1. 不動産(共有分割)
下記の不動産は、相続人Aが3分の2、相続人Bが3分の1の共有持分
割合で取得する。
土地
所在 〇〇市〇〇町〇〇丁目
地番 〇〇番〇〇
地目 宅地
地積 〇〇〇.〇〇平方メートル
(私道持分の場合)
土地
所在 〇〇市〇〇町〇〇丁目
地番 〇〇番〇〇
地目 公衆用道路
地積 〇〇〇.〇〇平方メートル
被相続人〇〇〇〇持分 〇〇〇〇〇分の〇
2. 共有分割とは
不動産の所有権を共有にし、不動産の権利を持分で分ける方法で現物分割の一種です。
売却、改築、形状変更等の処分・変更行為は共有者全員の同意が必要です。(民法251条)
自己の所有権である「持分の範囲」であれば、自らの持分を自由に譲渡、処分することができます。また、自らの持分を他の共有者または第三者に売却することも自由です。
持ち分を超えた短期の賃貸借契約などの管理行為は、持分の過半数で決定します。(民法252条)
共有物への第三者の不法行為に対し交渉することや提訴することなど保存行為は単独でできます。(民法252条但し書き)
住宅は相続人全員で合意すれば、相続登記をすることなくそのまま住み続けることができます(※)。ただし、相続登記が済んでいないと売却手続きはできません。
※相続登記の申請義務化(令和6年4月1日施行)
相続により(遺言による場合を含みます。)不動産を取得した相続人は、相続により所有権を取得したことを知った日から3年以内に相続登記の申請をしなければならないこととされました。
また、遺産分割協議の成立により、不動産を取得した相続人は、遺産分割協議が成立した日から3年以内に、その内容を踏まえた登記の申請をしなければならないこととされました。
なお、正当な理由(※)がないにもかかわらず申請をしなかった場合には、10万円以下の過料が科されることがあります。
※正当な理由の例
(1)相続登記を放置したために相続人が極めて多数に上り、戸籍謄本等の必要な資料の収集や他の相続人の把握に多くの時間を要するケース
(2)遺言の有効性や遺産の範囲等が争われているケース
(3)申請義務を負う相続人自身に重病等の事情があるケース など
(出典:宇都宮地方法務局ホームページ)
また、所有者の転居に伴う住所変更などの際にも2年以内の変更登記の申請を義務づけた。
3. 共有分割の問題点
共有分割は、売却する場合や新しく建物を建てる場合は共有者全員の同意が必要となるので、のちのちトラブルになりやすく、注意が必要です。
(1)住宅共有分割の問題点
住宅を複数の相続人の共有名義にすると、税金の負担に関して、あるいは住宅を補修するときや売却するときにトラブルになりやすいので注意が必要です。
(2)土地共有分割の問題点
売却する場合や新しく建物を建てる場合は共有者全員の同意が必要となります。相続により共有者が増えることがあります。
(3)土地共有を解消する方法
①持ち分割合で分筆する、②他の共有者等に売却する、③共有の土地が複数ある場合は共有持ち分を交換する。
遺産分割で不動産を共有にした場合、建て替えや持ち分の売却には相続人全員の合意が必要となります。また、その後の相続で共有者はどんどん増えてゆきます。
①すぐ売却する予定がある場合、②居住用の土地に適用される相続税の特例の要件を満たすため配偶者と子が共有で相続する場合などを除き、たとえ多少不平等になっても避けるのが無難です。
(参考)
遺産分割の方法には、
①相続人一人ひとりに、財産の形状や性質を変更することなく現物で分ける「現物分割」、
②相続財産を未分割のまま競売し現金化して分ける「換価分割」、
③不動産の場合にみられますが、相続人の一人が取得し他の相続人には不足分を代償金として金銭で支払う「代償金分割」、
④同じく、不動産の場合にみられますが、相続人の共有にして持分で分ける「共有分割」があります。