相続時の税と節税のポイント~ポイントは生前贈与。落とし穴は?~

□ 相続人に配偶者と子どもがいる場合、相続税の配偶者に対する税額軽減の適用を検討する(2次相続での相続税も考慮し、1次相続、2次相続をトータルして税額がどうなるかを考える必要があります)。

 

□ 自宅不動産の相続税評価額が高いため相続税がかかるときは、配偶者または同居親族が相続します(小規模宅地等の特例の活用)。

 

□ 婚姻期間20年以上の夫婦が、夫婦間で「居住する自宅」または「自宅を購入するための資金」を贈与した場合、2,000万円まで贈与税がかりません。

 

□ マイホームの購入資金の贈与は、「住宅取得等資金の贈与税の非課税特例」を使えば、省エネ等住宅は1,200万円、その他は700万円まで贈与税はかかりません(購入等契約が2018年であること)※ただし、住宅ローン返済のための資金贈与にはこの特例は使えません。

 

□ 孫の教育資金は1,600万円まで、結婚・子育て資金は1,000万円までの「一括贈与」が非課税になります(贈与税の特例制度として手続きが必要です。)

 

□ 扶養義務のある子等に生活費や教育費をあげても、社会通念上通常必要な範囲であれば贈与税はかかりません(ただし、必要な都度もらい、直接その費用に充てた場合に限られます。)

 

□ 生命保険金の受取人が相続人である場合には、500万円×相続人の数 までは相続税は非課税です。

注意事 項  相続税は10か月以内に払う必要があります。遺産分割の話し合いがついていないと小規模宅地等の特例、配偶者に対する税額軽減が使えません。

 

注意事 項 節税のため不動産活用でアパートを建て空室の増加で困っているケースが増えている、と言われています。

 

注意事 項  子どもや孫の名義の預貯金は通帳に使っている印鑑が被相続人と同じだったり、通帳・印鑑を子どもや孫の管理下に置いておかない、あるいは、預金や利息を被相続人が運用していた場合は名義借りとみなされ、被相続人本人の財産として相続税が課税されます。

 

注意事 項  相続税を払うため土地や株を売った場合も所得税が課税されます(払った相続税を、売った不動産等の取得費に加算して控除はできる) 

 

注意事 項  節税のため息子の嫁を養子にすると息子の嫁にも法定相続分が生じ家族間に問題が起こることがあります。


行政書士は街の身近な法律家

埼玉県行政書士会所属

行政書士渡辺事務所

行政書士・渡邉文雄

 

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ポイント 関連情報

 

1.  相続,・遺言、税に関し注意すべきこと

 

(1) 相続税納税資金対策について

 

 相続税の申告・納付は亡くなってから10か月以内です。遺言で遺贈する場合は相続人が相続税を払えるかどうかを考えて、現金が不足しそうな場合は相続税納税資金対策をたてておいてあげる必要があります。

 

 保険金は受取人固有の財産となり遺産分割の対象財産にはなりません(被相続人(契約者)が自分を被保険者とし、相続人の一人を受取人に指定していた場合)。保険金は受取人の印鑑証明書と戸籍謄本があれば数日で受け取れます。相続税納税資金対策としては終身保険が最適です。

 

(2) 遺産分割、遺言による遺贈は、相続税を1次相続、2次相続をトータルして考えます

 

 相続人が配偶者と子どもの場合、「相続税の配偶者に対する税額軽減」の適用に際しては2次相続での相続税も考慮して1次相続、2次相続をトータルして考える必要があります。

 

 相続税は贈与時の評価額によって課税されます。値下がりしそうな財産は二次相続(まず配偶者に遺贈しそこから子に遺贈する)が有利といえます。貸アパートなど収益を生み出す不動産及び、資産価値が上昇しそうな財産は一次相続(直接子に遺贈する)にする方が有利といえます。

 

(3) 子どもや孫名義の預貯金について

 

 子どもや孫の名義となっていても通帳に使っている印鑑が被相続人と同じ印鑑だったり、通帳・印鑑を子どもや孫の管理下に置いていない、あるいは預金や利息を被相続人が運用していたときは名義借りとみなされ、被相続人本人の財産として相続税が課税されます。印鑑は子どもの下の名前で作る必要があります。 

 名義預金に贈与税の控除(*下記4.)や時効(7年)が認められるためには、贈与契約書(贈与者、受贈者、日付を自署)を作っておくことが必要です。

 

※ 贈与税はもらった人が払う税金です。個人単位で一年間を合計してもらった金額(非課税枠の110万円を引いた残り)に対して課税されます。

 

(4) 兄弟姉妹、甥姪などへの遺贈は、法定相続人であっても、基本相続税額の相続税額の二割増しです

 

(5) 法定相続人でない者への遺贈も、贈与税ではなく相続税が課税されます。ただし、本来の相続税額の二割増しです。(孫への遺贈など) 

 

(6) 財産を取得したものが法人の場合、相続税ではなく法人税が課税されます

 

 

2. 遺産分割や遺言における「節税のポイント」

 

