後になってしまうことがあるので、葬儀についての希望、散骨やお墓に関することを書いておきたい事情がある場合は、》エンディングノート にも書いておくことをおすすめします。

 

(2) 献体の希望 

 

  献体の希望がある場合に遺言により意思表示することが考えられますが、自筆証書遺言(法務局保管制度を含む)は、内容がわかるのが葬儀後になってしまうので、不適切です。 

 

 

(3) 寄与分の希望

 

  寄与分をあげたい人がいる場合には、遺言により意思表示することが考えられます。 

  ただし、遺言に寄与分を書いても、あくまで付言事項であり、法的拘束力はありません。相続人同士の協議における判断材料にとどまります。

 

  民法改正により「特別の寄与」制度が設けられ、「特別寄与料」として金銭を請求できるようにようになりました。

  しかし、特別寄与料を遺産分割協議で申し出るのは心理的な負担も考えられ、また、認められるかどうかも不確実です。   

 

  確実に財産をあげたいのであれば、遺言で寄与分を考慮した遺贈をすることをおすすめします。  

 

(4) 遺留分遺留分侵害額請求をしないことを希望

 

  遺留分遺留分侵害額請求をしないことを希望する場合は、遺言により意思表示することが考えられます。  ただし、遺言に書いても、あくまで付言事項であり、法的拘束力はありません。   

 

(5) 遺産分割にあたり特別受益を加味しないことを希望 

 

  遺産分割にあたり特別受益を加味しないことを希望する場合は、遺言により意思表示することが考えられます。ただし、遺言に書いても、あくまで付言事項であり、法的拘束力はありません。

 

(6) 相続欠格を宥恕する 

 

  相続欠格を宥恕する ことを希望する場合は、遺言により意思表示することが考えられます。ただし、遺言に書いても、あくまで付言事項であり、法的拘束力はありません。

 

(7) パソコン等デジタル機器の個人情報の処理等の依頼

 

  パソコン等デジタル機器の個人情報の処理等の依頼を希望する場合は、遺言により意思表示することが考えられます。ただし、遺言に書いても、あくまで付言事項であり、法的拘束力はありません。 

 

① SNSのアカウントの削除の依頼 ※パスワード、ID等を別途教えておく必要があります。

② パソコン、携帯電話、スマホのデータ消去の依頼 ※パスワード、ID等を別途教えておく必要があります。

③ メール、ホームページ、ブログの閉鎖の依頼 ※パスワード、ID等を別途教えておく必要があります。

④ インターネットプロバイダーの解約の依頼 ※パスワード、ID等を別途教えておく必要があります。

⑤ ネット銀行口座の解約の依頼 ※IDを教えておく必要があります。パスワードは不要。

⑥ ネット有料サービス解約の依頼  ※パスワード、ID等を別途教えておく必要があります。

 

(8) ペットの世話の依頼 

 

  ペットの世話の依頼を希望する場合は、遺言により意思表示することが考えられます。ただし、遺言に書いても、あくまで付言事項であり、法的拘束力はありません。 

 

(9) 介護に関すること

 

  介護に関すること生前に知らせておかないと実現はできません。

  介護に関することは「任意後見契約公正証書」で決めておくことができます。 

 

(10) 臓器提供に関すること

 

 「臓器提供」に関することには、生前に知らせておかないと実現はできません。臓器提供については「臓器提供に関する公正証書」の形で決めておくことができます。 

 

※ 平成21年の臓器移植法改正により、本人の意思が不明の場合でも、遺族の承諾により臓器移植できることになりました。

 

脳死の診断をされた場合の臓器提供は1997年10月臓器移植法の施行により認められました。当初は、本人の書面による意思表示が必要でしたが、2010年7月の法改正により、家族の承諾のみでできるようになりました。ただし、内閣府が2021年に行った世論調査では、家族として「決断に負担を感じる」と答えた人は85.6%以上に上りました。

 

(出所:読売新聞2024.8.912版12頁)

 

(11) 尊厳死宣言を遺言で行う

 

  尊厳死宣言は遺言者の死亡前に家族等に知らしめる必要があるので、遺言で行うことは不適当です。 

 

 

 尊厳死宣言については、》》尊厳死宣言 をご覧ください。

 

3. 法定外遺言事項と負担付遺贈 

 

  法定外遺言事項は、必ず実行することを遺贈又は相続させる遺言の負担と位置づけることによって、相続人らを法的に拘束することが可能となります。

  ただし、遺贈の場合、受遺者は遺贈を拒否し負担を実行しないことができます。確実に実行してもらうためには、負担付死因贈与契約を結んでおくことが必要です。ほかに信託契約による方法があります。

 

葬儀の方法や散骨、お墓に関する希望は、必ず実行することを遺贈又は相続させる遺言の負担と位置づけることによって、相続人らを法的に拘束することが可能となる(出典:NPO法人 遺言・相続リーガルネットワーク( 2017)『改訂 遺言条項例300&ケース別文例集』日本加除出版.254頁)

 

4. 法定外遺言事項を書く位置 

 

  葬儀についての希望、散骨やお墓に関することなど、相続人等に対し、一定の作為又は不作為を求める意思表示を内容とするもの(法定外遺言事項)は、付言事項ですが、法定遺言事項と合わせて本文中に記載するのが一般的です。 

 

 


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