遺産分割協議書条項例(現物分割⦅不動産⦆)

  現物分割は相続人一人ひとりに、形状を変えずに現物のまま、物理的に分配する方法です。たとえば、自宅及び現金は妻に、農地は長男にというふうに、一つひとつの財産について取得者を決めます。

 現物分割が原則的な分割方法です。この方法はとても分かりやすい方法で、それぞれが欲しい財産があるや他人に渡したくない財産がある場合は、それぞれの相続分に応じうまく分けられれば最良の方法です。しかし、財産の価値がそれぞれ異なるので、相続分どおりに分けることが難しく、不公平が出てしまうという欠点があります。 なお、土地を分筆して分ける場合も現物分割とされています。 

1. 不動産(自宅土地建物等)」(現物分割)

 

相続人 〇〇〇〇は、次の不動産を取得する

 

(1)土地             

   所在    〇〇市〇〇町〇〇丁目

   地番    〇〇番〇〇 

   地目    宅地

   地積    〇〇〇.〇〇平方メートル 

 

 (2)建物

   所在    〇〇市〇〇町〇〇丁目〇〇番地〇〇 

   家屋番号  〇〇番〇〇 

   種類    居宅  

   構造    木造瓦葺二階建

   床面積   一階 〇〇.〇〇平方メートル  

         二階 〇〇.〇〇平方メートル

 

※ 増築等により、現況と登記簿が違う場合は、両方を記載します。

 

※ 土地に関しては、所在地、地番、地目、面積を記載し、建物に関しては、所在地、家屋番号、種類、構造、床面積を記載します。

 

※ 土地や建物などの不動産については、土地の場合は地番、建物の場合は家屋番号の記載で遺産分割協議の効力に問題はありません。しかし、登記を行う際には、遺産分割協議書が登記の根拠となるため、登記簿全部事項証明書(登記簿謄本)に従って記載する必要があります(固定資産評価証明書の記載をそのまま使用せずに)。

 

※ 特に不動産の所在地については、登記記録と一致しているかを必ず確認してください。一致していない場合、登記を行う際には、遺産分割協議書を改めて作成する必要が生じることがあります(これには再び全相続人の署名と実印の押印が必要です)。

 

(3)上記建物内の家財道具の全て

 

※ 家の中の物が自動的に家を相続した人のものになると一般に考えられがちですが、法的にはそう簡単ではありません。

 

(4)○○○○火災保険(契約番号○○○)の契約者の権利全部 

 

火災保険では、満期保険金や解約返戻金を受け取ることが可能です。また、「出資金」の存在もあります。    

 

2. 「マンションの一室(敷地権登記あり)」(現物分割)

 

 相続人 〇〇〇〇は、次の不動産を取得する

 

 マンションの一室 

(一棟の建物の表示)

 所   在  〇〇市〇〇町△△番地△

 建物の名称  〇〇マンション 

(専有部分の建物の表示)

 家屋番号   〇〇市〇〇町△△番△△

 建物の名称  △△号

 種類     居宅

 構造     鉄骨鉄筋コンクリート造1階建

 床面積    △階部分 △△・△△平方メートル 

(敷地権の目的である土地の表示)

 土地の符号  1

 所在及び地番 〇〇市〇〇町△△番△

 地目    宅地

 地積    △△△.△△平方メートル  

(敷地権の表示)

 土地の符号  1

 敷地権の種類 所有権

 敷地権の割合   ○○○○○○分の○○○○○

 

※ 区分所有建物に関する登記申請情報は、原則として登記事項証明書に記載されている通りに記載しなければなりません。ただし、建物全体に名称(例:〇〇マンション)がある場合は、その建物の構造や床面積の記載を省略することが可能です。(不動産登記令第3条第8号ヘ、ト)

 

3. 「マンションの一室(敷地権登記なし)」(現物分割)

 

 相続人 〇〇〇〇は、次の不動産を取得する

 

 マンションの一室 

 ① 土地

 所在     〇〇〇〇〇〇△丁目

 地番     △△番△

 地目     宅地

 地積     △△△△.△△平方メートル 

(共有持分 ○○○○○○分の○○○○○) 

 ② 区分建物  

(一棟の建物の表示)

 所在     〇〇〇〇〇〇△丁目△△番地△

 建物の名称  〇〇   

(専有部分の建物の表示)

 家屋番号   △△

 建物の名称  △△号

 種類     居宅

 構造     鉄骨鉄筋コンクリート造 △△階建 

 

 床面積    △階部分 △△.△△平方メートル 

 

4. 「不動産の共有持分」(現物分割)

 

 相続人  〇〇〇〇は、次の不動産を取得する。

 

(1)土地             

   所在    〇〇市〇〇町〇〇丁目

   地番    〇〇番〇〇 

   地目    宅地

   地積    〇〇〇.〇〇平方メートル

   被相続人〇〇〇〇持分 2分の1

 

 (2)建物

   所在    〇〇市〇〇町〇〇丁目〇〇番地〇〇 

   家屋番号  〇〇番〇〇 

   種類    居宅  

   構造    木造瓦葺二階建

   床面積   一階 〇〇.〇〇平方メートル  

         二階 〇〇.〇〇平方メートル

   被相続人〇〇〇〇持分 2分の1

 

5. 「遺産分割までの間の借地借家料」を当該不動産取得者に取得させる(現物分割)

 

  1.相続人  Aは、次の不動産を取得する。

 

  (1)土地  

   

   (略)

 

   (2)建物

   

   (略)

 

 2.被相続人の死亡日から本日までの間に相続人Aが受領した前項の不動

 産に係る賃料については、相続人 Aに返還義務が無がないことを確認す

 る。 

 

※ 管理費用についても定めておくことが望ましい。

 

6. 「借地権」(現物分割)

 

  相続人 〇〇〇〇は、次の借地権を取得する。

 

  (土地の借地権) 

   賃貸人   〇〇〇〇

   借地料   月額 金10万円           

   所在    〇〇市〇〇町〇〇丁目

   地番    〇〇番〇〇 

   地目    宅地 

   地積    〇〇〇.〇〇平方メートル 

 

 

(参考)

遺産分割には以下の方法があります:

 

①「現物分割」は、財産の形状や性質を変えずに、相続人一人ひとりに現物で分配します。

 

②「換価分割」は、相続財産を競売にかけ、現金化した後で分配します。

 

③不動産においては、「代償金分割」があり、一人の相続人が不動産を取得し、他の相続人には不足分を金銭で支払います。

 

④また不動産においては、「共有分割」もあり、相続人が不動産を共有し、持分を所有します。