□ 期限付遺贈は条件付遺贈の一種であり、始期付遺贈は停止条件付遺贈、終期付遺贈は解除条件付遺贈の一種になります。
□ 始期付遺贈は、遺言者の死亡により始期付権利を取得させ、期限が到来した時点で完全な権利を取得させます。期限が到来しないうちに受遺者が死亡したときは無効となり、始期付遺贈にかかる財産は相続人に帰属します。
□ 終期付遺贈は、遺言者の死亡により終期付権利を取得させ、終期が到来したら遺贈の効力は失われ、遺贈の目的物は相続人に帰属します。
1. 期限付遺贈 とは
遺言の内容に期限を付することが許される場合は、遺言による財産の譲渡の効力の発生(所有権等の権利の移転)に期限を付けることができます。
なお、期限となる事実は、将来到来することが確実なものでなければなりません。(到来する時期が確実なものを確定期限、到来する時期が不確実なものを不確定期限という)
遺言による財産の譲渡の効力の発生(所有権等の権利の移転)に期限を付したものを始期付遺贈といい、遺言による財産の譲渡の効力(所有権等の権利の移転)の消滅に期限を付したものを終期付遺贈といいます。
2. 始期付遺贈
始期付遺贈とは、遺言による財産の譲渡の効力の(所有権等の権利の移転)に期限を付した形式の遺贈のことです。
遺贈は一般的に被相続人の死亡により効力が発生し、所有権等の権利が移転しますが、始期付遺贈の場合には、遺言者の死亡により、先ず、始期付権利を取得させ、期限が到来した時点で完全な権利を取得(所有権等の権利の移転)させます。期限が到来するまで請求することはできません。
例えば、「令和〇〇年〇〇月〇〇日に遺贈する」と遺言した場合は、被相続人の死亡時に指定の期日に達していなければ、それまでの間は遺贈の効力は停止し、始期付権利を取得させ、指定の期日に達した時点で完全な権利を取得(所有権等の権利の移転)させます。
なお、期限が到来しないうちに受遺者が死亡したときは、始期付遺贈は無効となり、その始期付遺贈にかかる財産は相続人に帰属します。
民法131条(既成条件)
1.条件が法律行為の時に既に成就していた場合において、その条件が停止条件であるときはその法律行為は無条件とし、その条件が解除条件であるときはその法律行為は無効とする。
2.条件が成就しないことが法律行為の時に既に確定していた場合において、その条件が停止条件であるときはその法律行為は無効とし、その条件が解除条件であるときはその法律行為は無条件とする。
3 前二項に規定する場合において、当事者が条件が成就したこと又は成就しなかったことを知らない間は、第128条及び第129条の規定を準用する。
民法994条(受遺者の死亡による遺贈の失効)
1.遺贈は、遺言者の死亡以前に受遺者が死亡したときは、その効力を生じない。
2.停止条件付きの遺贈については、受遺者がその条件の成就前に死亡したときも、前項と同様とする。ただし、遺言者がその遺言に別段の意思を表示したときは、その意思に従う。
民法995条 (遺贈の無効又は失効の場合の財産の帰属)
遺贈が、その効力を生じないとき、又は放棄によってその効力を失ったときは、受遺者が受けるべきであったものは、相続人に帰属する。ただし、遺言者がその遺言に別段の意思を表示したときは、その意思に従う。
3. 終期付遺贈
終期付遺贈とは、遺言による財産の譲渡の効力の消滅に期限を付した形式の遺贈のことをいいます。
遺贈は一般的に被相続人の死亡により効力が発生し、所有権等の権利が移転しますが、終期付遺贈の場合には、遺言者の死亡により終期付権利を取得させ、終期が到来したら遺言による財産の譲渡の効力は失われます。そして、遺贈の目的物は相続人に帰属します。
期限が到来しないうちに受遺者が死亡したときは、遺贈の効力には影響がなく、受遺者の相続人が受遺者としての地位を承継する、と解されています。(出典;NPO法人 遺言・相続リーガルネットワーク( 2017)『改訂 遺言条項例300&ケース別文例集』日本加除出版.164頁)
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