□ 後継ぎ遺贈遺言とは、受遺者が亡くなった後、受遺者の相続人は財産を遺言者の指定する者に移転する(二次遺贈)義務を負わされる負担付遺贈のことです。
行政書士は街の身近な法律家
埼玉県行政書士会所属
行政書士渡辺事務所
行政書士・渡邉文雄
遺 言 書
遺言者〇〇〇〇は、以下のとおり遺言する。
第1条 妻〇〇〇〇(昭和△△年△月△日生)に下記財産を相続させる。その負担として、妻〇〇〇〇が死亡したときは、下記財産を長男〇〇〇〇(昭和△△年△月△日生)に遺贈する。
(1) 土地
所在 〇〇市〇〇町〇〇丁目
地番 〇〇番〇〇
地目 宅地
地積 〇〇〇.〇〇平方メートル
(2) 建物
所在 〇〇市〇〇町〇〇丁目〇〇番地〇〇
家屋番号 〇〇番〇〇
種類 居宅
構造 木造瓦葺二階建
床面積 一階 〇〇.〇〇平方メートル
二階 〇〇.〇〇平方メートル
(3)上記家屋内の遺言者名義の一切の什器、備品
第2条 長男〇〇〇〇(昭和△△年△月△日生)に私名義の次の財産を相続させる。
〇〇株式会社株式(〇〇証券〇〇支店に預託)△△万株
十年利付国債(平成△△年△月発行)額面△△万円(〇〇証券〇〇支店保護預)
投資信託〇〇ファンド(償還日平成△年△月△日)△万口(〇〇銀行〇〇支店預託)
第3条 長女〇〇〇〇(昭和△△年△月△日生)に次の預金債権を相続させる。
〇〇銀行〇〇支店に対する遺言者名義の定期預金(口座番号〇〇〇〇)のうち△△△万円)
第4条 次女〇〇〇〇(昭和△△年△月△日生)に次の預金債権を相続させる
〇〇銀行〇〇支店に対する遺言者名義の定期預金(口座番号〇〇〇〇)のうち△△△万円)
第5条 その他前条記載の財産を除く私の有する一切の財産は、妻○○○○に相続させる。
令和△△年△△月△△日
(遺言者住所)
遺言者 〇〇〇〇 印
ここが遺言(相続)のポイント
□ 文例は、配偶者が亡くなった後、配偶者の相続人は財産を長男に移転しなければならないという義務を負わされる後継ぎ遺贈型遺言(負担付の遺贈)です。
□ 二次遺贈に法的拘束力はないとされています。したがって、実効性を担保するためには、第一次の受遺者に「第二次の受遺者に遺贈する」という内容の遺言を作成してもらうことが必要です。
□ 紛議の余地をなくした遺言をしたい場合は、「後継ぎ遺贈型(受益者連続型)遺言信託をおすすめします。これにより後継ぎ遺贈型遺言(負担付遺贈)と同じ効果が期待できます。
後継ぎ遺贈については、その有効性について確定判例がなく、また、批判的な見解が有力なところであるから、その効力が否定されるおそれがあることに留意されたい。(引用;NPO法人 遺言・相続リーガルネットワーク( 2017)『改訂 遺言条項例300&ケース別文例集』日本加除出版.168頁)
□ 民法改正により、改正前は、「相続させる」旨の遺言による不動産の贈与については、登記をしなくても第三者に対抗できるとされていましたが、改正後は、法定相続分を超える部分については登記をしなければ第三者に対抗できないこととなりました。
その結果、次のような問題が生ずる恐れがあります。
① 不動産を単独で相続させる旨の遺言をしても、他の相続人が自分の法定相続分相当持分を先に登記し善意の第三者に売却してしまうと第三者に対抗できなくなる。
② 他の相続人の債権者が、登記が未了の間に、他の相続人の法定相続分相当持分に対し債権者代位によって登記を行い仮差押えを行ってしまうと対抗できなくなる。
本文例はあくまでも一例です。遺言者のご希望はもとより、推定相続人や遺贈したい人の状況、相続財産の状況などによって遺言文は違ってきます。
あなたのご遺族のあいだに相続争いが起きにくい遺言書、ご遺族が相続手続きをしやすい遺言書、あなたの思いを実現する最適な遺言書の作成を当事務所がお手伝いいたします。