□ あなたが亡くなった後、役所への届け出、介護施設等の利用料の清算、葬儀の手配、火葬、納骨、法要の施行、遺産整理や費用の支払いなどやってくれる人はいますか?
「死後事務委任契約」はこれらの事務を、友人や知人など信頼できる人(法人を含む)に依頼しておく契約です。
□ 任意後見契約を結んでいても、後見人の仕事は委任者の死亡により終了するので、死後事務委任契約も必要です。
□ 死後事務には各種の費用の支払いがあり、遺産から支払うときは遺言書も必要です。
成年後見制度の法改正が平成28年4月6日に成立し、同月13日に公布され、同年10月13日から施行されました。
改正法では,成年後見人は,成年被後見人の死亡後にも,個々の相続財産の保存に必要な行為,弁済期が到来した債務の弁済,火葬又は埋葬に関する契約の締結等といった一定の範囲の事務を行うことができることとされ,その要件が明確にされました。
改正法により成年後見人が行うことができるとされた死後事務は,以下の3種類です。
(1) 個々の相続財産の保存に必要な行為
(具体例)
・ 相続財産に属する債権について時効の完成が間近に迫っている場合に行う時効の中断(債務者に対する請求。民法第147条第1号)
・ 相続財産に属する建物に雨漏りがある場合にこれを修繕する行為
(2) 弁済期が到来した債務の弁済
(具体例)
・ 成年被後見人の医療費,入院費及び公共料金等の支払
(3) その死体の火葬又は埋葬に関する契約の締結その他相続財産全体の保存に必要な行為((1)(2)に当たる行為を除く。) (具体例)
・ 遺体の火葬に関する契約の締結
・ 成年後見人が管理していた成年被後見人所有に係る動産の寄託契約の締結(トランクルームの利用契約など)
・ 成年被後見人の居室に関する電気・ガス・水道等供給契約の解約
・ 債務を弁済するための預貯金(成年被後見人名義口座)の払戻し
成年後見人が上記(1)~(3)の死後事務を行うためには,以下の各要件を満たしている必要があります。
(1)成年後見人が当該事務を行う必要があること
(2)成年被後見人の相続人が相続財産を管理することができる状態に至っていないこと
(3)成年後見人が当該事務を行うことにつき,成年被後見人の相続人の意思に反することが明らかな場合でないこと
また,上記(3)の死後事務(民法第873条の2第3号)を行う場合には,上記の要件に加えて,(4)家庭裁判所の許可
も必要となります。
(出典:法務省ホームページ)
1. 死後事務委任契約とは
「死後事務委任契約」は、自分が亡くなったあとの役所への届け出、介護施設等の利用料の清算、火葬、葬儀の手配、納骨、法要の施行や諸手続き、費用の支払いなどを、友人や知人など信頼できる人(法人を含む)に依頼しておく契約です。
死後事務委任契約を結んでも、ご自分で契約の履行を確認することはできません。
そのため、契約書は公正証書にし、遺言で遺言執行者に「死後事務委任契約」の執行を指示しておくことにより、葬式、法要の施行・費用の支払いなど契約した内容を確実に実行してもらうことが可能となります。
2. 死後委任事務
① 葬送に関する事務
遺体の引き取り、葬儀、火葬、納骨等とこれに伴う費用の支払い
② 私法上の契約の解除に関する事務
不動産賃貸借契約、電気・ガス・水道等の供給契約の解除とこれに伴う
費用の支払い
③ 債務の弁済
④ 遺品整理
3. 遺言書のほかに死後事務委任契約が必要な理由
心筋梗塞などである日突然倒れ、そのまま息を引き取り数日後に発見された、といったニュースをご覧になったことがあるかと思います。
こうした場合への備えとして一般的なものは「遺言」です。
しかし、遺言書は開封されるまでに間があるため、あなたの遺志どおりにことが進まなかったり混乱したりする恐れがあります。
また、遺言は民法等に定められていること以外のことを書いても「法的な拘束力」がありません。
さらに、相手が履行してくれる保証がありません。
そこで、あなたの遺志どおりに確実に実行してほしい場合は、遺言書と合わせて「死後事務委任契約」が必要です。
4. 死後事務委任契約をおススメするケース
死後事務は、本来、家族が行うものであり、その費用も相続人が負担するものです。
しかし、①子ども等相続人がいない、②相続人はいるが、葬式、法要など死後事務をやってくれそうな身寄りがいない、③遠い親戚に迷惑をかけられない、④自分の生き方として死後の後始末は自分で準備しておきたい、
こうした理由で、生前準備として死後事務委任契約をされる方が増えていると言われています。
なお、任意後見契約を結んでいれば、緊急を要する事項については、任意後見契約に記載がなくても応急措置として受任者が処理できるとされています。
また、前述のとおり、平成28年民法改正(*)により、後見人に一定の範囲で死後事務に関する権限が認められることになりました。
しかし、その範囲は限定されていますので、死後事務委任契約の必要性に変わりはありません。
* 改正法により成年後見人が行うことができるとされた死後事務
(1) 相続財産の保存に必要な行為(具体例)
・ 相続財産に属する債権について時効の完成が間近に迫っている場合に行う時効の中断(債務者に対する請求。民法第147条第1号)
・ 相続財産に属する建物に雨漏りがある場合にこれを修繕する行為
(2) 弁済期が到来した債務の弁済(具体例)
・ 成年被後見人の医療費,入院費及び公共料金等の支払
(3) その死体の火葬又は埋葬に関する契約の締結その他相続財産全体の保存に必要な行為((1)(2)に当たる行為を除く。)(具体例)
・ 遺体の火葬に関する契約の締結
・ 成年後見人が管理していた成年被後見人所有に係る動産の寄託契約の締結(トランクルームの利用契約など)
・ 成年被後見人の居室に関する電気・ガス・水道等供給契約の解約
・ 債務を弁済するための預貯金(成年被後見人名義口座)の払戻し
※ 成年後見人が上記の死後事務を行うためには、下記の各要件を満たしている必要があります。
(1)成年後見人が当該事務を行う必要があること
(2)成年被後見人の相続人が相続財産を管理することができる状態に至っていないこと
(3)成年後見人が当該事務を行うことにつき,成年被後見人の相続人の意思に反することが明らかな場合でないこと
また,上記(3)の死後事務を行う場合には、上記の要件に加えて家庭裁判所の許可も必要となります。
5. 死後事務委任契約の結び方
手順 1 死後事務委任契約書を作成するにあたっては、まず、自分が亡くなったあとお願いしたいこと、頼む相手(受任者)への報酬について決めましょう。
手順 2 つぎに、亡くなったあとお願いする相手(受任者)をを決め、その方の了解をもらってから契約を結びます。
任意後見契約を結ぶ場合は、死後事務委任条項も合わせて記載することになります。
※ 契約書には、遺族とトラブルにならないよう、「委任者の死亡により契約を終了させない」旨明記します。
※ 契約を結ぶにあったっては、死後事務の処理について遺族とトラブルにならないよう、相続人がいる場合は契約内容について了解を得ておくことをおすすめします。
手順 3 亡くなると死後事務委任契約が発効します
6. 死後事務を頼んだ相手(受任者)が亡くなった場合
委任契約は受任者の死亡により終了します。また、受任者の相続人に委任契約上の義務が承継されることはありません。
ただし、民法653条は任意規定と解されており、委任契約に特約を設けることにより、民法に定める委任の終了事由に該当しても、委任契約上の義務を継続させることが可能です。
その場合に死後事務委任契約に定めるべき特約条項は、「委任者が受任者に対し復代理人を選任することを承諾する」旨の定めとなります。