□ 相続人が誰もいない場合は、特別縁故者として認められれば、内縁の妻などは財産を受け取ることができます。
□ 「特別縁故者」とは、相続人が不存在で遺言書もない場合、被相続人と特別に縁故のあった者(本来の相続人以外)に特別に財産を分け与える制度です。
□ 特別縁故者として遺産を取得しようとする者は、「債権者、受遺者に対する公告」から3か月以内に、家庭裁判所に対し残余財産分与の申し立てをすることができます(特別縁故者であっても家庭裁判所に申し立てをしないと財産はもらえません)。
申し立て費用とは別に予納金(相続財産管理人になる弁護士の費用等)が100万円程度必要です。
□ 相続人がいない財産は、最終的に国の財産になります。
行政書士は街の身近な法律家
埼玉県行政書士会所属
行政書士渡辺事務所
行政書士・渡邉文雄
1. 特別縁故者への財産分与制度
特別縁故者への財産分与制度とは、相続人がいなくて遺言書もない場合に、本来の相続人ではないが被相続人と特別に縁故のあった者に、特別に財産を分け与える制度です。
これにより財産を取得する者を「特別縁故者」といいます。
特別縁故者の主な例としては、内縁の配偶者、連れ子、亡くなった長男の嫁があります。ほかに、施設などの法人や他人の場合もあります。
2. 特別縁故者の申し立て
特別縁故者として遺産を取得しようとする者は、「債権者、受遺者に対する公告」があった日から3か月以内に、家庭裁判所に対し、残余財産分与の申し立て(財産分与請求の審判の申し立て)をすることが必要です。特別縁故者であっても申し立てをしないと財産を取得することはできません。
3. 申し立てができる者
① 被相続人と生計を同じくしていた者
長年連れ添ってきた内縁の配偶者、連れ子、養子縁組はしていないが実の子のようにされていた者、亡くなった長男の嫁など。
② 被相続人の療養看護につとめた者
長期間にわたって被相続人の世話や看護をしてきた親戚や知人など。通常の業務以外に日常の介護や入退院の手続き、葬儀の世話などをした施設などのケースもあります。
③ その他被相続人と特別の縁故があった者
被相続人から遺産を贈られた受遺者、被相続人にお金を貸してある債権者
④ 検察官
4. 特別縁故者への財産分与の流れ
手順 1 利害関係者(*)や検察官が、家庭裁判所に「相続財産管理人」の選任の申し立て(相続人の分らない相続財産がある旨の申し立て)をします
* 利害関係者とは、被相続人と特別の縁故があった者及び、被相続人から遺産を贈られた受遺者、被相続人にお金を貸してある債権者などを指します。
※ 相続財産が少ない場合は、申し立て費用とは別に予納金(相続財産管理人選任等の費用)が数十万円~100万円程度必要です。
手順 2 家庭裁判所が、「相続財産管理人」選任の公告をします
手順 3 「債権者、受遺者に対する公告」
相続財産管理人は、相続人が現れないときは、特別の縁故があった者、被相続人にお金を貸してある債権者、被相続人から遺産を贈られた受遺者は申し立てをするよう、「債権者、受遺者に対する公告」を行い、債権者や遺言で財産をもらう人がいないか確認します。
手順 4 特別縁故者として遺産を取得しようとする者は、「債権者、受遺者に対する公告」から3か月以内に、家庭裁判所に対し財産分与請求の審判の申し立て(特別の縁故があった旨等の申し立て)をする必要があります。
※ 特別縁故者であっても、家庭裁判所に残余財産分与の申し立てをしない限り遺産は取得できません。
申し立てが認められれば、審判に従って特別縁故者への財産分与がなされます。
「相続人捜索の公告」
家庭裁判所は、相続財産管理人又は検察官の請求により、6か月を下回らない期間を定めて、最終的な相続人捜索の公告をおこないます。
相続財産管理人は、公告後6か月間、相続財産を保存・管理しながら、
相続人が名乗り出るのを待ちます。
この期間が満了すると、相続人の不存在が確定します。
手順 5 特別の縁故があった者、債権者、受遺者に「相続人不存在確認のお知らせ」があります。
4. もらえる財産について
特別縁故者にあたるかどうかは最終的に家庭裁判所の判断によります。
いくらもらえるかは、関係の深さや、縁故者の生活状況、財産の内容などを考慮し、家庭裁判所がその裁量により決定します。もらうまでに10か月以上かかります。
5. その他
亡くなったあと、特別の縁故があった者が、事実上の管理者として、とりあえず遺品の整理を行う場合は、メモを残しておきましょう。あとは、「相続財産管理人」に任せます。
共有不動産の被相続人の持ち分については、共有者が取得します。