遺産分割の協議で話し合うこと

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埼玉県行政書士会所属

行政書士渡辺事務所

行政書士・渡邉文雄

 

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遺産分割の協議で話し合うこと

 

1. 「一部分割」について

 

 遺産分割は一度に全部分割する(全部分割)するのが原則ですが、相続人全員が合意すれば一部を先に分割(一部分割)することができます。

  

 預貯金など遺産が相続人の生活に欠かせない場合や、一部の遺産を先に売却し債務の支払いに充てなければならないといった事情のある場合は、一部の遺産を先に分割することもできます。ただし、争いの種を残さないためには1回で分割するのがベストです。

 

注意事 項  民法改正(30.7.13公布)により、「預金の仮払制度」が創設され、遺産分割前でも、預金の一定額までは、単独で払い戻せるようになります。

 これまでは、遺産分割協議が調わなければ預貯金を引き出すことはできませんでしたが、これからは、遺産分割前でも、一定額に限り、相続人が単独で払い戻せるようになります。

 払い戻せる金額は、預貯金額×1/3×法定相続分(金融機関ごと、上限150万円)

 (令和元年7月1日施行※相続開始が施行日前であっても適用されます。)

 

2. 「相続分割合」 について

 

 遺言で指定している場合は遺言で指定した相続分となります。(「指定相続」)

 遺言で指定していない場合は、原則として民法の法定相続分に従います。(法定相続)

 ただし、遺言での指定の有無にかかわらず、相続人全員の合意があれば自由に決めることができます。

 また、特定の相続人の相続財産をなしとする遺産分割も有効とされています。

 

3. 「特別受益の持戻について 

 

 生前贈与など遺産の前渡し(特別受益)を受けた相続人については、特別受益の持戻(特別受益を遺産に加え、特別受益者の相続分額から差し引く)をすることができます。 

 

 相続人の受けた生前贈与は、特段の事情のないかぎり、相続開始1年前になされたものに限ることなく、特別受益に該当します。特別受益の存在はあると主張する相続人が立証しなければなりません。

 

 ただし、生前贈与をどこまで特別受益と判断するかは遺産分割協議の中で相続人全員の合意で決めることができます。

 

 被相続人が遺言などで特別受益の持戻を免除する意思表示をしていたときは、遺留分を侵害しない範囲で、特別受益の持戻はしません。

 

 婚姻期間20年以上の夫婦間で住宅や住宅取得資金の贈与が行われた場合には、2千万円まで非課税とする「贈与税の配偶者控除」の特例規定があります。これ適用して贈与した財産は、贈与者の死亡後は、特別受益となりません。 

 

注意事 項 民法改正(2018.7.13公布)により、配偶者の住まいを守るため、結婚20年以上の場合、生前贈与や遺言で自宅を贈与されたときは、遺産分割の対象から除かれることになった(特別受益の持ち戻しをしない)。(生前贈与は令和元年7月1日以降におこなわれたものについて適用。遺贈は遺言書等作成日付が令和元年7月1日以降について適用。)

 改正前は、結婚期間が20年以上の夫婦間で行った居住用不動産の生前贈与・遺贈についても、相続の時にこれも遺産に加えて相続分を計算する必要がありましたが、改正後は、遺産分割の対象から除かれ、相続時に遺産として計算しなくてもよいことになった。

 

□ 詳しくは 》特別受益 、》特別受益の持戻を免除する をご覧ください。  

 

4. 「寄与分」がある場合、その扱いについて 

 

 商売を手伝うなど労務の提供、資金援助、療養看護などを行い、相続財産の増加に貢献した相続人は、寄与分として取り分を増やすことができます。

 また、例えば、「長男の嫁が」義母を献身的に介護した場合は、義母の遺産分割協議にあたって「長男が」嫁の介護を理由に寄与分を主張できます。 

 寄与分の扱いは遺産分割ではありませんが、「寄与分」があるか否か、あるとしたらどれくらいの割合かは、相続人全員の協議によって決めます。 

 

注意事 項 民法改正(2018.7.13公布)により、「特別の寄与」制度が導入されました。改正前は被相続人の息子の嫁等、相続人以外の親族が被相続人に対し無償の療養看護や労務の提供を行っても寄与分の請求はできませんでしたが(被相続人の息子が存命であれば、その寄与分として請求はできた)、改正後は、「特別寄与料」として金銭を請求できるようにようになりました。

 具体的には、戸籍上の親族(配偶者、6親等内の血族、3親等内の姻族(子の配偶者はこの中に含まれる))が介護してきたときなどが該当します。なお、遺産分割協議は、現行と同じく相続人だけで行います。(施行は令和元年7月1日)

 

□ 詳しくは 》寄与分 をご覧ください。

 

5. 「相続放棄」「承認」「限定承認」がある場合、各相続人の意向に基づいて、「財産及び債務の承継者」を確定します

 

 (相続放棄をする相続人がいるとき)

 「相続放棄」をする人がいるときは、繰り上がって相続人となった人が、何も知らずに借金だけ相続するといったことがないよう、第三順位の相続人くらいまで集まってもらいったほうがよいと思います。

 

 (負担付遺贈を受けたが負担を履行したくない場合)

 負担付遺贈を受けたが負担を履行したくない場合は、遺贈を放棄することができます。

 その場合は「負担の利益を受ける者」が自ら受遺者になります。

 ただし、相続人全員で協議して別の人に分配し直し、その人に義務を履行してもらうこともできます。

 

(相続人の一人だけに財産をすべて相続させたいとき) 

 相続人の一人だけに財産をすべて相続させたいときで、被相続人に きょうだい(またはその子) がいるときは、相続放棄の方法をとってはいけません。残りの相続人が全員、相続放棄しても、被相続人の きょうだい のところにも行ってしまいます。

 この場合は「他の相続人がなにも相続しない」という内容の遺産分割協議書を作る方法があります。

 

6. どの財産を誰が相続するか、「現物分割」か「換価分割」か「代償金分割」か「共有分割」にするかなど、財産の分割方法を確定します。 

 

□ 詳しくは、》遺産分割の方法(現物分割、換価分割、代償金分割等)をご覧ください。  

 

7.  債務の負担者を決める 

 

 「債務を受け継ぐ人」や、「相続手続きの費用を誰が負担するか」を決めます。

 借金などの債務は、対債権者の関係では相続開始と同時に法定相続分に従って各相続人に相続され、遺産分割の対象になりません。しかし、相続人間の協議で債務の負担者を決めることはできます 。

 

■ 詳しくは 》債務の相続(承継) をご覧ください。