(1) 相続税の「配偶者の税額軽減」を利用

 

 配偶者が相続する財産のうち①1億6千万円または②法定相続分相当額のいずれか多い金額までは相続税はかかりません。

 

 相続税の配偶者に対する税額軽減の利用にあたっては、2次相続を考慮する必要があります。1次相続で「相続税の配偶者に対する税額軽減」を使わなかったときに比べ、1次2次トータルで相続税が多くなる場合があります。( 対策=配偶者の相続分を「2次相続における法定相続分の合計額以内」にする)

 

(2) 「小規模宅地等の特例」を利用 

 

 相続時に遺産分割をするときや遺言書で遺贈をするときは、「小規模宅地等の特例」を使って評価額を減額します。 

 ただし、現在同居している親族がいなければ、原則として「小規模宅地等の特例」は利用できません。

 

  宅地の種類 適用面積 減額割合
特定居住用宅地(居住を継続する) 330㎡まで 80%
特定事業用宅地(事業を継続する) 400㎡まで 80%
貸付事業用宅地 200㎡まで 50%

□ 被相続人が住んでいた家を相続し、同居の家族(相続した人)が住み続ける場合は、「小規模宅地等の特例」利用すれば、土地の評価額が80%減額されます。

 

■ 特定居住用地(土地の評価額が80%減額)の要件は、次のいづれかに該当すること

 

①配偶者が相続

②同居していた子などが相続

③家なき子が相続(2018.4.1~)

 

※ 別棟型の二世帯住宅に住んでいた場合は同居親族に該当しません(二世帯住宅は内部で行き来できなくてもOKになりました)。

 

※ 共同相続の場合、同居していない親族分は適用されません。

 

※ 2014年から被相続人が老人ホームに入所し空き家になっていてもこの特例が使えるようになりました。ただし、一旦、貸してしまうとダメです。

 

※ 事業用アパート併設の家の場合は居住用部分のみ80%減額です(事業用部分は50%減額)。

 

□ 被相続人が事業に使っていた土地を相続し、相続した人がそのまま事業を続ける場合は「特定事業用宅地」となり、土地の評価額が80%減額されます。

 

□ 被相続人が事業に使っていたアパートなど貸付事業用土地を相続した人がそのまま事業を続ける場合は、「貸付事業用宅地」として、土地の評価額が50%減額されます。

 

※ 砂利敷のみの駐車場は「小規模宅地等の特例」を利用できないことがあります(アスファルト舗装などが必要)。  

 

□ 「小規模宅地等の特例」を使う場合、適用面積に限度があることや適用要件により2次相続でも同様に使えるとは限らない点を考慮して、1次相続、2次相続をトータルして考える必要があります。

 

※ 小規模宅地等の特例の適用により相続税がかからなくなる場合でも、相続税の申告は必要です。

 

※ 小規模宅地等の特例は、遺産分割が決まっていない土地には適用できません。ただし、相続税の申告期限から3年以内に遺産分割をした場合は、一定の場合に特例が受けられます。 

 

注意事 項 小規模宅地等の特例の適用を受けた土地建物は、申告期限までは売却できません。申告期限に取得し、かつ、その事業または居住の用に供したことが要件だからです。 

 

(3) 収益性の高い財産は配偶者ではなく子どもに遺贈します 

 

 相続税がかかる場合で、相続人に配偶者と子どもがいるときは、駐車場やアパート、上場株式など収益性の高い財産は子どもに相続させます(1次相続2次相続トータルでの節税を図る)。配偶者に相続させると毎年財産額が増え2次相続での財産額が増加するからです。

 

注意事 項 ただし、節税よりも実際に財産を分けられるように遺産分割することが優先です

 

 

3. 生前贈与による節税

 

(1) 「贈与税の配偶者控除」(「オシドリ贈与」)

 

 婚姻期間20年以上の夫婦が夫婦間で「居住する自宅」または「自宅を購入するための資金」を贈与した場合は2,000万円まで贈与税がかりません。

 ただし、不動産取得税はかかります。また、この制度を使えるのは、一度だけです。

 

 なお、遺産分割協議では特別受益(*)となります。(*)相続時の評価額で持ち戻します。

 

注意事 項 民法改正(2018.7.13公布)により、婚姻期間20年以上の夫婦相互間における自宅の贈与は、特別受益持ち戻しをしないこととなります。(2019.7.1施行 ※生前贈与は2019年7月1日以降におこなわれたものについて適用。遺贈は遺言書等作成日付が2019年7月1日以降について適用。)

 これまでは、結婚期間が20年以上の夫婦間で行った居住用不動産の生前贈与・遺贈については、相続の時にこれも遺産に加えて相続分を計算する必要がありましたが(特別受益の持ち戻し)、これからは、遺産分割の対象から除かれ、相続時に遺産として計算しなくてもよい(特別受益の持ち戻しをしない)ことになります。 

 

(2) 毎年収益があがる物件は早めに生前贈与する

 

