不動産を相続させる遺言と遺言執行者の指定

行政書士は街の身近な法律家

埼玉県行政書士会所属

行政書士渡辺事務所

行政書士・渡邉文雄

 

似顔絵

ポイント 関連情報

不動産を相続させる(遺贈する)ときの注意点

➤不動産を相続させる遺言と遺言執行者の指定 

1. 相続させる遺言における、所有権移転登記の申請

 

 不動産の登記は、登記権利者(不動産をもらった人)と登記義務者(それ以外の共同相続人)の共同申請で行うのが原則ですが(不動産登記法60条)、相続の場合は、不動産をもらった相続人が(他の共同相続人の協力がなくても)単独で所有権移転登記の申請をすることができます(不動産登記法63条2項)。また、遺言執行者が指定されているときは、遺言執行者が単独ですることができます。

 

2. 相続登記の申請と遺言執行者(平成30年民法改正前と後)

 

 特定の不動産を特定の相続人に相続させる遺言に関しは、平成30年民法改正(2018.7.13公布)前は、相続開始時に、遺産分割協議等何らの行為を要せずして、その遺言どおりに特定の不動産が特定の相続人に承継されると解されることから、遺言執行の余地はなく、遺言執行者には相続登記を申請する代理権限はないとされていました。

 

 平成30年民法改正(2018.7.13公布)により、相続の効力等に関する見直しが行われ、それ以前は、相続させる遺言による不動産は登記をしなくてもその承継を第三者に対抗できるとされていたものが改められ、法定相続分を超える部分については登記をしなければその承継を第三者に対抗できないことなりました(改正の理由は、遺言の有無及び内容を知り得ない相続債権者・債務者等の利益や第三者の取引の安全を確保するため、法定相続分を超える部分については登記をしなければ債務者及び善意の第三者に対抗できないとした)(民法899条の2第1項)。

 

 改正後は、相続開始後、速やかに相続登記をしなければならなくなったことから、同民法改正では、遺言執行者を「相続人の代理とみなす」規定が削除され、遺言執行者は遺言の執行に必要な一切の行為をする権利義務を有することととされ(対抗要件具備を遺言執行者の権限とする改正、民法1014条2項)、その結果、特定の不動産を特定の相続人に相続させる遺言に関して、遺言執行者には相続登記を申請する代理権限があると変更になりました。 

 

民法899条の2(共同相続における権利の承継の対抗要件)

1. 相続による権利の承継は、遺産の分割によるものかどうかにかかわらず、次条及び第901条の規定により算定した相続分を超える部分については、登記、登録その他の対抗要件を備えなければ、第三者に対抗することができない。

2. 前項の権利が債権である場合において、次条及び第901条の規定により算定した相続分を超えて当該債権を承継した共同相続人が当該債権に係る遺言の内容(遺産の分割により当該債権を承継した場合にあっては、当該債権に係る遺産の分割の内容)を明らかにして債務者にその承継の通知をしたときは、共同相続人の全員が債務者に通知をしたものとみなして、同項の規定を適用する。 

 

民法1014条(特定財産に関する遺言の執行)

2. 遺産の分割の方法の指定として遺産に属する特定の財産を共同相続人の一人又は数人に承継させる旨の遺言(以下「特定財産承継遺言」という。)があったときは、遺言執行者は、当該共同相続人が第八百九十九条の二第一項に規定する対抗要件を備えるために必要な行為(*所有権移転登記等)をすることができる。 

4. 前二項の規定にかかわらず、被相続人が遺言で別段の意思を表示したときは、その意思に従う。

 

3. 不動産を「法定相続分を超えて」相続させる遺言は遺言執行者を指定すべし

 

 平成30年民法改正により、法定相続分を超えて不動産を相続した場合、登記をしないと第三者にその承継を対抗できなくなりました(民法899条の2第1項)。

 相続させる遺言については、不動産を承継した相続人は単独で所有権移転登記の申請をすることができますが、不動産を法定相続分を超えて相続させる場合は、相続開始後、速やかに相続登記を行わせるため、遺言執行者を指定することをお勧めします。

 

4. 不動産を遺贈する遺言と遺言執行者の指定(再掲)

 

 相続人以外にあげる場合、受遺者は単独では所有権移転登記の申請はできません。 相続人全員と共同で登記申請する必要があります。 

 なお、遺言執行者が指定されているときは、遺言執行者が単独ですることができます。 

 遺言で相続人以外に不動産をあげる場合は、相続人の協力がなくても登記できるよう、不動産をあげる受遺者等又は第三者を遺言執行者に指定しておくことをおすすめします。  

 

 当該受遺者を遺言執行者に指定した場合、当該遺言執行者は受遺者である自身を代理して遺贈による所有権の移転登記の申請をすることができます(登記先例。大正9年5月4日民事1307号民亊局長回答・先例集(上)454ページ)。

 

(出典:日本行政書士会連合会『 月刊日本行政(2024.2)№.615』.31頁)

 

 


ポイント ご自分で書かれた遺言書の点検をご希望の方

遺言書添削

 

ポイント 遺言書の作成サポートをご希望の方

自筆証書遺言作成サポート(法務局保管制度利用を含みます)

公正証書遺言作成サポート

秘密証書遺言作成サポート