 駐車場やアパートなど毎年収益があがる物件は早めに生前贈与し、その収益を相続人に移転します。これによって、毎年の収益に対する税金(2次相続の相続税)を「節税」できます。

 相続時になったら価値が下がると予測される自宅等は、生前贈与ではなく相続させた方が有利です。

 

(3) 暦年贈与による節税

 

 毎年110万ずつ贈与すれば贈与税はかからりりません。10年で1,100万円が贈与税なしで贈与できます(ただし、相続開始3年以内の贈与は相続税の課税対象になる)。

 

注意事 項 税務署に名義預金と誤解されないよう注意が必要です。

 

■ 受贈者(もらう人)名義の預金通帳に送金する。

■ 贈与契約書を作るか、支払い履歴を記録しておく。

 

※ 毎年同じ金額を贈与だと一括贈与と判断される恐れがあります。

 

(4)孫に贈与し節税する  

 

 毎年110万ずつ贈与すれば、10年で1,100万円が贈与税なしで贈与できます。

 相続開始3年以内の贈与は相続税の課税対象になりますが、孫はこの制度による課税はありません(相続開始3年以内の贈与に相続税が課税されるのは相続又は遺贈により財産を取得した人のみ)。

 

(5)住宅取得資金の贈与による節税  

 

 20歳以上の方が祖父母や父母から住宅取得のための資金をもらった場合、一定の金額まで非課税となりますマイホームの購入資金は、「住宅取得等資金の贈与税の非課税特例」を使えば、省エネ等住宅は1,200万円、その他は700万円まで贈与税はかかりません(購入等契約が2018年)。ただし、住宅ローン返済のための資金贈与にはこの特例は使えません。

 

 

4. 節税対策として生命保険を活用する

 

 保険金の受取人が相続人である場合には、500万円×相続人の数 までは相続税は非課税です(ただし、相続を放棄した場合は課税されます)。

 

 

5. 取得費加算を活用し所得税の支払額を減らす 

 

 相続によって取得した土地、建物、株式などの財産を売ると所得税が課税されます。

 なお、亡くなった日の翌日から3年10か月以内に売却すれば、その所得の申告にあたり、相続税(既に払った相続税のうち売った財産の割合分)を取得費に加算することができます(所得税の支払額を減らすことができる)。さらに、土地の場合には売っていない土地も含めた割合で相続税を取得費に加算することができます(所得税の支払額を減らすことができる)。

 

 

6. 財産を賃貸不動産に変え節税

 

 土地・建物の相続税評価額は路線価・固定資産税評価額を基にしていることから実勢価格より低くなります。相続財産を現金から賃貸アパートに変えるておくと相続税評価額は半額程度になります。

 

(賃貸アパート経営に法人を活用し節税する)

①法人に管理を委託する不動産管理型法人 ②法人が賃借し転貸するサブリース型法人 ③法人が賃貸を行う不動産所有型法人 があります。

 

注意事 項 節税のため不動産活用でアパートを作ったが空き室の増加で困っているケースが増えている、と言われています。

 

 

7. 養子縁組を活用する

 

 実子がいる場合、養子が何人いようが相続税の計算では1人でカウントします。実子がいない場合、養子が何人いようが相続税の計算では2人でカウントします。

 

 相続税の計算では孫養子は一親等の子には含めません(相続税額は二割増し)。

 

 

注意事 項 節税のため息子の嫁等を養子にすると、息子の嫁等にも法定相続分が生じます。養子縁組を活用するときは、後でもめないようあらかじめ相続人に話しておきます。

 

 

普通養子縁組について)

 

 未成年者を養子にするときは、原則として夫婦が共同で養親となります。15歳未満の子を養子にする場合は、親権者など法定代理人の承諾が必要です。

 成年者を養子にするときは単独で養親となります(他の配偶者の同意は必要)。養子が夫婦の場合も単独で養親となります(他の配偶者の同意は必要)。

 

※ 尊属や年長者を養子にすることはできません。

 

(養子縁組届)

 

 養親、養子、成年の証人2人が署名押印し、市町村役場に申請します。

 未成年者を養子にする場合は、家庭裁判所に「養子縁組許可の審判の申立」が必要です。ただし、孫など自己または配偶者の直系卑属については、家庭裁判所の「養子縁組許可の審判の申立」は不要です。

 

 

8. 相続時精算課税制度 

 

 相続時精算課税とは相続財産を前渡しする制度です。相続財産の前渡し累積額が2,500万円以下であれば贈与税が非課税です(2,500万円超の部分は贈与税が一律20%課税される)。相続時精算課税は65歳以上の親から20歳以上の子どもへの贈与の場合に利用できます。 

 不動産など大きな財産や将来価値が上がる財産を贈与するときは、この制度を利用すると贈与税を節税できます。相続税基礎控除以下の遺産の場合もこの制度がおすすめです。

 

注意事 項 相続時精算課税から暦年課税に変更はできません。

 

注意事 項 相続時精算課税制度を使って土地を生前贈与する場合は「小規模宅地等の特例」は使えません。 

 


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